【ずっと会いたかった人】書家・岡西佑奈さんの作品の原点(1/2)
書家の岡西佑奈さんの書、「桜」の文字からは、たくましい幹と伸びやかな枝が見えてきます。「馬」は、いななく馬そのもの。「楽」は、文字がまるで笑いながら踊っているかのよう。独自のリズム感をもつ書として高い評価を受けてきた岡西さんは、今やその枠を超えてアーティストとして活躍しています。そんな岡西さんの、作品に込める思いを聞いてきました。
※岡西佑奈さんが愛用しているお香と香皿のプレゼントもあります。
- ――青いキャンバスに描かれた銀色の曲線は、美しく力強いです。
- これは「青曲(せいきょく)」というシリーズです。キャンバスの青は、海、空、そして地球の青。そこに描いた銀色の曲線は、サメが光を受けて泳ぐ泳跡なんです。何億年も前から生きているサメが太古の昔から泳ぎ続けてきただろう美しい海を、守っていきたい。そんな願いを込めて描いています。幼い頃、初めて見た「ジンベイザメ」に心を惹かれて以来、サメが大好きで、実は、海洋生物の研究者になりたかったほど。サメを見るためのダイビングにも行きます。
- ――海の中でサメと泳ぐ? 危険ではないのですか。
- サメを見るためのダイビングは、5年ほど前から始めました。実は、サメって臆病な生き物で、お腹がすいていない限り、ほぼ襲ってくることはありません。ほぼ、ですが(笑)。500種以上のサメの中でも襲ってくるのは数種類で、襲うことも非常に稀です。私はサメの中でも、「ニタリ」という、尾の長いサメがとくに好きで、尾で小魚を叩いて気を失わせて食べる。骨が柔らかいので、カラダがしなる。泳ぐ姿が本当に美しくて。考えてみれば、自然界って「曲線」で満ち溢れているんです。
- ――たしかに、自然の中に直線はありませんね。
- 曲線は、自然界そのもの。花びらがぎゅっと巻いた姿、開いていく形。木々の枝も一本として同じものはありません。雲、広がる水紋、動物の動き……曲線こそ美しいと思います。6歳で書を習い始めたのですが、字にもなっていない、うねうねとした曲線をいつまでも書いていました。自分が生み出した線がまるで生命をえたかのようで楽しかったし、その曲線を私は親友のように感じていました。
- ――書と、絵画のような作品と、区別はあるのでしょうか。
- 私の中で、文章は「書く」。書やアート作品は「描く」と区別をしているのですが、境界線がはっきりあるわけじゃありません。私にとって、書は「心象」なんです。文字の成り立ちを考えてみると、人間が見た形を表現したり、印象を具現化したりしたものが文字。もともと、「心象」だとも言えます。私は、それを誇張して「描く」。そういう意味では、文字を書いても、アート作品と言えると思います。
- ――この作品は、「人」なのでしょうか、それとも「大」?
- どちらとも読めますね(笑)。「人」という文字に入れた「横線」の意味は、人間に一本プラスされれば、もっと大きな存在になる。心の成長もある。何か一つ、いいことを足していこうという思いがありました。
- ――アーティスト側の解釈を聞くと、納得しますね。
- アーティストが伝えたい思いはあるのですが、でも作品は、見る側の解釈でもあるんですね。ですから、見て、感じてもらいたい。同じ作品でも、昨日と明日とでは感じ方が違いますし、5年前、10年前と1年後でも受け止め方が違うと思います。
- ――岡西さんの一日のスケジュールを教えてください。
- 朝は大好きなお香を炊いて、座禅するのが日課です。午前中はゆったり過ごして、午後はスケッチブックでアイディアを考えていることが多いですね。夕方には考えがまとまってきて、そのあとスイッチが入ります。作品が仕上がるまでの過程は、考える時間が85%。あとの15%が、筆をとっている時間。書き出したら休憩をとらずに朝まで……ということもよくあります。
- ――筆をもったら、もう迷いはないものでしょうか。
- はい。一切ないです。心の迷いがあったら、消えるまで待ちます。若い頃は、心身ともに最高の状態でいることが作品作りにもよいことと信じていたのですが、最近、考えが少し変わってきました。これ以上のどん底はないという体験をしたときに書いた書が、何とも言えない深みがあって、私自身、心を動かされることがあったからです。人間、誰もが迷いながら生きています。ある意味、人間の汚い部分が全部出てしまった作品であるからこそ、人の心を惹きつける何かがある。100年後、200年後に残ってきた絵画などもそうではないでしょうか。
- ――感情が揺さぶられる作品、たしかにそうかもしれません。
- そうした気づきからどんどん自分らしく、生きやすくなってきているのだと思います。マイナスな言葉は吐き出してはいけないと思い込んでいましたけれど、今は、「苦しい」という思いも素直に作品にしています。それを、自分に許している。ありのまま、自分を否定せずに生きられるので、ラクになりました。
- ――毎日、筆をもつのでしょうか。
- もちますね。バレエダンサーは踊らない日がない。ピアニストやバイオリニストも弾かない日はない。工芸品の職人さんも同じと聞きます。手の感覚が失われてしまうので。それは、アスリートと同じだと思います。自宅では「書」を。アトリエでは「アート作品」を。大きな作品は、お寺の本堂を使わせていただいています。
- ――個展やイベントの前は、きっとお忙しいですね。
- 一日中、作品のことを考えていますね。他のことは二の次。お肌の手入れも、じっくりする時間はないかもしれませんね。ですから、使い心地がよく、きちんと効果の感じられるものが、私にとっては大切です。毎日使う筆と同じですね。今は、デルメッド プレミアム クリーム No.1に助けられています。つけているだけで、美白とハリ対策が同時にできるのがうれしいですね。
- ※次回の配信は、3月3日。岡西さんに、これから伝えていきたいことを聞きました。
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岡西佑奈さん(おかにし・ゆうな)
書家、アーティスト
6歳から書を始め、栃木春光に師事。高校在学中に師範の免許を取得。水墨画は、開澤玉誠に師事。独自のリズム感で心象を表現した作品は、国内外で高い評価を受け、受賞も多数。自然界を書技によって追究し、「万物の調和」を信条に創作活動を行っている。アートプロジェクトなど独自のパフォーマンスでも注目され、パフォーマンス作品が中国天津美術館に収蔵され、フランスのユネスコ大使公邸に招聘されるなど、国際的な活動を見せている。作品集に『線の美』(青幻舎)がある。
HP https://okanishi-yuuna.com/
Instagram @YuunaOkanishi
撮影・森山祐子 ヘア&メイク・レイナ 構成と文・越川典子
お香「初風」と香皿をセット(合計約10,000円)で、5名様にプレゼント!
岡西さんが毎朝焚くお香は、東京・麻布十番にある「香雅堂」の「初風」(1,540円)。ガラス製のkiriiro 香皿 (丸・淡桜)(7,700円)をセットにしてプレゼントします。「初風」の題字は、岡西さんの書です。白檀、橙皮、安息香など天然原料が中心の、みずみずしく爽やかな風を感じさせてくれます。また、香皿の美しいピンク色は、この春の新色です。どしどしご応募ください!!
香雅堂のHP http://www.kogado.co.jp/