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【ずっと会いたかった人】ギャラリスト・ローゼン美沙子さんに聞く、現代アートの楽しみ方(2/2)

これ、好き! と感じた作品があったら、その感覚を積み重ね、深めてください、とローゼン美沙子さん。「すると、だんだん(現代アートが)わかってくると思います」。できれば、「買ってみてね。人生変わるから!」。はて、どんなふうに?? 美沙子さんに、楽しみ方を聞いてみました。

※最後に、ローゼン美沙子さんセレクトのプレゼントがあります!

――現代アートの楽しみ方を教えてください。
古典アートと違うのは、今、同じ時代に生きているアーティストとふれ合うことができること。なぜこの作品なのか? どんな背景なのか? どんな人物なのか? わかるだけじゃなくて、今の作品が歴史になっていく、その現場に自分が立ち会っているとも言えるんです。生きているアーティストと直接話すことができるって、すごく刺激的じゃないですか?
――その美術的文脈を作っているのがギャラリストだ、というお話でしたね。
そうです。新たな価値を創出するお手伝いをしているのが私たちです。ギャラリーにアーティストがいなくても、ギャラリストに何でも聞いてください。うれしくて、張りついて説明しちゃいますよ!
――まずは、足を運ばなければ!
ぜひ、訪れて、「見る」ことから始まるのがアート。現場100回! 何度でもギャラリーに足を運んで、見てほしいですね。その中から「好き」を選んでほしい。何が好きなのか、見るほどにわかると思います。
受付の加賀美健さんによる看板作品もクール。
――「わからない」という感情を、自分の中でどう消化すればいいのでしょう。
現代アート=わからないと決めつけて、思考停止してしまうのではなく、わからないのは積極的に考えるチャンス、きっかけとしてとらえてほしいと思います。うちの娘を見ていて面白いと思うのは、子どもでもアブストラクト(抽象)の概念を教えると見方が変わってきます。「これは〇〇に見えちゃうから、ちょっとアブストじゃないね」とか、展覧会に行ったら好き嫌いの感想も。一見ぐちゃぐちゃの作品も、プロが制作した「美術作品」という理解につながります。5歳でも、現代アートの概念を感覚で理解できるんですね(笑)。
――美沙子さんの教えですか。
アートには、「見る教育」「買う教育」があると思っています。とくに私たちは売る立場なので、その仕事が何か教えるためにも、見方だけでなく「買える」という心を持つように教えています。写真は、アーティストのCOBRAさんの作品です。鳥ちゃんのための作品というコミカルなシリーズ「Bird Gallery for Bird」で、目玉焼きの絵が入ってます。目玉焼きって鳥にとってはちょっとしたホラーですよね。コンセプトが面白いので娘が気に入って、購入したものなので、彼女の部屋に置いてあります。3歳のお誕生日カードには、将来の夢で「ギャラリーの人」って書いていたのが、ちょっとウケました(笑)。
CCOBRAさんの作品「Story of Eggs」。
――現代アートのコレクターって、多い? 少ない?
ブティックではないので、通りがかりに現代アートを買うことはないですよね。つまり、コレクターの方たちが買うわけですね。海外に比べて、マーケット自体が小さいんです。でも、日本で今、アートを買うのがブームなので、私たちのようなギャラリーでもその波に乗れるように変えたいです!
――「買う」と、何だか人生変わりそうです。
変わると思います。アーティストと同じ時代を共有することで、自然にアートシーンを支援する、文化を支えることになるからです。そもそも美術は、サステナブル、持続可能なもの。単なる消費とは違います。「消費」でアートといえば、アンディ・ウォーホールを思いつきますけど、消費社会がテーマの作品が、売買を繰り返し消費されてるのもシニカルですね。MISAKO & ROSENのアーティスト題府基之さんはウォーホールの作品が印刷されている缶がつぶされているショットを写真の作品にしてました。この作品は現代社会の現象と個人的な環境を表してますけど、消費社会がテーマの作品が消費を促すという現代です。この現象が美術史の文脈にあって、こういう瞬間を目の当たりにした時にそれを実感できるわけです。
――日本にコレクターを増やすには。
アート作品の価格はぴんきりです。比較的低価格の作品もあればマーケットがある程度確率されて、価格も高いアーティストもいます。そういった情報は、私たちギャラリストを活用してほしいですね。本当は、国の制度が変わることがベストで、美術館に寄付する人、長く持っている人に税金面で優遇するなどしないと、購買層は増えない可能性があります。マネーゲーム的なアートマーケットに着目していると、お金を儲けるための美術にとどまってしまいます。現代アート=文化への投資、社会的貢献という意味合いが理解されてほしいですね。
アメリカ・バーモント州のアーティスト、ウィル・ローガンさん主宰のサンセットクラブの木彫りのメンバーブローチ。箱の絵も本人が描いた。ギャラリーで販売している。
左・加賀美健さんの作品、右・ウィル・ローガンさんの作品をプリントしたTシャツもギャラリーで販売している。
――これからの目的を教えてください。
10年、20年、同じことを細く長く、続けていきたい。目標は、アーティストたちのキャリアを形成していくこと。その活動を歴史に残していくこと。作品を展示して、コレクターはもちろんのこと、美術館にたくさん買ってもらうこと。キュレーターの元で美術館での展示をすることはアーティストにとって、大きなキャリアになるので。
――そのために考えていることは?
PRもしなくては。もっと見る人を増やしたいし、もっと買う人も増やしたい。好きなものを買って、家にコレクションできることも試してほしい。そのために私ができることは、いまやっていることを広めていくしかないです。「現代美術ファンタスティック」と連呼し続けているのですが、そのうち伝わるのではないかと、希望を込めて。
――買ってみたいと思う人に伝えたいことはありますか。
「好き」と感じたのは、そこに何か美しさや興味を感じたからだと思います。そのとき、作品の背景やアーティストのことを、ちょっと調べてみてほしい。すると、「好き」だけではない、より深く理解できて、面白くなると思います。
「今の文化が歴史になっていく、この仕事はやめられないですね」
――人の評価でなく、自分で感じた美しさを信じるって、難しいです。
私は、机の傷に入り込んだ絵具の色もきれいと思うことがあります。人の感じ方はそれぞれ。たとえ、顔のシワにファンデーションがよれて入っていても、私、いやだなと思わないんですね。メイクできれいにしようとしていたその人の思いがあるわけじゃないですか。どこを見るか。また、どこを見ているかで人もわかると思います。
――美沙子さんが気にしているところはあるのでしょうか。
断然、UVケアです。シミもシワも、すべての元凶が紫外線でしょ。冬には見過されがちだけれど、私は毎日必ずUVクリームつけているんです。紫外線ブロック! 基本中の基本をはずさなければ、他は何とかなる(笑)。今、頼りにしているのは、デルメッド プレミアム UVベイス。しっとり守ってくれていますね。
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●次回は、3月17日配信。書家、アーティストの岡西佑奈さんの登場です。

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ローゼン美沙子さん(ろーぜん・みさこ)
ギャラリスト、「MISAKO&ROSEN」オーナー

1976年東京生まれ。大学在学中から「小山登美夫ギャラリー」にて働く。10年勤務したのち、2006年に独立。夫のジェフリー・ローゼンさんと共に現代アートのギャラリー「MISAKO&ROSEN」を設立する。国内外の多数のアーティストの個展を開催、世界のアートフェアに積極的に参加している。日本現代美術商協会(CADAN)理事。

MISAKO&ROSEN http://www.misakoandrosen.jp/
Instagram @misakoandrosen

撮影・黒川ひろみ ヘア&メイク・レイナ 構成と文・越川典子

アーティスト加賀美健さんによる、MISAKO&ROSENオリジナルトートバッグ、ウィル・ローガンさんの写真集とブローチをセット(合計12,100円)にして、5名様にプレゼント!

左は、ウィル・ローガンさん主宰のサンセットクラブの木彫りのメンバーピンバッジ(7,700円)。写真にはないが、ピンバッジが入っている箱の絵も、本人が描いている(かわいい)。そして、ウィル・ローガンさん撮りおろしのチャーミングな写真集(2,200円)。さらに、アーティスト加賀美健さんの加賀美フォントによる名言をプリントしたオリジナルトートバッグ(2,200円)を。バッグの文字は、「Art collecting needs good sense,but you can’t buy good sense.」希少なセットです。どしどしご応募ください!!