会いたかった人
【ずっと会いたかった人】ファッションディレクターの大草直子さん(2)
理論派のスタイリストでもある大草直子さん。大草さんのトレードマークともいえるラフでありながら清潔感のある「まとめ髪」は、お手本にしたい憧れのスタイル。大草さんならではの顔周りのおしゃれについて聞きました。
- すっきり一つに髪をまとめていることが多いですね。「まとめ髪」のコツ、メリットは何ですか。
- もともとくせ毛なので、若い頃はストレートパーマをかけたり、ロングヘアに挑戦したり、試行錯誤した時期がありました。今は、肩につくかつかないかくらいのセミロング。くせ毛をラフに、襟足で小さくまとめるのが、活動的な自分のスタイルに合っています。とはいえ、ただゴムで結ぶだけだと生活感が出てしまうので、朝は必ずボリュームをアップさせるスプレーを髪全体にかけ、ドライヤーで丁寧に髪を温めてから、コテを使ってスタイリングします。それからの「まとめ髪」なので、ラフに見えて、ベースにはそれなりに手をかけています(笑)。髪自体をケアしておくと、ざっくりまとめても、感じよく見えると思っています。人は誰でも、年齢を重ねると、どうしても清潔感が失われてしまいますから、まとめ髪にしたときは、上質なパールのイヤリングを加えます。顔の周りが明るくなって、大人の華やかさを出してくれます。
- 肌と同じように、髪の色や量もファッションアイテムと考えたほうがいいですね。
- 髪って、全身の「黒の分量の調整役」と考えています。日本人は黒くて太い髪質の人が多いですよね。「黒」は強くて迫力のある色ですから、全身のコーディネートを考えるときに、髪の色や分量は無視できません。たとえば、パステルカラーの服に髪を下ろしたスタイルだと、黒の印象が強すぎるのでまとめ髪にする。黒い服の時も、髪を下ろすと全体が重くなるのでアップにします。また、服の素材に合わせて、質感も調整します。リネンはざらっとしているので、ヘアケア剤を使ってウェット感を出すようにしています。そうしないと、全体にパサパサと「乾いた女性」の印象になってしまうからです。カシミヤはしっとりとしているので、さらっとしたスタイリングも合いますね。毎日同じヘアスタイルで安心しているより、その日の着こなしに合わせてちょっと変えてみてください。もっと似合うヘアスタイル、もっと違う自分に会えて、新鮮に感じるかもしれませんよ。
- 帽子をかぶっている印象が強い大草さんですが、上手な選び方を教えてください。
- 帽子は、コーディネートを決定づけるもの。たとえば、白のキャスケットをかぶるとマリンスタイルに。キャップをかぶったらスポーティーな印象に。単なる日差し除けや寝癖を隠すためにかぶる……なんてことはありません。むしろ、帽子をかぶるときは、髪を丁寧に巻いて、帽子からのぞく毛先のバランスを注意深くチェックします。夏も冬も重宝するのは、つばの広いハット。私は「美人アイテム」と呼んでいます。顔に深い陰影を与えることで、肌の明るさが際立ち、メイク以上にドラマティックな印象を与えてくれます。
- 40代を過ぎると、髪の悩みが増えます。大草さんは、どんなお手入れをしていますか。
- 髪が変わってきたと感じたのは2~3年前。シャンプーやスタイリングの時に、今までのツヤやコシが感じられない。髪が痩せてきたことはあきらかでした。そこで、すぐにエイジングケアをスタート。シャンプー、トリートメントはいろいろ試しました。そのおかげで、ヘアメイクさんからは「髪のコンディションがよくなりましたね」と言われるんです。最近、使うようになったのは、育毛ケアのできる「ヘアエッセンス」です。私は、人生のピークを60歳くらいにもっていきたいと思っているんです。あと15年。そのとき、ファッションを楽しめるかどうかは、髪の若々しさはとっても重要です。髪そのものもですが、地肌ケアこそ習慣にして、「元気貯金」を始めたいと思います。
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大草直子(おおくさ・なおこ)ファッションディレクター
1972年生まれ。女性ファッション誌の編集に携わったのち、独立。フリースタイリスト、エディター、ファッションディレクターとして雑誌や広告で活躍。イベント企画・出演、執筆、Webメディアを通して、ファッションのみならず女性が人生を楽しむ方法を伝える。明快でまっすぐな「大草語録」に胸を打たれる人も多く、幅広い年齢層から支持を集めている。著書『大草直子のSTYLING&IDEA』(講談社)など多数。この春、新しいウェブマガジン「AMARC(アマーク)」を立ち上げたばかり。プライベートでは、3児の母親。
Instagram:@Naoko Okusa_official
撮影・青木和義 ヘア&メイク・菊池かずみ 文・高橋顕子 構成・越川典子