会いたかった人
【ずっと会いたかった人】「あるとうれしいもの」を作る、料理研究家・内田真美さん(4/4)
好みの味を追究していくと、「私だけのレシピ」「私だけのルール」ができると、料理研究家・内田真美さん。そんな内田さんちの「あったらいつもうれしい」ものを聞きました。保存食とは違う、果物の食べ方だったり、簡単にできる調味料だったり。ふだん食べているものをもっとおいしくしてくれるものでした。
- どんな家庭料理で内田さんは育ったのでしょう。
- 長崎県で生まれ育っています。白身魚や青魚がおいしい土地です。実家が仕出し屋でしたので、幼いころから台所に入ってはお味見。おいしいものは実家で知りました。皆、おいしいものが好きで、食事しながら「次の食事は何にする?」と話すような家族でしたね。月に一度は両親の友人たちが集まって大パーティ。その会では、今度はふぐを食べに行こう、次はイノシシにしようと話していて、ですから私は「食」がとても大切なもので、それが当たり前と思って育ったんですね。そのせいか、小さいころから料理本を読んでは、空想していました。オランデーズチーズって何だろう? ポムフリットってどんな味? アラスカではアザラシを食べるの? とにかく、「知らない食べ物」を知りたかった。「しくみ」が知りたいんですね。どこから生まれたのか。どう発展したのか。なぜ今の形、味になったのか。
- 内田さんがよくお作りになる手作り調味料を教えてください。
- 私は、料理と料理の「境界線」が気になるんです。シンプルに素材を生かした料理を複数作って、皿で少しずつ混ぜ合わせながらできる味、食べ方が嫌いじゃない。口の中で味がリレーして、その中で完成された味になる。その組み合わせを考えるのが好きなんです。ですから、味を”調整”するものたちが「あるとうれしいもの」ですね。毎夏に作るのは、青唐辛子の醤(ジャン)です。ペースト状にした醤は「翡翠醤」。発酵して冬においしく食べます。梅やかりん、ゆず、きんかん、洋ナシなども、そのときどきでシャンパンビネガーに漬けておきます。保存食を作るのではなく、いつもの食事をおいしくしてくれるもの、それが「あるとうれしいもの」です。
- おすすめの「あったらいいおやつ」を一つ、教えてください。
- いちご、4月には小さなものが安くたくさん出ますね。たっぷり買って、きび砂糖でマリネしておくといいですよ。バニラビーンズを入れておくと、さらにおいしくて、生のいちごより食べやすくなります。冷蔵庫にあると娘はよろこんで食べています。秋になったら、栗を茹でて、バターを加えてペースト状にするんです。この栗バターは、冬中楽しめます。
- 料理を作るとき、いちばん大事にしていることはなんでしょう。
- おいしさはもちろんですが、私にとっては「清潔感」はとても大事ですね。料理もですが、自分自身も、と思っています。料理教室をしていても、お客様をもてなしていても、とくに手は目立ちます。ですから、爪はいつも短く手入れしていますし、できればつややかさを保っていたい。毎日水仕事をしていますから、どうしても手は荒れてしまいます。今使っているデルメッド 薬用ハンドクリームは、しっとり守ってくれるのにさらっとして、とても気に入っています。
●次回は、ヴィンテージの布でエプロンを作る「エプロン商会」の滝本玲子さん、市村美佳子さんが登場します。お楽しみに!
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内田真美(うちだ・まみ)
料理研究家
長崎県生まれ。夫と娘の3人家族。雑誌や書籍、広告などで活躍。20年以上台湾に通い、自分で確かめた味、確かめた場所をガイドする『私的台湾食記帖』『私的台北好味帖』が好評。他にも『最後にうれしいお菓子たち』『洋風料理 私のルール』など。今年、新刊刊行予定。
Instagram @muccida
撮影・青木和義 ヘア&メイク・広瀬あつこ 構成と文・越川典子