会いたかった人
【ずっと会いたかった人】わくわくするデザインを生む「エプロン商会」の滝本玲子さん、市村美佳子さん(3/4)
「布が大好き」という共通点をもつ滝本玲子さんと市村美佳子さん。ヴィンテージの布を目の前にして、わくわくしながらデザインを考えてゆきます。「不思議と意見が割れないのよね」と笑顔が絶えないお2人に、「デザインと布」の話を伺いました。
- ヴィンテージの布って、何とも言えない魅力がありますね?
- 市村:そうなの! 去年、ロンドンの蚤の市で買った布が、スーツケース2個にいっぱい詰まっているんです。開けてみましょうか? これ、見てください。何度見ても、どれもかわいすぎますね~。
- 滝本:ほとんど50年以上前の布ね。ベルギーとかフランスとか、ヨーロッパの業者が集まるし、お店を広げたらすぐに見ないと、ほしい布が手に入らない。写真を撮るのも忘れて、真剣そのものだったわね(笑)。
- 市村:アタマで考えて「こういう布がほしい」じゃないのよね。
- 滝本:ぱっと見て、自分が反応する布を手に取っていく。「今この瞬間」に、惹かれたものばかりです。
- 市村:古いものは、リネンか綿か、混合か、わからないものもあるのだけれど、風合でデザインを決めていきます。
- 滝本:リバティプリントも、何度も洗濯して色褪せた感じもまたかわいいんです。花柄の洋服はちょっと敬遠しがちな男性や、大人の女性でも、エプロンならハードルがぐっと下がります。リバティでかっぽう着というのも、面白いでしょ?
- 市村:洗ってもすぐに乾くし、アイロンがほとんどいらない。ヒモには芯が入っているからクシュクシュにならないし、小さくたためるから持ち運びもしやすい。
- 滝本:リバティプリントのエプロンは、驚くほど軽いのも魅力のひとつね。
- デザインは、どうやって決めるのですか?
- 滝本:デザインのヒントは、古いエプロンからもらうことも多いですね。リバティプリントは3型あります。かっぽう着タイプは、かぶる・ボタンの2型。胸当てのあるエプロン、下だけのギャザーエプロンがあります。
- 市村:この布はサロペットタイプがいいんじゃない? とか、2人で話し合ってデザインを決めていくのだけれど、不思議と意見が割れることがないわよね。
- 滝本:それは、大人の女性が美しく見えて、毎日わくわく着けたくなるエプロンを作りたいというコンセプトは変わらず、まったくぶれることがないから。
- 市村:家事や仕事のために着けるのだけれど、楽しみに着けたっていいじゃないですか。着こなしのひとつと思ってほしい。
- 滝本:たとえば、この黒い、ものすごく薄いネックエプロン。これは、水ハネを防ぐ目的では着けないけれど、この日はどうしてもこのエプロンを着けたいという日がある(笑)。だから、わくわくするものを着ける。自分の気分で選んでいるわね。
- 市村:これはとくに、玲子さんに似合うしね。「玲子さんの着けているこのエプロンがいい」という人、多いですよね。
- 人気のデザインを教えてください。
- 滝本:不動の人気は、リバティプリントですね。そのときどきで、柄が違うから、たくさんほしくなるという人も多いです。
- 市村:それと、ギャザーかしら。スカートのように見えるし、重ね着もできる。厚手のものは、ギャザーが少なめで、ウエスト部分は幅広にとっています。薄手の布は、ギャザーをたっぷり入れてロマンチックですよ。
- 滝本:エプロンって、キッチンのフックにぱっとかけたいじゃない? ギャザータイプのエプロンも、かけられるように内側にループを作っています。
- 市村:実は、ものすごく考えられている(笑)。
- 滝本:かっぽう着タイプも便利です。美佳ちゃんは、仕事着にしているね。
- 市村:夏は、下はタンクトップと綿パン、薄手のワンピースを1枚着ていれば涼しいし、冬は、セーターや厚手のパンツを組ませれば暖かい。
- 滝本:見に来てほしいな。実際に着けてみて、これがいい! と思うエプロンが必ず見つかると思う。
- 滝村さんが着けている白いエプロン、美しいです。おしゃれ用のエプロンですか?
- 滝本:そんなことない。私たちが作っているのは、ふだん着けてほしいものばかり。
- 市村:白いエプロンは汚すのが怖い、という人がいるけれど、私たちは汚しちゃいけないって思っていないの。たとえば、画家のエプロンには絵具がつくのが当たり前で、料理をすればお醤油のシミもつく。汚れても風合いになるし、破れてしまったら、そこをミシンでたたいて補強すれば、それも味わいになる。
- 滝本:つまり「エプロンは育つ」と思っているわけ。
- 市村:玲子さんのエプロンの、ここを見て。
- 滝本:(ポケットの中を広げて)たたいているところ、あるでしょ? ヴィンテージの布だから、ちょっとの破れがあることも。だったら修繕して、ポケットをつけちゃえばいいわけ。
- 市村:リバティのエプロンを愛用しているメンズは、ポケットが切れたからって、ブルーのエプロンに真っ赤な糸で補強してアクセントにしている。愛している感じが、とってもいいんですよね。
- 滝本:古くなって穴が開いても、これをかわいいと思うか思わないかで、道が分かれるわね(笑)。私たちは、かわいいと思っているから。美しさって何だろうかって、私はずっと考えてきたし、今もこれからもテーマだと思っているのね。自分の心が動くかどうかが、大きなポイントで、他人が美しくないと言っても、それぞれに自分が美しいと感じるものがいいと思うの。
- 市村:その基準は、布でも、エプロンでも、化粧品でも同じかもしれないわね。
●第4回は「エプロンの着こなし方」のお話です。お楽しみに!
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右・滝本玲子(たきもと・れいこ)
ディレクター、デザイン事務所主宰。雑貨バイヤーとして、店舗企画等に関わる。2011年に東京・西麻布にて喫茶店「R」をオープン。器やファッションアイテム、アート系、デザイン系の企画展を多数開催している。
左・市村美佳子(いちむら・みかこ)
フラワーデザイナー、緑の居場所デザイン主宰、オーガニックフラワー研究所代表。東京・南青山に花教室&スタジオを置く。広告や企業イベントの花装飾も数多く手がけ、雑誌や花カレンダーも。定期的に「花瓶専門店」を開き、花瓶と花の出合いを通して、花の魅力を伝えている。
http://apronshokai.com/
Instagram@apronshokai
撮影・青木和義 ヘア&メイク・長網志津子 構成と文・越川典子