【ずっと会いたかった人】北欧ジャーナリスト・森百合子さんに聞くファブリックの魅力(2/2)
レトロモダンなインテリアやファッションがすてきな森百合子さん。今回は、北欧のファブリックの魅力について、教えてください。
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- ――北欧テイストのシャツワンピース、大胆な柄が印象的です。
- スウェーデンのブランド、ファイン・リトル・デイの製品なんですが、蓮をモチーフにした柄がどことなく和っぽくも見えますよね。わが家のテキスタイルはスウェーデンのものが多いですね。ヴィンテージから現代のものまで、魅力的な柄が多いです。ファッションもいいんですよ。家具やインテリアだけでなく、服装も40年代や50年代のビンテージスタイルを好む人もいて。スウェーデンではスウィングダンスという、かつてアメリカで流行したダンスのリバイバルブームもあって、ダンスシーンも活発なんです。
- ――森さんも、スウィングダンスをなさると聞きました。
- はい、北欧に興味をもったもうひとつの大きな理由でもあります。30年以上続くスウィングダンスの大きなイベントがあって、それに参加してみたかったんです。ストックホルムでもたびたびダンスパーティに参加していますが、ビンテージ服のマーケットや、ファッションショーが開催されたこともあって夢のような空間でした。
- ――ビンテージテキスタイルの魅力を教えてください。
- デザインが花開いた時代ならではの勢いを感じます。戦後、テキスタイルや食器、家具など日常のものを美しくすることで暮らしの質をあげようとデザイナーもメーカーも、またデザインを紹介するジャーナリストやメディアも力を尽くしていた。テキスタイルデザイナーという存在がちゃんと評価されたのも大きいと思います。時代のムードを感じさせる色づかいや柄などがわかってくると、また面白いんです。
- ――大胆な柄も多いですね。
- フィンランドでは年配の女性たちが当たり前のようにマリメッコの派手な柄を着こなしていて憧れます。インスタグラムでも北欧のファッションブランドやおしゃれな人をよくチェックしているのですが、年齢や体型に関係なく、好きな色や柄を自由に着こなしている人が多く、自分もそういう風におしゃれを楽しみ続けたいって思います。
- ――アトリエでは、ビビッドな色づかいのファブリックが多いですね。
- 働く場所なので、元気がでる色づかいにしようと。天井から吊るしているのは、マリメッコのずっと欲しかった柄で、壁紙のように大きく使いたかったんですね。棚の間に吊るすのは北欧の家で見たアイデア。布の向こうはオープン棚なんですが、目隠しにもなっていいんですよ。
- ――ピンクがお好きですか。
- とくにそう思っていなかったのですが、このマリメッコの布に合わせていったらそうなりました。ピンクは可愛すぎるイメージがありましたが、落ち着いた色味もあるし、ペールトーンで大人っぽいピンクならいいなあと。花器もピンク系をいくつか持っていますが、ベージュ、ピンク、ラベンダー色の花が好きなので合わせやすいですね。
- ――ソファのクッションが楽しいです。
- 北欧で買って、しまいこんでいた布をまずはクッションに仕立ててみました。柄と柄、色と色を組み合わせながら、これはアリかな、これはさすがにうるさいかなと実験しているような感じ。クッションなら試しやすいですからね。この部屋は来客時にみんなで床に座って過ごすことも多いのでクッション多めでもいいじゃない、と。壁や棚などはなるべく白に統一して、色が映えるようにしています。
- ――ここはキッチンですね。壁紙に目を惹きつけられます。
- スティグ・リンドベリという著名なデザイナーの代表的な柄で、もともとテーブルウェアに使われていた柄なのですが、リノベーションを考えていた時期にちょうど壁紙としてリデザインされているのを見つけて。もとはグリーンの葉柄なのですが、壁紙は何色にも展開していて迷いましたね!青にしたところ、もともと使っていた黄色い棚ともあってよかったです。
- ――楽しい色づかい。こんなヒントを見せてもらえると、とてもためになります。
- どこかにビビッドな色の壁紙を使いたかったんです。でもリビングやアトリエはカーテンをしたり、絵を飾ったりするから、ぶつかってしまうだろうと諦めていたんです。キッチンなら良いアクセントになるだろうと。一面だけ貼るアイデアは、寝室でも取り入れました。
- ――機嫌よく過ごせそうです。
- やっぱり朝いちばんにキッチンに立った時、この壁紙が目に入ると気分があがるんですよね。朝に弱いので、自分を奮い立たせるためにも正解でした。リビングは比較的落ち着いた色づかいに、アトリエはにぎやかに、寝室はやはり落ち着く色味と、部屋ごとに過ごす気分に合わせて仕上げました。
- ――森さんの情報で、北欧がすごく身近に感じられるようになりました。
- そう言ってもらえるのは嬉しいですね!最初に訪れた時にはまさかここまで付き合いが長くなると思っていなかったのですが、地元の人が行くようなカフェを見つけたり、暮らしをのぞくような旅はライフワークのようになり、それを発信できるのは嬉しいです。もともとデザインやインテリアに惹かれたのですが、デザインや暮らし方の裏にある思想を知るにつれ、そういう部分も伝えていきたいと思うようになりました。
- ――北欧は、リサイクル文化が根づいています。
- いまでこそ豊かな国、幸せの国というイメージが強いですが、もともとは天然資源にそれほど恵まれているわけでもなく、だから物を大切にする習慣が根付いているのだと思います。優れたデザインが生まれた背景にも「資源の無駄遣いにならないよう、長く使えるものを」という考え方がある。いまリサイクルやサスティナブルといった考え方がより必要とされて、北欧の暮らしが再評価されているのも面白いですね。
- ――もっと北欧のこと、知りたくなりますね。
- 北欧は「食」も面白いんですよ!私が最初に書いた本は北欧の伝統料理や食文化、おいしいカフェや市場のことを紹介した一冊なんですが、日本の人も好きそうな味がいろいろありますよ。いわゆる珍味もいろいろトライしましたね。
- ――未発表情報が満載の、Zine(ジン)も作られましたね。
- 今、なかなか北欧に行けないのが悩ましいのですが、昨年せっかく時間があるならとZineを作ったんです。ガイドブックには登場しないような小さな町を歩いた時のこと、北極圏でもカフェ探しをした話とか、とくに何をするでもない旅の話と、映画や音楽のことも。かつて熱中した雑誌『オリーブ』のようなムードの冊子を作りたい、というのが出発点なんです。
- ――北欧映画に登場する女性たちの話も、面白かったです。
- 映画はもともと大好きなのですが、北欧の映画はハリウッド作品やフランス映画とはまた違った強烈な個性があって面白いんです。かっこいい女性たちの映画も多いですね。北欧は男女平等が進んだ国ですが、「そういう役柄を女性がやるんだ!」と驚くこともあれば「まだまだ格差はあるんだな」と気付かされることも。可愛くておしゃれな映画に見えても骨太なストーリーだったり。映画もどんどん紹介していきたいです。
- ――最後に案内していただいたバスルーム。木とブルーのタイルが清々しいですね。
- タイルはなかなかこれという物が見つからず、迷っていた時に友人が連れていってくれたショールームで見た細長いタイルを見て「アアルトっぽくていいかも!」とひらめいて。壁に木材を使ったのは予算的な事情もあったのですが、結果的にしっくりきてとても気に入っています。
- ――窓辺にタイルがはめ込まれています。
- これは、アアルト美術館で見たアイデアなんです。タイルを並べた窓台が素敵で、いつか真似したいと思っていて。大工さんにこんな感じと写真を見せて仕上げてもらって感無量です。化粧品をちょっと置くのにも便利です。
- ――お手入れは丁寧にされていますか?
- いえ、だいぶ雑なほうですね。最近はさすがに保湿はきちんとしようと思っていますが。私の肌はべたつきやすく、つけた時の感触が気になります。デルメッドのプレミアム ローションはしっとりしつつ、べたつかないのがよかったです。ほのかな香りもいいですね。翌朝の肌の調子もいい感じでした。
- ――パッケージは環境配慮型のプラスチックを使っています。
- 箱の中に説明文を印刷してあって無駄に説明書をつけないのが潔いですね。環境や倫理的な視点など、この会社はちゃんと考えているんだとわかると応援したくなります。こうした考え方も北欧を旅して、少しずつ影響を受けてきたんだなと思います。
- ●次回は、6月16日配信。女性落語家の柳亭こみちさんが登場します。
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森 百合子さん(もり・ゆりこ)
北欧ジャーナリスト
北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧のおもてなし』(主婦の友社)など。近著『日本の住まいで楽しむ 北欧インテリアのベーシック』(パイ インターナショナル)では築88年になる自宅で北欧インテリアを楽しむノウハウを伝える。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。北欧の食器とテキスタイルの店『Sticka スティッカ』も運営中。
https://hokuobook.com/
Instagram @allgodschillun
撮影・黒川ひろみ ヘア&メイク・レイナ 構成と文・越川典子
イッタラの「アルヴァ・アアルト コレクション ベース」と著書『日本の住まいで楽しむ 北欧インテリアのベーシック』をセットにして2名様にプレゼント!
フィンランドを代表するブランド、イッタラ。人気の「アルヴァ・アアルトコレクション ベース」はデザイナー、アルヴァ・アアルトが1936年に発表したフィンランドデザインの象徴ともいえるもの。今年の新色のコッパー(高さ160mm 税込27,500円)を、森百合子さんの書著『日本の住まいで楽しむ 北欧インテリアのベーシック』(1,870円 パイ インターナショナル)とセットにして2名様にプレゼントします。本では、築88年になる森さんのご自宅に、どう北欧スタイルを取り入れているか、たくさんの写真とともに紹介されています。どしどしご応募ください。
イッタラのHP https://www.iittala.jp/