お菓子&料理研究家の福田里香さんが作る新しいサラダの世界へようこそ。見て美しい、食べておいしいから会話が広がる。人と人との距離が縮まるコミュニケーションツールともいえるサラダです。そんなサラダが、2種類、隣り合わせに並んでいる姿の美しいこと。「サラダ×デザイン」を提案する福田さんに話を聞きました。
- 福田さんのサラダには<重ねる>というテクニックが特徴になっていますね。
- 「レイヤーサラダ」、よく作りますね。レイヤーと言うのは、英語で「層」のこと。野菜やフルーツを積み上げたり重ねたりするので、そう名づけました。おいしくなるからというのが理由ですが、一番の理由は、作っていて楽しいからかな? ささっと作る日常のサラダもいいのですが、やっぱり、誰か食べてもらうハレの日のサラダは思いっきりデザインしたい。見た目のインパクトもさることながら、食べるときにも楽しんでほしいから、レイヤーサラダを2種類用意することもあります。食感や味の違いを楽しむもよし、2つを混ぜて新しい味を発見するもよし。食べているうちに「舌で味わう」から「脳で味わう」にシフトする。このニュアンスが楽しくて、やめられないんです。
- 2種類のサラダを調和させる味つけの工夫を教えてください。
- まったく同じ味つけだと面白くないので、「これとこれって、混ぜたらどんな味になるんだろう?」と想像するのが楽しくなるようにしていますね。たとえば、片方をクリームベースにしたら、もう片方はレモンをキュッと利かせたさっぱりテイストに。フルーツをたっぷり使った甘みのあるサラダには、ピリッと辛みの強いサラダを用意するとか、意外な組み合わせを意識しています。ズッキーニにのせたディップは、ズッキーニとプチトマトをまとめる役割をしているし、トマトを和えたドレッシングとの調和も考えます。想像もするけれど、おいしいものには、その陰に山ほどのトライ&エラーがあります(笑)。
- 盛りつけなどのデザイン、見た目で味まで変わると思いますか?
- 思います! 講演や取材で地方に行くと、その土地の名店に訪れるのも幸せですが、ここ3年くらいはビジネスホテルの朝食に夢中です(笑)。Instagramにも「#ビジネスホテルのビュッフェでも味はリデザイン出来る」というハッシュタグをつけてたびたび投稿しているのですが、ビュッフェって食材がパーツで用意されているじゃないですか。しかも、和食から洋食までそろっていて、盛りつけも自由ですし、組み合わせも自在。何十種類もの食材を目の前に、何を食べよう、何を作ろう、と頭をフル回転させるわけです。おかゆに濃く煎れたジャスミンティーをかけて中華粥風にしたり、焼き魚とマヨネーズをはさんだベトナム風オープンサンドを作ったりと、ホテル側が想定していないような(笑)、組み合わせや盛りつけを楽しんでいます。見た目もですが、思わぬおいしさとの出合いがあります。
- 福田さんにとっては、味のデザインのコツを教えてください。
- 私のサラダは、旬の出盛りの野菜や果物を使うのが基本ですが、ハーブやスパイスも欠かせません。タイム、ディル、ミント、パクチーなどの香り高いハーブ、ピリッとスパイシーな粗びきコショウ。色鮮やかなエディブルフラワーを使うこともあります。それから、ローズマリーを漬け込んだオリーブオイルを常備していて、サラダの仕上げに添えたりしますね。ハーブやスパイスの持つ唯一無二の香りが、サラダに深みとよそゆきの表情を与えてくれます。そんなふうに考えると、私にとって化粧品はハーブやスパイスのようなものかも。人前に出るときや、きちんとした場所に行くときに、自分自身を色つやよく見せるために欠かせないもの。日々のスキンケアは、ここぞというときのメイクを活かすための土台作り。肌に合うものを長く使い続けることが大事なのかなと思っています。
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福田里香(ふくだ・りか)お菓子&料理研究家
1962年生まれ。武蔵野美術大学卒業。果物の専門店・新宿高野に勤めたのち、独立。漫画への造詣が深く、作品に登場するフード(食べ物)表現を考察した『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』(太田出版)は注目を集めた。フルーツを使った独創的なスイーツや料理にも定評があり、雑誌でフードコラムを担当するほか、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)など著書多数。民芸にも詳しく、近著に『民芸お菓子』(エイ出版)がある。
Instagram:@riccafukuda
撮影・青木和義 ヘア&メイク・レイナ 文・高橋顕子 構成・越川典子