インテリアスタイリスト・石井佳苗さんの事務所兼ご自宅は、いるだけで楽しい。それは、石井さんの目で選び抜かれた「アート」がそこかしこにあるからだ。アートというと、手が届かないもの、縁のないものと思いがちですが、違っていました。ユーモラスなもの、美しいもの、不思議なもの・・・年代も素材もさまざまなアートが同居しています。
- 「アート」を上手にインテリアに活かすコツを教えてください。
- 「アート」というと敷居が高く感じてしまいますよね。でも、自分が「ときめく」ものという基準ならどうでしょう。なぜか惹きつけられる、そばに置いておきたいと思えるもの。値段の高さではありません。旅先で見つけた、ちょっとしたものだっていい。個展や展示会に顔を出して、「これ!」とインスピレーションを受けたもののひとつに、ワイヤーアートがあります。作家は、HAyU(ハユ)の小川学さん。動物や歴史上の人物を立体ドローイングで作っています。ひと目見たときから気に入って、今日は、うちの社員ズ(3匹の猫、ポポ、メグ、ハナオ)の作品を寝室に飾っています。楽しむコツ、活かすコツはただひとつ、しまい込まないで、飾ること。見ること。季節によって、飾る場所を変えてみる。すると、もっと楽しめると思います。
- 動物の人形がたくさんありますね。
- 動物好きです(笑)。棚には、オコジョの焼き物、木製の馬、フェルトの人形、金属で作られたものも。古道具屋や骨董市、日本国内や世界中で見かけて、どうしても一緒に帰りたくなったものばかりです。デスクの左側に、教会の椅子を置いて、洋書を置いているのですが、今そこには、オオカミちゃんのぬいぐるみがあって、私の方を見ています。黒田有里さんというぬいぐるみ作家の作品です。黒田さんのオオカミちゃんは、アンティークの生地やレース、デッドストックのシーツ、古着のセーターなどで手作りした衣装を着て、一体一体が個性たっぷり。眼は、黒田さん自身が焼いた陶器なんです。ちょっと毒を感じるところも、大好きです。
- 作品を組み合わることも多いですね。難しくないですか。
- アートって言葉がよくないのかな。しかつめらしく鑑賞する対象のように感じてしまうけれど、私にとってアートは日常にないと意味がない。すごく刺激を与えてくれるものもあれば、ふっと笑顔になれる、見るたびに励ましてくれる、アートにはそんな力もあります。素材も年代も違うものを組み合わせて飾るのは、私のいたずら心。来た人が「これ、何?」「面白い」と言ってくれれば、という思いもありまして。写真の鏡の手前に、人のオブジェを飾ったら、後ろ姿も見えて、楽しくないですか?
- 新しいものは取り入れるほうですか。
- 古いものが好きですが、実は私は、新しいものも大好きなんです。なぜならば、新しい発想や工夫があって生まれたものだから。素材ひとつとっても、機能はアップデートしていると思うし、なぜこんな発想が生まれたのか知りたくくなります。化粧品も、どんどんよくなりますよね。最近驚いたのは、デルメッド インナー プロテクトジェルです。「日焼けしない肌に仕込む」というコンセプトがユニーク。そこには、新しい研究があり、理由がある。そういうものに触れると、自分にも刺激をもらえますね。
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石井佳苗(いしい・かなえ)インテリアスタイリスト
インテリアの大手家具メーカー、カッシーナに勤務後、独立。インテリアスタイリストとして、またDIYの名手として、雑誌やウェブサイト、広告などで活躍。自宅をDIYでセルフリノベーションして大きな話題に、DIYブームを牽引した。その工程はすべて『Love Customizer 1,2』に収めた。他に『DAILY LIFE』『Heima』などの著書がある。主宰するウェブマガジン「Love customizer」http://www.kanaeishii-stylist.com/
撮影・黒川ひろみ ヘア&メイク・レイナ 構成/文・越川典子