樹齢300年、500年の盆栽を、初代から受け継ぐ「清香園(せいこうえん)」5代目の山田香織さん。若い人、女性たちに新たな形「彩花(さいか)盆栽」を広めつつ、これから目指すものは何でしょうか。
※最後に山田香織さんデザインの彩花盆栽と著書のプレゼントがあります!
- ――あらためて拝見すると、庭園の盆栽はどれも見事ですね。
- これは300年、あちらは500年。初代から受け継いでいる盆栽です。私が生まれたときから、いえ、私の曽祖父が生まれたときにはもう生きていたんです。「お前もひとつ、しっかり精進しなさい」と言われているような気がします。
- ――人生の大先輩ですね。
- 人格、樹格と言ってもいいと思いますね。実際、あるんです。格上で、何をしてもかなわないという盆栽を前にすると、おのずと謙虚でいられます。「オレもいろいろな人とつき合ったな。へこんだこともあったけど、何とか生きてるよ」と語りかけてくれる盆栽もあれば、「戦争も、震災も、病気も経験したけど、それでもここにいるよ」と励ましてくれる盆栽も。
- ――そうやって語り合うのも、鑑賞の方法なのでしょうか。
- そうですね。鑑賞法としては、正面から腰を下ろして見上げるようにします。その風景の中に自分が入っているかのように鑑賞するのがコツです。悩みのあるときは、ここにきて、じっと座って見ています(笑)。ものごとって、ひとつのところにずっと留まっていることはないじゃないですか。必ず流れていきます。好転するにせよ、暗転するにせよ、それを含めて、世界が動いていること、変化していることが目に見えてわかるのは、生きている植物だからこそ。説得力があります。
- ――5代目としては、責任重大です。
- もちろん、責任もあります。こうした伝統を絶やさず、技術を次世代に伝えたい。ひとりでも多くの人が、盆栽の楽しみを知ってもらうように、と。でも、一方で、この盆栽たちは私たちが死んだ後も、100年単位で生きていくことを考えると、気持ちがすーっと遠くに運ばれて、肩の力が抜けるような気がするんです。
- ――悠久の感覚ですね。
- 人の小ささ、自然の強さ、植物から学ぶことが多い。それが人間をまた豊かにしてくれることを伝えていかなければと思います。
- ――その一つの方法が「彩花盆栽」なのですね。
- そうです。手のひらサイズの彩花盆栽を育てることによって、逆に、数百年たつ盆栽がいかに人の思いがのせられているか理解していただけると思うのです。これからの私たちの使命は、盆栽と多くの人との接点を作ること。さまざまな業界とコラボレーションしていることも、その一つです。
- ――最近、園芸売り場で小さな盆栽をよく見かけるようになりました。
- 少しずつですが、ファンが増えています。今まで、切り花を飾ったり、植木を植えたりする習慣はあっても、女性が盆栽を買うことは少なかった。でも、寄せ植えで花が咲く「彩花盆栽」はプレゼントに最適だという評価もいただいています。もっともっと、その存在を知ってほしい。レストランに置いてもらったり、イベントに使ってもらったり。ハレの場で魅力に接して、興味をもっていただきたいですね。
- ――海外での評価が高いとか。
- 清香園にも、コロナ禍前には海外の観光客がたくさんいらっしゃいました。日本人は植物をとても身近なものとしてとらえていますが、海外の方はまったく違って「アート」として認識していますね。
- ――人の手と時間をかけて作る。それも、その人でないとできない形だから、唯一無二のアートなんですね。
- これでよし! と思えるものができるまで、試行錯誤をして、何年も何十年もかかる。これは、日本のさまざまなモノづくりの人と共通していることじゃないかと思うんです。
- ――最近、そう感じることがありましたでしょうか。
- ものすごく髪に合うシャンプーとの出合いがあったんですが、その成分表を見ていてつくづく思うのは、きっと開発の方が「こういうものを作りたい」という思いがあって、そこを目指してかけてきた長い時間を感じたんです。たぶん、私たちの仕事と同じなんです。そう思うと、ちゃんと味わって使いたいし、どういういいことをしてくれるのか、きちんと見届けたい。
- ――きれいなストレートヘアです。
- カラーリングもしなければ、パーマもかけない。ワックスもつけません。髪はさらさら軽めに、できる限り「素」でいたい。だから、シャンプーだけ使っています。これは、もう性分としか言いようがないのですが、だからこそ、いいもの、そうでないものがよくわかる。これは、シャンプーだけで満足できる。作った人の思いがのった、いい設計だと思います。
- ●次回は4月22日配信で、食空間プロデューサーの内山ゆきさんが登場します。
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山田香織(やまだ・かおり)
盆栽家、盆栽清香園5代目、彩花流盆栽家元
幼い頃より、跡取りとして盆栽の指導を受ける。父・山田登美男が創始した彩花流盆栽の第一後継者として、1999年に「彩花盆栽教室」を設立・主宰。埼玉・盆栽町・大宮、東京・表参道・日本橋・新宿・池袋、神奈川・横浜など7カ所にて指導をしている。NHK「趣味の園芸」元キャスター。海外ブランドとコラボ作品を作るなど、積極的に盆栽の美しさ、価値を国内外へ発信している。二児の母でもある。著書に『山田香織のはじめての盆栽樹形』『小さな盆栽の作り方・育て方』『山田香織の盆栽づくり とっておきの“いろは”』など多数。
盆栽清香園 http://www.seikouen.cc/
Instagram @bonsai_seikouen
彩花盆栽1日教室の申し込み
メール otoiawase@seikouen.cc
撮影・青木和義 ヘア&メイク・レイナ 構成と文・越川典子
山田香織さんの「彩花盆栽」(8,800円)と著書『はじめての盆栽 失敗しない8つのコツ』(1,760円)をセットにして5名様にプレゼント!
チョウジュバイ(長寿梅)×ヒナソウ(雛草)を寄せ植えした「彩花盆栽」です。チョウジュバイは2月から5月まで長く花を楽しめ、条件さえそろえば秋に開花することもあります。おめでたい名前から、お祝い事の贈りものにも喜ばれています。ヒナソウは、毎年春に花をたくさんつける、山野草です。どちらも育てやすい植物ですが、お手入れの方法はプレゼントの書籍をご参照ください。尚、特別な梱包が必要となるため、清香園から直接ご送付することになります。