会いたかった人
【ずっと会いたかった人】ベジブーケ・デザイナーの小山美千代さん(2)
採れたての野菜を花束のように束ねた「ベジブーケ®」は、贈る人も贈られる人も笑顔になる新しいギフト。ベジブーケの第一人者小山美千代さんに、ベジブーケを作る喜びについて聞きました。
- 春のベジブーケにぴったりの野菜は何でしょう。
- 春は、新しいことを始めたり、新たな出会いがあったりと、ワクワクすることが多い季節です。黄色やオレンジ、赤、淡い緑色など華やかで元気が出るような色合いの野菜を束ねたいですね。同時に、旬の野菜のおいしさを知って欲しいので、ラディッシュ、菜花、アスパラ、ニンジンなど、今朝採れたばかりの春野菜を束ねます。まだまだ寒い日もありますから、スープにするとおいしい野菜だけを束ねたベジブーケもおすすめです。タマネギ、ジャガイモ、ニンジン、ニンニクをごろっと束ねた「カレー」のブーケや、ミニトマト、ミニカボチャ、ナス、パプリカ、月桂樹などをまとめた「ラタトゥイユ」のブーケなど料理を想定したベジブーケを作るのも楽しいですよ。
- 今日の主役野菜はどれでしょうか。
- 今日はぽかぽかと暖かく春らしい陽気ですね。春の到来を祝福するような、鮮やかな黄色の野菜を主役に立てましょう。ニンジンは今朝畑で採れたものを。黄色のニンジンは「イエローハーモニー」、クリーム色は「クリームハーモニー」という名がついているんですよ。名前も春らしくて心躍りますね。発色の良いパプリカは茨城県水戸市の農家から届いたばかりのものを。つやつやと立体感のある野菜をサントウサイや紫コマツナなどの柔らかい葉野菜が包み込み、さらにケールや黒キャベツなどのダイナミックな野菜が根っこごと加わることで、ボリュームと奥行きが出て、あっと驚くようなベジブーケができあがります。
- 赤ちゃんを抱っこしているような心地よい重みですね。
- ケールや黒キャベツなど重みのある野菜を使ったベジブーケは、3キロほどにもなります。それはちょうど生まれたばかりの赤ちゃんくらいの重さ。とても片手では持てないので、両腕で抱えるように持つと、本当に赤ちゃんを抱っこしているような気持ちになります。同時に、採れたて野菜の濃厚な香りが鼻をくすぐり、野菜からほとばしる生命力に圧倒されます。抱っこするように持っていただくことで、「野菜の一生」に思いを馳せてもらいたい。ふかふかの土の上に種がまかれたとき。土からチョコンとかわいい芽が顔を出したとき。ぐんぐん葉を広げ、たくましく伸びていく姿。花をつけ、実がなり、鮮やかな色に変わっていく様子。ベジブーケの重みは、野菜の命の重みなのだと思います。
- 根っこごと束ねるとは驚きです。
- 根が付いていると、野菜が土からどうやって生えていたのかがわかるでしょう。野菜のありのままの姿を知り、肌で感じてもらうために、スーパーでは捨てられてしまうような茎や葉もできるだけ残すようにしています。ベジブーケのコンセプトは「畑をまるごと届ける」ですから。それに、ブーケをほどいたあと、根付きの野菜をそのまま花瓶に入れて水耕栽培すれば、必要な分だけ葉を「収穫」して料理に使うことができます。長い時間その野菜と一緒に過ごすことができるんですよ。挿し木にして自分の庭で育てるのもおすすめです。そうすれば、「飾る」「食べる」「育てる」と野菜を二重にも三重にも楽しむことができます。
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小山美千代(こやま・みちよ)
ベジブーケ・デザイナー。千葉県の農家に生まれる。幼少よりフラワーアレンジメント、華道を学ぶ。インテリア業界、花業界で活動後、都内のブライダルホールで専任ブーケデザイナーとなる。出産を機に夫とともに実家である伊藤苗木に就農し、里山暮らしを始める。2006年、野菜の美しさに目ざめ、ベジブーケの制作を始めると、新聞や雑誌、テレビなどで紹介され、ベジタブルフラワー装飾の第一人者となる。2013年、ベジブーケの普及のため美千代デザイン株式会社を設立。
撮影・青木和義 ヘア&メイク・レイナ 文・高橋顕子 構成・越川典子