「憧れのプリン」として、ずっと愛されているレシピがあります。卵多めで、ちょっとクラシカル。大きな丸型で作るダイナミックなプリンです。考案者は、料理研究家・内田真美さん。どうしても、その味を教えてもらいたくて伺ってきました。
内田さんには、お茶の話、台湾の話、手作りのおいしいものの話など、4回に分けてたっぷりお話を紹介します。
- 内田さんの作る大きなプリン、「幸せのプリン」と呼ばれていますね?
- 「夢にまで出てくるプリン」とか「母さんのプリン」とか、いろいろな呼び方をされています(笑)。初めてレシピを発表してから10年以上、プリンがだんだん大きくなっていって、今は直径18㎝の丸型に。皆、大きなプリンには大喜びします。作って一晩冷蔵庫でねかせるのだけれど、翌日、型から抜かずに持っていけるので、おもたせにも好都合なんです。皆の前で、えいっとお皿に移す。ここが肝心で、一番の盛り上がり。子どもは歓声をあげるし、意外にすごく喜ぶのは男性。男性って、自分の知っている味が好きですよね(笑)。さ、始めますね。静かに(顔、真剣)。こうして(器のぐるりにナイフを入れ、プリンを切り離す)。ン!(お皿をのせて、もち上げて降り下げる)。あ~、うまくできました!!
- 切り分けても立っていて、感動です。何が違うのでしょう?
- そう。切って、取り分けても崩れないのです。卵の分量が多いのだけれど、工夫はひとつではなくて、そこまで行きつくまでに山ほど試作しました。でも、これが完成形ではなくて、まだレシピは動いています。それは、私が「自分でおいしいと思う、偏愛する味」を追究したいから。この分析好きは、昔からですね。初めてパリに行ったときも、テーマを決めて同じものを食べ比べ、何がどう違うのか、なぜこうなるのか、頭にデータを積み重ねていました。プリンも同じ。使うオーブンも違えば、作る状況も違うわけですから、何度も作って、それぞれの家庭の味を作ってもらえればいいなと思っています。
- 口の中にふわ~っと広がるバニラの香り。舌触りもなめらかです!
- よかった! プリンって、嫌いな人が少ないんですね。材料も知っているものだし、安心のデザートです。「料理」は日常生活の延長だから「できて当たり前」と思われてしまうのだけれど、お菓子を手作りするって「特別感」があるんですね。自分のためにわざわざ作ってくれた、大切にされているんだと思う気持ちが、幸福感につながるのかもしれませんね。ひとりで食べるお菓子もいいけれど、こうして一緒においしいものを食べると、楽しい時間になります。さ、召し上がってくださいね。
- プリンを切る内田さんの手元に注目していましたが、肌がとてもきれいです。
- いえいえ、手にもポツポツが少し。肌が白いので、小さいころから運動会や夏のプールの時間に、すぐ真っ赤に日焼けしてしまっていたんですね。だから、UVケアは欠かさないですね。外出するときは、顔にも手の甲にも。ただ、私にとって「きれい」の優先順位って、割と低いんです。それより、子どもや家庭のことが第一優先ですし、読みたい本、旅行のこと、書籍のことなど、他にしなければならないこと、したいことが山ほど。メイクもほとんどしません。だから、日常のスキンケアは吟味したものを選びたいと思っています。
●第2回は、内田さんが愛する「お茶」や「茶器」の話をお伝えします。
関連記事
内田真美(うちだ・まみ)
料理研究家
長崎県生まれ。夫と娘の3人家族。雑誌や書籍、広告などで活躍。20年以上台湾に通い、自分で確かめた味、確かめた場所をガイドする『私的台湾食記帖』『私的台北好味帖』が好評。他にも『最後にうれしいお菓子たち』『洋風料理 私のルール』など。今年、新刊刊行予定。
Instagram @muccida
撮影・青木和義 ヘア&メイク・広瀬あつこ 構成と文・越川典子