モデル・優恵の笑顔日記「明日も笑う所存です。」

ESSAY vol.25

エッセイ

【モデル・優恵の笑顔日記『明日も笑う所存です。』】 Vol.25「福木(フクギ)と馬とチューリップ。」

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2022.4.27

福木の黄色。

kittaの草木染めです。大判の布は好きに使えるので重宝します。沖縄の染織で使われる福木(フクギ)という木は、樹皮や木片を煮出して染めると綺麗な黄色になるのだそうです。シャルロット・デュマという写真家の、日本の野生馬を撮影している一連の作品がとても好きなのですが、2020年の展覧会ではkittaとのインスタレーションが心に残っています。藍で染められた布が何枚も並び、それらがゆっくりと揺れる様子は温かい海の波打ち際を思い起こさせました。kittaの草木染めの布には「魔法がかけられている」と思います。見る者、触れる者に白昼夢を見せるのです。

ある展示会場の売り場では、少し明るい、少し濃い、微妙な色の違いの布が綺麗に並んでいました。下げ札を見ると染料になった草木の名前が記されています。

祖母の作った母の指輪。

ドームの中に小さなドライフラワーが閉じ込められている指輪は、母から譲り受けたものです。同じ作りの指輪がもうひとつあるので、母の手作りだと思っていました。そのつもりで母と話をしていましたら、父方の祖母が母のために作ったものだと記憶を訂正されました。祖母はいつも何か趣味を持っている人でした。お琴、お三味線、和紙人形、ドームのアクセサリー、手先を使うことが好きだったのだと思います。祖母の家で夏休みを過ごす間、和紙人形のしおりの作り方を教えてもらい、いくつも作って夏休みの自由研究にしたことを思い出しました。

祖母から母へ、母からわたしに。祖母を感じられるのは嬉しいことです。パンツはHOUSE OF LOTUS。

可愛すぎる景色。

2005年にオランダを訪れた時の写真を見て、旅の友と「いつかまた暖かい季節に行きたいね」と話しています。4月のアムステルダムは雨が降ったり曇っていたりで寒い日が続き、持って行った薄いものを重ね着して過ごしていましたが、わたしは寒さにとても疲れていました。その当時、アムステルダムに住んでいた友の案内でキューケンホフ公園へ行き、風車と一面に咲く色とりどりのチューリップがどこまでも続く景色を見た時に「あぁ、これがオランダか!」と疲れた頭で思ったものです。本当に絵に描いたような愛らしい風景でした。

kittaのshikifuと一緒なので可愛いチューリップたちが喜んでいる、ように見えます。

いつか野生の馬を見に行きたい。

自分の干支の置物は運気を上げると聞きました。90歳を越えた方のお部屋を訪ねた際に、お部屋にたくさんの大きな馬の置物がありましたので、集めずにはいられなくなってしまうのかと思いました。80歳を過ぎた方のお部屋にも小さな馬が何頭もいました。わたしは午年ではありませんが、馬の置物が好きですので、その方の小さな馬たちを譲り受けました。この野生馬の群れのような馬たちを見ていますと、いつか本当に見に行きたいと焦がれます。

陶器の白い馬は20年くらい前に、骨董品を扱う小さなお店で買い求めたものです。

文と写真・優恵

優恵

ゆえ

モデル・俳優。ティーン誌『mc Sister』の専属として活動を始め、カバーモデルをつとめる。『non-no』『SO-EN』など多くの女性誌、TVコマーシャル、ファッションショーなどで活躍。20代後半からは映画、ドラマに出演し、活動の場を広げる。近年の出演作品に、美玖空トライアル公演「女は女で、女である」(2021・美玖空 脚本/演出)、『秘密のフレグランス』(2021・富田大智 監督)、『Motherhood』(2019・萬野達郎 監督)、『しあわせだったにゃよ』(2019・利重剛 監督)、『午後の悪魔』(2017・中村真夕 監督)、『アイズ』(2015・福田陽平 監督)、『PASSION』(2008・濱口竜介 監督)、インスタシネマ『女図鑑』(2019・美玖空 脚本)などがある。ドラマとファッションとおいしいものと花をこよなく愛する。フォトエッセイ『昼寝の前に』を連載中。https://6ropeway6.com/

撮影・青木和義