福田里香さんが作るサラダは、食卓に登場した瞬間にわっと歓声があがります。その秘密は、道具にありました。包丁、スライサー、ピーラー、グレイター、チェリーピッター…調理道具を巧みに使い分けながら、あっという間に美しいサラダを作ります。「道具には新しい味を生み出す力がある」という福田さんに、使い方を教えてもらいました。
- フルーツを使ったレシピの中で、さくらんぼの種を取るための道具が話題になりました。
- そうなんです!! 私、さくらんぼの種を取るのがたまらなく好きなんです。この「チェリーピッター」は25年以上愛用しているもの。ジャムの空き瓶にかぶせて、蓋の上にさくらんぼを置いたら、上のレバーをぐっと下に押すと、種が瓶の中にスポンと落ちる仕組み。汁も飛ばない、力もいらない、優れものです。さくらんぼの名産地・アメリカのミシガン州の家庭用品店で購入したものですが、たくさんのさくらんぼを使うパイやタルト、ジャム、サラダを作るときに大活躍。チェリーピッターでの作業が好きすぎて、Instagramに投稿したら、問合せが殺到(笑)。何と、今年、日本での販売が決まったんですよ!(プレゼントにもしています)
- 調理道具をうまく使いこなすコツを教えてください。
- みんなに喜んでもらえるサラダを作るために、ときどき、いろいろな道具を使って実験するんです。マッシュルームを花びらのように見せたいから、すごく薄く削ぐことができるスライサーで試してみようとか、ズッキーニを細長く帯状にするならピーラーがいいかしらとか。包丁では表現できない形になった野菜は、今までに味わったことがない食感、歯応えなんです。道具によって新しい味が生まれる、道具のおかげでレシピのアイデアが湧いてくるって、すごいことだと思っています。まずは試してみること。こんな道具もある、こういう使い方したら、すごいことができたという報告も、待っています(笑)。
- サラダづくりが各段に上手になる調理道具って、ありますか。
- 彩りや仕上げ、香りづけに欠かせないグレイターがそれです。チーズや柑橘類の皮を削る、細かい目のおろし器ですね。ほんのひと手間で、味が一気に深まります。たとえば、さくらんぼ。日本人はさくらんぼをデザートとして生食で食べることが多いですが、チェリーピッターで種を取ったさくらんぼを2つに切って、マスカルポーネチーズで和える。これだけでも、みんな驚くのですが、さらに、グレイターですりおろしたパルミジャーノ・レッジャーノ、さらにレモンの皮をすりおろすと、塩気と酸味、さわやかな香りが加わって、一気に上等感が増すんです。
- 豆好きの福田さん。ミキサーを使って作るフムスもおいしそうでした。
- フムスはひよこ豆で作る中東の料理ですが、豆の種類を変えて楽しんでいます。ソラマメで作ったフムスは、ほろ苦さが後を引く味わいでしたね。ミキサーで攪拌するときは、ざらっとした舌ざわりを残しつつ、なめらかに仕上げると豆の味が引き立ちます。我が家では、ゆで大豆を冷凍庫にストックしていて、しょっちゅう豆料理が登場します。ゆでるのは少し手間ですが、手間をかけた分、おいしい。それに、ほかの野菜にはないたんぱく質が摂れるところもいいですよね。中でも黒豆は、ポリフェノールたっぷりで抗酸化作用があると言われているので、疲れているときこそよく食べます。疲れのサインですか? そうですね。最近は肌や髪に出ることが多く、特に髪がパサついていると元気がないと思われてしまうので、年齢に合った地肌ケアが必要だなと感じているところです。大豆をゆでる手間を惜しまない自分を見習って(笑)、毎日の地肌ケアも習慣にしていきたいなと思います。
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福田里香(ふくだ・りか)お菓子&料理研究家
1962年生まれ。武蔵野美術大学卒業。果物の専門店・新宿高野に勤めたのち、独立。漫画への造詣が深く、作品に登場するフード(食べ物)表現を考察した『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』(太田出版)は注目を集めた。フルーツを使った独創的なスイーツや料理にも定評があり、雑誌でフードコラムを担当するほか、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)など著書多数。民芸にも詳しく、近著に『民芸お菓子』(エイ出版)がある。
Instagram:@riccafukuda
撮影・青木和義 ヘア&メイク・レイナ 文・高橋顕子 構成・越川典子