【ずっと会いたかった人】落語家・柳亭こみちさんが目指す「新しい古典」(2/2)

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2022.7.7

古典落語の女性版、女性活躍編を高座にかけて人気の柳亭こみちさん。「自分らしく演(や)る」ことを模索してきたこみちさんが、これから目指す「新しい古典」とは? じっくりお話をきいてきました。

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――女性版や女性活躍編はいつから始めたのでしょう。
実は、「死神」だけは、初めから「老婆の死神」で演らせてくださいと、お稽古をつけてくださった柳家喜多八師匠(2016年没)にお願いしました。30代の私が、よぼよぼのおじいさん(死神)を演じても、どうしても若さが勝っちゃう。でも、老婆だったらできる。そうして10年。振り切った老婆でお客様に喜んでいただけるようになるには10年かかりました。
――リアリティを感じるかどうかですね。
たとえば、「厩火事」という噺。働かない髪結いの亭主のことで、おかみさんが男性である旦那に相談に行くのが、どうしても理解できなかったんです。そこで世話好きで経験豊富なお姉さん的立場の女性に相談に行くようにしたところ、お客様の反応ががらっと変わった。私自身も演るときの気持ちが全然違う。リアリティが出てくるんです。落語に登場する女性は、男性にとって都合のいい女性が多いんです。賢く、優しく、夫に尽くし、夫を自由にさせて、遊ばせてくれる。でも、リアリティあります? ふ~んと思って聴いている女性は少なくないと思います。役どころも、本来女性が登場した方が自然な役が、演じ手(噺家)が男性ばかりであり続けたために男性の役として登場していることもあると思っています。これも、噺家が男性である場合には都合がいいのです。
――「あくび指南」も、女性たちの噺になっていますね。
風変わりなお稽古の噺、「あくび指南」。聴いてくださったんですね。古典では、登場人物は男性ばかり。そこを、あくびを習いに行くのも、教えるのも女性に。あくびのお手本は、遊女、老婆、北条政子の3人。全員が全員、女性(笑)。
――北条政子だったら、なるほどこういうあくびをするだろうと思えて、笑えました。
そう感じてくださったら、うれしいですね。私が「あくび指南」の女性版をリアルに演じると、はまったお客様はとても喜んでくださいます。落語ですから、笑って頂きたいので!
古典落語の今まで、そしてこれからの流れの中で、「今自分ができること」は何なのかよく考える、とこみちさん。
――古典と女性版と、両輪あってこみちさんなんですね。
まっすぐ古典落語を演じてくすりともしないお客様が、女性版の演出をすることでたくさん笑ってくださるようになる経験をし、古典落語にいかに女性を登場させるかを考えるようになりました。今は、様々な噺で女性版や女性活躍編を作って演じています。そうした女性版の古典落語も、何十年かたって「新しい古典」になったらいいなと思います。でも「男性の役を演じられないから、女に替えて演っているんだ」と思われるとお客様は納得してくださいません。ですから、まっすぐ演じる古典落語も積極的に演り続けます。
――古典落語も、もともと時代や東西で変遷はありますね。
そうです。たとえば「七段目」は、上方では音曲がふんだんに入りますが、江戸ではあまり入りません。私は歌や踊りが好きなので上方の型の「七段目」を演っています。また、その日のお客席の雰囲気で「七段目」の中にも女性を出すこともあります。こうした試みもいつか「新しい古典」になるかもしれません。
――落語ひとすじですが、こみちさん、ふだんの生活はどんな感じですか。
この春次男が小学校に入学したばかりで、子どもを自転車に乗せて生きてきました。着物姿でも。子育ても一筋縄ではいきませんね。落語と同じ、全身全霊で向かわないといけない。男性の噺家皆さんが全身全霊でガツガツと落語に向かっている。私は母親になりましたが、落語へのガツガツとした情熱は失ってはいけません。男性に負けまいとやってきたのに、それでは修業が実を結びません。母親になったことで失うような情熱ならば、これまでの山あり谷ありの道の途中で、とっくに心が折れていたと思います。
――お子さんを仕事場に連れていくこともあったのでは?
家を出ると、一切、後ろ髪はひかれません。楽屋に連れてくることも、ありませんね。そこは譲れない一線。産後の復帰も早く、女性のお客様から当時ずいぶん心配されましたが、これが私です。子どもは子ども、落語は落語。子どもへの愛情同様に、落語愛が、私の中には漲り続けているので(笑)。
――結婚・出産という人生経験は、落語家として役に立つのでしょうか。
泥棒の体験がなければ泥棒を演じられないなんてことはないですからね。ただ、人間が演じている以上、落語には人柄とか人格とかが出てくる。そういう意味では、子どもを産んでからは、見えるものが違ってきたのはたしかです。「寿限無(じゅげむ)」が人情噺に聞こえてきたり、3年ぶりにおとっつあんと再会する「子別れ」も、まさかここで? というセリフで涙が出てきてしまったり。高座で子育てのことはあえて言いたくない時もあります。謎めいていた方がいい時もあるので(笑)。でも噺によっては子育ての経験が出るのが自然体かな、と今は思っています。それが私の一部ですから。
子どもを自転車に乗せて、着物姿で走る姿も、「落語家・柳亭こみち」を構成する一つ。
――その日の演目は、どうやって決めるのですか。
その日のお客様の雰囲気を見て、だいたい高座に上がる前にその日の演目を考えます。高座に上がってもお客様の反応を見て演目を変えることもあります。それでも決めかねた時は何を聴きたいか手を上げてもらって決めることもあります(笑)。寄席でも、眠気を帯びてくる時間帯には、賑やかでわかりやすい噺を演って少しでもお客様が反応しやすいようにします。爆笑派の売れっ子の後には、自分しかやらないような演出や、変化球を噺に入れてお客様の記憶に少しでも残るようにやります。仲入り後には、トリ(最後の演者)に向けてお客様もエンジンがかかるように、明るく楽しく。自分がトリをとっていたら、それこそ一日の締めくくり、お客様に満足していただける演目で、かつその日のお客様に合った演目を演らなくてはいけません。状況に合わせた「引き出し」の多さが大事だと思います。
――これから目指したい噺、ありますでしょうか。
私の目標は、「90歳まで寄席に出る」です。80代、90代になったおばあちゃんがどんな高座をするか、落語界では前例がありません。面白いと思いませんか? きっと、あっちこっち痛いのよ、と言いながら死神を演じたりすると思うんです。
――登場人物がすべて高齢女性なんて噺もあっていいですね。
そうですね!じゃあそういう噺を演じるのも年寄りになった私。もう、どんなふうになるのか、想像するだけでおかしいですよね。その年齢でなければできないことがあるって、幸せなことですね。
――聴いてみたいです。それまで、何百回と演じるのですね?
同じ噺、何度でもしますよ。演出も1回1回変えることもあります。大竹しのぶさん方式です。大竹さんが「100回演じても、その100回目は初めて。101回目も初めて。だから毎回新鮮です」とおっしゃっていたのを読んだことがあります。その通りだと思いました。私も、気持ちは大女優(笑)。何回でも、自分自身が新鮮に、楽しく演じながら噺を進化させていきたいと思います!
500mLのハイボールを飲みながら、PC前でストーリーを考え、書き、声に出す。でき上ったらカラオケボックスで一人、ひたすら稽古する。
――女性落語家の方もたくさん出てきていますね。
はい、いい時代になってきました。女性だけの落語会もたくさんあります。ぜひ、聴きに来てください! 皆、個性があります。誰でもない、自分にしかできない噺を目指していますから。一方、「若い女性落語家だから応援する」というお客様も確かにいて、若い女子ではなくなると、芸だけで評価されることになる。そのとき勝負できるか、ですね。そのためにも、自分を磨いていきたいなと思います。
――年をとるのが楽しそうです。
怖くないです。変わっていくこと自体、楽しみでもあるんです。シワやシミもイヤではない。味わいだと思っているので(笑)。ただ、髪は……どうでしょう。印象を大きく変えてしまうので、最近、気にしています。白いものが出たり、パーマをかけ続けると心配になりますよね。ですから、デルメッド ヘアエッセンスで朝晩マッサージして、抜け毛が減った気がしますね。上手に年をとれるように、ヘアエッセンスに伴走してもらいます。
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柳亭こみちさん(りゅうてい・こみち)
落語家

1974年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務。その後、落語家を志し、2003年に柳亭燕路に入門。2006年、二ツ目昇進。2017年、真打昇進。既婚・子ども2人の女性落語家が真打に昇進したのは落語協会初。趣味は、ピアノ、ギター、ウクレレ演奏と多才。日本舞踊(吾妻流名取 吾妻春美)、長唄もたしなむ。「歌って踊れて、古典落語がしっかりできる噺家を目指しています」(こみちさん)

公式サイト「こみちの路」

撮影・森山祐子 ヘア&メイク・レイナ 構成と文・越川典子

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扇子と手拭いは、どちらも柳亭こみちさんオリジナルです。扇子は女性が使ってちょうどよい小さめの女扇(めせん)で、一門の紋「変わり羽団扇」が入っています。市松模様のてぬぐいは3色ありますが、色指定はできません。この夏、必携のセットです。どしどしご応募ください。