会いたかった人
【ずっと会いたかった人】和菓子作家の坂本紫穗さん(4)
坂本紫穗さんが主催する和菓子教室は、リピーターが多いといいます。何度も通いたくなる理由は、和菓子と向き合っている時間が心地よくなっていくからなのかもしれません。
- 大手和菓子店とコラボレーションが話題ですね。
- はい。2018年の秋から和菓子店・宗家 源吉兆庵とコラボレーションしています。自分のアイディアが多くの人に届くのはとても嬉しいことですね。2019年春・夏コレクションでは、白羊羹に華やかな色合いの錦玉羹を閉じ込めた「うらら」や、青柚子香るみぞれ羹「水たまり」が源吉兆庵の店頭に並びました。次回作が発売された際には、是非店頭で見ていただけると嬉しいです。私、姪っ子に会いにいくときは手作りの干菓子を手土産にすることが多いのですが、いつも「1日ひとつずつ、楽しもうね」と言って渡します。なにごとも適量が大事だと思いますし、それに「もう少し食べたいな…」と余韻を楽しむのも和菓子の醍醐味かなと思うのです。
- 和菓子教室は何度もいらっしゃる生徒さんが多いと聞きます。
- 東京都内を中心に教室を開いています。食べる人の顔を思い浮かべながら、ひとつ、ひとつ、お菓子を仕上げる時間を楽しんでほしい。そして、今、和菓子を作っている自分のことも大切に思ってほしい。そんなふうに思っています。「和菓子が身近な存在になりました」と喜んでくださる方や、「季節のお花をよく観察するようになりました」とおっしゃる方もいて、とてもやりがいを感じています。一方で、私自身も生徒さんからたくさんのことを学んでいます。気づかいや、思いやり、そして、みなさんの感受性や感性に大きく影響を受けることもあります。和菓子のおかげで、素敵な出会いがある。そのことに感謝をする毎日です。
- 和菓子を通して社会問題にも取り組まれています。
- 先日、「食べる」ことで社会問題や環境問題に向き合うというプロジェクトLIFULL Table「地球料理 -Earth Cuisine-」に参加しました。テーマは「竹害」。需要低下により放置された竹林が生態系を破壊し、崖崩れなどを起こしやすくしているという問題です。私は今回、竹から作られた竹の粉を和菓子の素材として使い、感覚的に竹や竹害を感じられる和菓子を目指しました。和菓子をいただくときは、視覚、味覚、嗅覚、舌触り……五感をフル活用します。見るだけ、聞くだけよりも、心や感性の深いところまで届くのではないか。和菓子を食べることで心に刺激を。そんな和菓子との関わり方をこれからも提案していけたらいいなと思います。
- 紫穗さんは、白い肌がとても印象的です。
- ありがとうございます。よかった。それは今、元気だという証拠ですね(笑)。常々「肌は何も隠せない」と思っています。心とカラダの健康、食事、ストレスやホルモンバランス……いろいろなことを物語ってしまうのが肌ですね。自分のコンディションを整えることは、とても大事だと思っているのですが、肌はそのバロメーターになっています。十分な睡眠とバランスのよい食事。そして、1日の終わりには外側からもしっかり肌をいたわること。香り、肌に乗せたときの感触、そして時間が経ってからの肌の質感を「好き」と思える化粧品があると、毎日続けられる。そういえば和菓子作りも「好き」だから続けているんですよね。やっぱり「好き」に勝るものはない。そう思います。
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坂本紫穗(さかもと・しほ)
和菓子作家
1982年生まれ。オーダーメイドの和菓子を作品として制作・監修。国内外で和菓子教室やワークショップを行う。メディアでの和菓子監修のほか、安倍昭恵内閣総理大臣夫人主催茶会(総理公邸)での茶菓子提供、和菓子屋「宗家源吉兆庵」とコラボレーション、和菓子を介して環境問題に取り組むなど活動の幅を広げている。
https://shiwon.jp/
Instagram @shiwon.wagashi
Facebook @wagashi.shiwon
撮影・青木和義 ヘア&メイク・広瀬あつこ 文・高橋顕子 構成・越川典子
プレゼント 陶芸家・田村一さんのオリジナル菓子皿 2枚セット
抽選で5名様に、陶芸家・田村一さんのオリジナル菓子皿「plate “through water” 」を2枚セット(直径14.5cm)でプレゼント。坂本紫穗さんがリスペクトする陶芸家の田村一さん。小川に積もった雪の下を流れる水をイメージした作品です。益子焼の制作を経て、故郷・秋田県で「秋田の冬の景色」をモチーフにした作品を手がける田村さん。この器を使いたいから和菓子を用意する。そんなおやつ時間をお楽しみください。