会いたかった人
【ずっと会いたかった人】お菓子&料理研究家の福田里香さん(4)
サラダは、肉や魚料理のつけ合わせ、パン食のおともというイメージがありますが、お菓子&料理研究家の福田里香さんの手にかかれば、もてなし料理、主食、和食、デザートへと大変身。さまざまなシーンで主役となるサラダを作るコツを聞きました。
- サラダをメインディッシュとして食べるには、どんな食べ方がいいでしょうか。
- 確かに、サラダはつけ合わせのイメージが強いですよね。でも、肉や魚などのたんぱく質や雑穀、パスタなどの炭水化物を混ぜれば、ボリューム満点の主食サラダになります。私が朝食や昼食によく食べるのは、サラダをたっぷり乗せたパン。トーストの両面をオリーブオイルやバターでコーティングして、その上に生ハムとサラダを乗せる。カリッ、ムギュ、シャクシャクとオノマトペも楽しい時間の始まりです。少し時間が経って、サラダから出た水分でパンがふやけてしまったところも、実はちょっと好きなんです。
- 和の野菜料理と言えば煮物やおひたしが浮かびますが、和食としてのサラダってありますか。
- 日本人は「雑食」と言われるほど世界各国の料理を食べますが、和食はほっとしますよね。そのベースは何かというと、醤油なんです。蒸したジャガイモに醤油とオリーブオイルをかけるだけでも、和風の立派なサラダ。葉野菜を醤油味のみぞれ大根で絡めたサラダは焼き魚にもぴったり。いつものサラダにかつお節を混ぜたり、ミョウガや大葉などの和のハーブを加えれば、より和食感がアップします。日本の家庭料理の定番、ほうれん草の白和えも、豆腐の代わりにクリームチーズを使うと、とたんにサラダっぽくなります。
- 果物のサラダを作るときの特別なルールってあるのでしょうか。
- 実は、いちごもスイカもメロンも野菜なんですよね~。田畑で栽培されているのが野菜で、木に成る果実が果物という定義はあるみたいですが、料理の世界では果物と野菜の垣根はなくなりつつありますね。そういえば30年ほど前、フルーツ専門店で働いていたときに「フルーツソーセージ」とか「野菜のケーキ」を企画したのですが、まだ早かった(笑)。ようやく、時代が追いついてきたと喜んでいます。さて、果物をサラダに使うコツですね。魚介と合わせる時は、生臭さが大敵です。ハーブやスパイス、柑橘の酸味をうまくきかせて、果物も魚も新鮮でしっかり冷えているもの、が必須条件。調味料だと、醤油が勝ちすぎないよう気をつけています。……ま、でも、果物だから難しいと思わずに、どんどん挑戦してみてください。いちごやオレンジ、アメリカンチェリーの甘酸っぱさは、ドレッシングの一部。いちじくの独特の歯ざわりやドラゴンフルーツのプチプチ感は、野菜にはない楽しい食感です。果物はサラダの世界を広げてくれますよ。
- サラダづくりのための、基本の調味料を教えてください。
- 味つけの基本は、①オイル ②酢 ③塩を順に加えます。サラダをおいしく食べるためには、調味料はちょっといいものを用意したいですね。オイルは新鮮で香り豊かなものを。オリーブオイルは、苦みや渋みの少ないエキストラバージンを、ゴマ油は低温圧搾法で作られたものを常備しています。酢は、白ワインビネガー、米酢を使い分け、フレッシュな酸味を出したいときはレモンを使います。今は塩ひとつとってもずいぶん種類がありますが、精製された塩ではなく、天然塩が断然おすすめです。塩粒が1~2mmのものがサラダには使いやすいと思います。「これだ!」という基本調味料がそろうと、サラダ作りはがぜん楽しくなります。それは、自分の肌にぴったりと合った基本のスキンケア製品があると、肌の手入れが楽しみになるのと一緒。「楽しい」とか「うれしい」とかポジティブな感情が、いつも背中を押してくれるのだと思います。
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福田里香(ふくだ・りか)お菓子&料理研究家
1962年生まれ。武蔵野美術大学卒業。果物の専門店・新宿高野に勤めたのち、独立。漫画への造詣が深く、作品に登場するフード(食べ物)表現を考察した『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』(太田出版)は注目を集めた。フルーツを使った独創的なスイーツや料理にも定評があり、雑誌でフードコラムを担当するほか、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)など著書多数。民芸にも詳しく、近著に『民芸お菓子』(エイ出版)がある。
Instagram:@riccafukuda
撮影・青木和義 ヘア&メイク・レイナ 文・高橋顕子 構成・越川典子