【ずっと会いたかった人】動物作家・篠原かをりさんが語る10年後(2/2)

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2022.8.5

今知っている生き物の魅力は、ほんの10%くらいかもしれない。もっと深く、その魅力に触れてほしい、知ってほしいと篠原かをりさんは言います。なぜなら、生き物を知ることで、人間を知ることができるから。動物作家として、どんなことを伝えていきたいのか、篠原さんに聞きました。

※篠原かをりさんの推薦する電動歯ブラシのプレゼントがあります。応募フォームは記事最後に。篠原さんの著書とセットです。

――鏡の前に飾ってあるライオンの絵、独自の色づかいですね。
これは、TV『世界ふしぎ発見!』で描いたものです。習っていたこともあって、絵は、描くのも見るのも好きです。絵と言えば、小学生の頃の忘れられない思い出があります。絵具の蓋を閉め忘れたのか、絵具箱の中で全部のチューブから中身が出てしまって、みどり色しか残っていなかったことがありました。その日の授業で、私はみどり色の濃淡で「春のウサギ」という題で絵を描いたんですが、親が呼び出されてしまいまして(笑)。「ウサギはみどり色で描いてはいかん」というわけです。両親ですか? 常にほめてくれました。このウサギも。絵画教室の先生も描き方を決めつけることはなかったですね。
――大人から理不尽な指摘をされても、子どもは無力です。
学習性無力感というものがあって、「次もダメになるに違いない」と思うのは、生き物には機能として搭載されています。ですから「あきらめ」も一つの武器ではあるのだけれど、一方で、自分そのものを漠然と肯定できる力、自分を認める力が生きるためには大事だと考えます。他人が評価してくれなければ、自分を肯定できないのでは生きられない。過剰な自信をもつのはリスクだけれど、嫌われたくないからと他者評価に頼ることばかりが正しいわけじゃないと思います。私、9年以上塾で講師を続けているのですが、そんなことを生徒に伝えたいという思いがあるのかもしれません。
――どんな子ども時代だったのでしょうか。
小中高一貫の女子校に通っていたのですが、ずっと居心地が悪かったですね。生き物のことばかり考えてきて、人間社会のルールには今でもうといです。他人と時間軸が違うのか、年上の友人も年下の友人も、私には同じ時代を生きる同級生としか思えないのですが。
同じく生き物好きな父親が気に入って掛けているビュッフェの版画の前で。
――小さい頃から生き物好きで、将来は研究者になろうと思っていたのですか。
生物の研究ができる大学に進み、いつか生き物に関わる仕事につければいいなと漠然とした目的はありました。ところが、中高時代に生物部に所属していたのですが、先生と折り合いが悪くて、すぐにやめました。それで、私立文系コースに変更。学校で「クイズ研究会」を立ち上げて、高校生クイズに出演したのが、私のテレビデビューです。
――「Qさま」に初出演して、初優勝しましたね。
はい。それからテレビやラジオに出ていますが、「動物オタク」イコール「人間嫌い」という、わかりやすいストーリーにされたり、結論づけられたり、違和感を覚えることもありました。誰もが、外からは伺い知れない人生や思いがあるわけなのですが……。生き物は、すべて一個体。自然現象のひとつ。一瞬の生命として役割や個性をもち、生命をまっとうしています。人間社会も、違いのある個々をそのままに肯定し合える社会になればいいと思います。
――2020年の「ミスター慶応SFC」に応募もなさいました。
その年、ミスコン・ミスターコンの応募要項に「年齢・性別がなくなる」と学内ニュースが流れたんです。目の前に、時代の変化の流れがあるなら、その渦中にいたいと思ったことが応募理由です。もともと性別による分類は意味がないと思っていたので、それならミスターかな、と。人が決めた規格に自分を当てはめて生きる必要はないんだという発信になればと思っていました。
――応援してくれた学生たちも多かったそうですね。
ミスターコンに出た女性ということではなく、個人として応援してくれた人が多かったのはうれしかったですね。属性ではなく、一人ひとりの個性を魅力と感じてほしいので。たとえば、私が自分の顔で好きなところは、ちょっと三白眼のところ。名前も、かおりではなく、かをりの「を」になっているところ。そんな違いがその人らしさを構成する要素。違いを否定する必要はないし、皆と同じである必要もないのですから。
ミスター慶応SFCのファイナリストの一人として活動した2020年。
――篠原さんの肩書は、研究者ではなく、動物作家ですね。
他の生き物を知ることは、人間を知る上で大きな意味がある。だから、研究も作家であることも、目的は一緒ですね。「ヒトと動物の関係学会(HARs)」という、自然科学系、社会科学系、人文科学系、芸術分野と学際的な研究をする学会もあるんです。飼い主と犬、馬や牛などの経済動物のこと、生物資源など……テーマはいろいろ。
――昆虫食も、篠原さんのテーマの一つでしたね。
はい。昆虫食は今の研究でもあります。慶應大学では、修士論文がハチノコの昆虫食でした。文芸作品の中を通して、人間が昆虫をどう感じて生きてきたのかを研究するーーそれが博士論文のテーマです。私自身、コオロギ食やセミのチリソースも大好きですが、今や、宇宙食としてもとても期待されています。ヒトと昆虫は、共通の感染症リスクが低いんです。世界的食糧難の時代ですから、選択肢が多いほうがいいですよね。そのためには、たしかめて知見を蓄積することが必要です。
――コオロギせんべいなども、最近では見かけますし、昆虫食カフェも。
虫の研究も、人の心をつかんだもの勝ちと思います。できるだけ多くの人の興味をもってもらえるようにしたい。それには、自分が社会や時代にどういう関わり方をしていくかということだと思います。今って、ネットで何となく知った気になれる時代。ヒトがピラミッドの頂点にいて、他の生き物のことはすべて解き明かされたかのように錯覚していますが、全容がわかっているわけではありません。知れば知るほど、奥が深い。わかった気がしてとどまってしまうのは、もったいない。今知っている魅力なんて、10%にも満たない。100倍も1000倍も面白いかもしれないのに。もっと踏み込んで、もっと不思議に触れていってほしいと思います。
自分の存在が、「こうあるべき」という枠組みをはずす手伝いになればいいと考えている。塾の講師をずっと続けているのも、そんな理由からだ。
――10年後、どんな自分でありたいと思いますか。
10代、20代はルッキズム(外見至上主義)に悩む人も多いと思います。私自身、小中高では、不登校になったり、自分を否定する瞬間があったりしましたが、寄り添ってくれる人の存在によって、未来に明るい光を見て生き延びてきました。私は今、27歳ですが、10年前の自分が「(今ここに)いてほしい大人」でありたいと思います。さらに10年後も20年後も、そういう人間であるようにし続ける。あきらめない大人でいたいと思いますね。
――あきらめないでいれば、状況は変わる?
今ダメであっても、「負けずにいる」こと、耐え忍ぶ力はすごく大事だと思いますね。苦しくても焦らず、「必ずこうなる」という気持ちを持ち続ける。浮いて救助を待つように、ダメージを大きくしない。もがかないことも勇気のひとつ。いつか来る好機のために、それすら肯定して待っていられる力って、必要だと思います。
――明日の好機のために今日しておこう、という習慣はありますか。
ヒトは、昼行性ですね。生き物は、起きているために睡眠をとります。ところが、寝るための状態を維持するために昼に活動するのだという学説もあるんです。睡眠には、夢を見て、記憶の整理をする大事な機能があって、決して無の時間ではない。昼と同等か、それ以上に大事な時間だという考え方です。私は、実感として理解できます。
――眠る時間を大切にしているのですね。
きちんと「切り替える」ことですね。スマホをずっと見ていて、寝落ちするのはよくない。「寝よう」とする、何かスイッチがあるといい睡眠をとれます。その儀式に、デルメッド ナイトリッチがとてもいいのです。つけたときの肌感もいいのですが、翌朝目覚めたあと「朝が始まった! という顔」になっています。昨日を引きずらない。触り心地もいいんですね。もちもちした感触。求肥(ぎゅうひ)のような、毛のないスキニーラットの触り心地のような(笑)。朝のための夜の時間、私の新しい習慣ですね。
生き物の、皮膚や毛の感触が好き。自分の肌が、もっちりした触り心地になれるデルメッド ナイトリッチが好きだ。

商品

夜用トリートメント

ナイトリッチ

【情報】医薬部外品 【商品番号】335 【容量】30mL(約2~3ヶ月分)

通常価格11,000円(本体価格10,000円)

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※次回は、8月19日配信。デザイナーの鈴木ゆうみさんが登場します。

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篠原かをりさん(しのはら・かをり)
動物作家

1995年横浜生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。日本大学大学院芸術学研究家博士後期課程在籍中。幼いころから生き物をこよなく愛し、ネズミ、タランチュラ、フクロモモンガ、イモリなど様々な生物の飼育経験がある。驚異の知識量を武器にクイズ番組『Qさま‼』に初出場で優勝。『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンター、『嗚呼‼みんなの動物園』『有吉ジャポンⅡ』などのテレビやラジオ、雑誌連載や講演会などで活躍。著書に『恋する昆虫図鑑』『LIFE<ライフ>人間が知らない生き方』『サバイブ』『ネズミのおしえ』など多数。

Instagram @kawori_rat
篠原かをり OFFICIAL WEBSITE

撮影・森山祐子 ヘア&メイク・広瀬あつこ 構成と文・越川典子

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