会いたかった人
【ずっと会いたかった人】日傘作家のひがしちかさん(3)
日傘作家のひがしちかさんは、周りの人を包み込むような空気感の中で、ゆったりとした笑顔で話す人。「そうなったのは、自分を変えてくれたものがあったから」と言います。
- 都会の生活から山での暮らしになって、何が変わりましたか?
- 振り返ると、子どもを抱えてのシングルマザーで、代官山に出したお店の失敗など、傍から見たら、大変なことはたくさんありましたね。「私は何ものでもない」「だから150%がんばらないと」とずっと思っていました。毎日「TO DOリスト」を作って、達成しなくちゃ、と必死でした。でも、山での暮らしを通して、人間がハンドリングできない、太刀打ちできないことがたくさんあると知って、変わった気がします。種を蒔いても育つもの、育たないものがあったり、予想外に大きく育つものがあったり。無理せず、今日できることをしよう、大きな流れの中で、自分が何をするかという視点に変わってきています。
- 日傘を制作する姿勢には影響がありますか?
- 3人目の子どものうち末っ子はまだ0歳児ですし、時間には限りがあります。ですから、優先順位をつけて、これを「やらない」と決めるんです。すると、私自身が「やりたい」ことがかえって濃厚になっていくような気がしますね。5年後、10年後というサイクルで考えられるというか……。自分との対話が増えましたね。都会にいるときは、人と会うことが多くて、入ってくる情報量がものすごかったのですが、今は、自分の内面に問いかけることが増えました。この作業はずっと同じやり方をしてきたけれど、別の方法を試してみようとか、私は作りたいけれど、これって求められていることなのだろうかとか。バランス、なんでしょうか。
- ひがしさんにとって、幸せとは何ですか?
- 初めて長野の土地を見に行った時、小学生だった長女が、白樺やブナの林の中をばーっと走り出したのを見て、「あ、ここでいいんだ」と納得したことを覚えています。今、ふつうに家族でご飯を食べて、子どもが元気で、守ってくれる家屋があって、ぐっすり眠れて・・・幸せっていうより、この生活がありがたい。ありがたくてしかたがないです。私はずっと「今の状況を変えたい」「どうやったらもっと楽しく生きられるのか」「自分の毎日を好きになりたい」と思ってきたんですね。自分の人生が好きじゃなかった。どうしたら自分を愛せるようになるのだろう、とずっと思ってきたんです。ようやく今、自分の人生を愛せるようになりました。
- 本当に、幸せそうな笑顔が印象的です。
- そうですか?「ちかちゃん、またシミができとると!」と母に注意されることがあって、はっとすることがあるんですよ(笑)。内面だけじゃなく、外側も、ですね。デルメッド ホワイトニング スポットクリームは、気になる部分に必ずつけています。正直、優先順位としては「きれい」は最優先ではないのですが、何の手入れもしないでシミだらけになるのはイヤですね。いつも笑顔でいたいから、ちゃんと効果のあるものを使いたい。鏡に向き合っている時間も、ある意味、自分を見つめている大事な時間だと思っています。そうそう、長女はもう洋服やメイクに関心があるみたいで、日焼け止めも一緒に使っているんですよ。
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ひがしちか(ひがし・ちか)日傘作家
1981年、長崎県諫早市生まれ。文化服装学院卒業後、アパレルの仕事などを経て独立。1点ものの日傘ブランドとして「Coci la elle(コシラエル)」を、2010年にスタートする。ブランド名は、手仕事で「拵える」からとった。ブランド名通り、ひがしさん自身が一本ずつ手書きや刺しゅうをほどこして日傘制作をしている。現在は、オリジナルプリントの雨傘やスカーフ、ハンカチ、アイフォンケースなども制作・販売する。東京・清澄白河、神戸と2軒のショップをもつ。2017年に長野の八ヶ岳山麓にアトリエと居を移し、さらに精力的に制作を続ける。ビジュアルブック『かさ』(青幻社)がある。
https://www.cocilaelle.com/
撮影・黒川ひろみ 前田和尚 構成/文・越川典子