会いたかった人
【ずっと会いたかった人】インテリアスタイリストの石井佳苗さん(3)
ここは、インテリアスタイリスト・石井佳苗さんの事務所兼ご自宅。訪問して気づくのは、何度か訪れたことがあるような居心地のよさでした。初めて訪れたのに、なぜこんなに心地がいいのでしょう。その秘密が、話を伺っているうちにわかってきました。
- 石井さんにとっての「居心地のよさ」って何ですか。
- 年齢や環境が変わるにつれ、自分にとっての居心地のよさも変わります。でも、一方で変わらないものもある。私にとっては、「動くもの」。「生きているもの」「呼吸するもの」と表現してもいいと思います。ずいぶん前になりますが、都内で事務所を構えていたときに、気づいたことがありました。見渡すと、何もかもがピターッと静止していて、そんな空間は何て寂しいのだろう、と思ったんですね。当時から3匹の猫を飼っていましたが、視界のどこかに動いている存在がないと私の心は満たされない。自分が好きなもの、心地がいいもの、心を満たしてくれるもの、私の暮らしはほとんどがそれらでできていると思います。
- 室内に、植物や花も多いですね。それも心を満たすものですか。
- そうですね。ベランダはもちろんですが、鉢植えは部屋のあちこらに置いたり、吊り下げたり。いつの間にか枝葉が伸びて、花が咲き、枯れた葉が落ちます。生きているんです。切り花でも同じです。毎日見ていると、つぼみが少しずつ花開いて…。生きて、動いている。それを感じて私は安心して、気持ちをととのえることができるんです。引っ越し好きの私が一つだけ譲れないことがあって、それは「窓から緑が見えること」なんですが、それは「自然」を感じることができるからなんです。鳥が止まって、飛び立つのが見えたり、さえずりが聞こえたり。風が吹けば、木々の枝が動きます。私の暮らしには欠かせないんです。
- 動くものと言えば、石井さんの部屋には、モビールも目につきますね。
- モビールがなぜ好きかというと、動きによって空気の流れが目でわかるから。たくさんもっていて、季節や気分、そのときのしつらえによって掛け替えます。今とても気に入っているのは、音楽家でパーカッション演奏家でもあるゲーリー・クヴィスタッドが作ったウインドチャイム(ウッドストック・パーカッション社)です。名前の通り、風が吹くと、金属の筒がふれあって、なんとも美しい音色を奏でます。風がないときは、手で揺らして、癒しの音に浸っています。皆さんへのプレゼントに選びましたので、ぜひ応募して、体感してほしいと思います。
- 部屋にいる人も、インテリアを構成するひとつの要素なのでしょうか。
- たしかにそうですね。そこにいる自分も、インテリアの一部として無意識に考えているかもしれません。「動くもの」が好きという話ですが、考えてみれば、女性の髪は動くものの最たるもの。同性の私でも女性を見るときに髪は目に入ります。若々しさの象徴でもありますし。私自身はずっと黒髪のボブだったのですが、ブラウンとアッシュの2色でカラーリングした話はしましたよね。すると、気分も明るくなって、周りの評判もいい。インテリアはよく変えるのに、自分自身を変えることはなかったと気づきました。私が目指すのは、おしゃれでかわいいおばあさん。変わることを怖れず、チャレンジしたい。だから、髪も元気でいるように、デルメッド ヘアエッセンスを使い始めました。
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石井佳苗(いしい・かなえ)インテリアスタイリスト
インテリアの大手家具メーカー、カッシーナに勤務後、独立。インテリアスタイリストとして、またDIYの名手として、雑誌やウェブサイト、広告などで活躍。自宅をDIYでセルフリノベーションして大きな話題に、DIYブームを牽引した。その工程はすべて『Love Customizer 1,2』に収めた。他に『DAILY LIFE』『Heima』などの著書がある。主宰するウェブマガジン「Love customizer」http://www.kanaeishii-stylist.com/
撮影・黒川ひろみ ヘア&メイク・レイナ 構成/文・越川典子