【ずっと会いたかった人】書家・岡西佑奈さんの伝えたいこと(2/2)

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2022.3.3

コロナ禍で活動もままならない中、世界中の人たちから希望の言葉をSNSで募り、「希望の書」というイベントで話題になりました。五輪連載企画「熱戦の書」や、筆ではない素材で描くアート作品も精力的に発表している書家・岡西佑奈さん。また、数年にわたって子どもたちにも書を教え続けている、その理由も知りたくなりました。

※最後に、岡西佑奈さんセレクトのお香と香皿のプレゼントがあります!

――「希望の書」は世界中に呼びかけたことで話題になりましたね。
コロナ禍で人々の気持ちは、まさに暗黒。でも、希望をあきらめたくない。そんな思いからのプロジェクトでした。真っ黒いキャンバスの上に、黒の絵具で「絶望」と書いてあります。その上に、世界中から届いた言葉を、とりどりの色で書いていったのですが、私が書いたのは、送ってくださった一人ひとりの人生、それぞれの物語そのものでした。
――パフォーマンスという形でも、観る人を勇気づけたのではないでしょうか。
作品が出来上がる過程を、観る方がいらして初めて成り立つ、エンターテインメントだと思っています。もっと言えば、一緒に作り上げるものかもしれません。私がこう感じるのは、10代のころ舞台女優を目指していたからです。18歳で、蜷川幸雄さんの『マクベス』を観たのがきっかけです。大学で、たまたま蜷川先生の授業を受けることができて、表現を学びました。そのころからですね、あらゆるものを観察しようと意識的になったのは。
――書だけではなく、アート作品も積極的に発表されています。
「墨象(ぼくしょう)」というシリーズがあります。筆ではなく、あらゆる素材を使って、白と黒の世界を描いた作品です。あるとき、私が描いているのは、黒い文字より、白い部分こそ描いているのではないかと感じて。モノクロの虚実の世界を表現しながら、何が本物なのか、何が大切なのかを追究したいと思っています。
SNSで寄せられた何百件という希望の言葉を見て、「自分のほうが励まされました」。
――一度、書を封印したことがあったそうですが。
高校を卒業するまでに師範の免許をとったのですが、ちょうどそのころ師である先生が亡くなりまして。道具類をすべて段ボールにしまい、封印していたのですが、ある日、母の友人が私の書を見て「いいわね」と言ってくださったんです。そのひと言で心が動かされて、気づいたら道具をひっぱり出して、朝まで一心に文字を書いていました。22歳、書で生きていくんだと感じた日でした。
――書くことは、岡西さんそのものなのですね。
あの瞬間は、素の自分、ありのままの私だったのだと思います。今、私は毎朝、座禅を組むのですが、それは自分が「無になる」「空っぽにする」プロセスなんです。東京の、ざわざわした日常の中にいて、ありのままの自分で生きることを目指さなければと感じています。
――大好きな字があるとか。
「儘」という字です。人、筆、皿を組み合わせた文字で、皿の中を筆で空っぽにしていくことを表しています。心の断捨離ですね。素の自分になる、そういう意味なのです。幼いころから母に「あなたはありのままでいいのよ」と言われていましたが、この「儘」という字を知ってはじめて、意味が理解できました。何かに迷ったり、つまずいたりすると、答えがほしくなってこの字を書くのだろうと思います。たぶん、死ぬまで。とげとげしい「儘」になったり、やわらかい「儘」になったり。うんと年をとったときに書いたら、どんな字になるのだろうと、今から楽しみなんです(笑)。
岡西さんが使う筆、いろいろ。相当な重さがある。
節目ごとに書き続けていきたい文字だと岡西さん。
――どんなお子さんだったのでしょう。
幼稚園にいるとき、他の子どもたちの声が、心の声なのですが、悲しい思いが聞こえてきて、それがつらくて、庭の隅にうずくまってばかりいました。なぜ聞こえるのだろう、なぜこんなに悲しみがたくさんあるのだろうと思って、私は自分の感情を消すようになった気がします。その声は次第に聞こえなくなるんですが、この体験が、自分や誰かの気持ちを表現したいという思いにつながっている気がしますね。
――子どもたちに書を教えているそうですね。
小学生を対象に、自分の「名前」を書くことを教えています。ずいぶん前のことですが、小学生がお母さんの編んでくれたマフラーで首を吊って亡くなったというニュースを聞いて、とてもショックを受けて。自分を大切に思ってほしい、命を絶ってほしくない、そんな思いを伝えたいと思うようになったんです。「名前」は、その人を大事に思っているという気持ちそのもの。人生で初めてもらうプレゼントです。名前を大事にすることは、自分を大事にすることですから。
――子どもたちの反応はどうですか。
「両親と名前のことを話して、すごくよかった」「家に帰るのが楽しくなった」と聞くと、うれしくなりますね。以前、「変」という字をSNSにのせたときのことです。「変わることは勇気」という言葉を添えて発信したのですが、「あの作品を見て、自殺を思いとどまりました」と連絡をくださった方がいらして。私自身も迷うことがありますが、一人でも私の作品から何かを受け取ってくださる方がいる限り、書を続けていこうと思います。
コロナ禍で制限があるほど、したいことが山ほど。未来へ思いをはせている。
――環境問題など、社会的なメッセージも発信してらっしゃいますが、岡西さんの作品に共通しているテーマとは何でしょう。
それは、「調和」ですね。欧米では「調和」は「自由」と対極にあるものととらえられますが、禅や仏教でいうところの「万物の調和」と共に生きてこそ真の自由と思っているんです。分断ではなく、「調和=幸せ」であることを、書を通じて伝えていきたいです。
――人生でいちばん大切にしていることは。
美しいものを「美しい」と感じる心でしょうか。私は夕焼けが大好きで、毎日見ていたいのですが、あまりにも忙しくて、美しく感じることができない日があります。それは、何かに心がふさがれていたり、悩みを抱えていたり、自分自身に問題がある場合がほとんどです。
――自分に起きた問題を、日々、調整するのですね。
私自身、弱いところがあるからこそ、日々、書くことで自分を強く保っている部分があるかもしれませんね。書くことは、自分に問いかける、解決の糸口を見つけやすいのだと思います。
――岡西さんはお肌がとても美しいですが、これも日々の調整でしょうか。
過不足ない状態というのが理想ですね。適度に皮脂が出て、しっとり保湿されているときが調和がとれて美しい状態だと思います。素の自分でいるときもきれいでいたいから、スキンケアは大事。この冬、ローションと一緒にオイルを使うことで保湿が高まることを知って、デルメッド ディープモイスト オイルを愛用しているんです。
デルメッド ディープモイスト オイルは、化粧水の前につけることで、肌のうるおいを一層高める。

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スキンオイル

ディープモイスト オイル

【商品番号】336【容量】30mL (約3~5ヶ月分)

通常価格6,930円(本体価格 6,300円)

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●次回は、3月17日配信。ウェディング・ライフスタイル プロデューサーの黒沢祐子さんの登場です。

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岡西佑奈さん(おかにし・ゆうな)
書家、アーティスト

6歳から書を始め、栃木春光に師事。高校在学中に師範の免許を取得。水墨画は、開澤玉誠に師事。独自のリズム感で心象を表現した作品は、国内外で高い評価を受け、受賞も多数。自然界を書技によって追究し、「万物の調和」を信条に創作活動を行っている。アートプロジェクトなど独自のパフォーマンスでも注目され、パフォーマンス作品が中国天津美術館に収蔵され、フランスのユネスコ大使公邸に招聘されるなど、国際的な活動を見せている。作品集に『線の美』(青幻舎)がある。

HP https://okanishi-yuuna.com/
Instagram @YuunaOkanishi

撮影・森山祐子 ヘア&メイク・レイナ 構成と文・越川典子

お香「初風」と香皿をセット(合計約10,000円)で、5名様にプレゼント!

岡西さんが毎朝焚くお香は、東京・麻布十番にある「香雅堂」の「初風」(1,540円)。ガラス製のkiriiro 香皿 (丸・淡桜)(7,700円)をセットにしてプレゼントします。「初風」の題字は、岡西さんの書です。白檀、橙皮、安息香など天然原料が中心の、みずみずしく爽やかな風を感じさせてくれます。また、香皿の美しいピンク色は、この春の新色です。どしどしご応募ください!!

香雅堂のHP http://www.kogado.co.jp/

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