【ずっと会いたかった人】フラワーアーティスト・前田有紀さんの仕事とは(1/2)
元TV局アナウンサーから一転、イギリスへ花留学。帰国後、フラワーアーティストとして活躍中の前田有紀さん。2018年にフラワーブランド「gui(グイ)」を立ち上げ、2021年4月には東京・表参道に ショップ「NUR(ヌア)」もオープンしたばかり。今日は、鎌倉の前田さんのアトリエに伺って、フラワーアーティストというお仕事の話を聞いてきました。
※今回から2回にわたって、前田有紀さんのお話を伺います。オリジナルのスワッグと、前田さんプロデュースのイヤーカフのプレゼントもあります!
- ――シックでいて華やかな花がたくさんありますね。
- 急に寒くなったでしょう。冬らしい色合い、深いボルドーと濃いピンクのグラデーションで花束を作りたくなりました。見ているだけで、気持ちが落ち着きますね。今日は、静岡の柳原育種農園オリジナルのバラ、世界にたった一つの品種のバラを中心にしようと思っています。
- ――花を選ぶ基準は何か、あるのでしょうか。
- 基準と言っていいかどうかわかりませんが、私自身がわくわくするかどうか、なんです。花市場では、その時期の季節感、その時に必要な花材を求めて行くのですが、つい花と目が合って心惹かれてしまう……ということもあるんです。偶然の出合いにはいつもどきどきしてしまいます。
- ――和の花も洋の花も一緒にあります。
- 今は、世界中から新しい花が届きますし、国内の花の生産者さんも、毎年新しい品種を出してきます。同じ季節でも、2,3日違うことで、市場にある花が様変わりしてしまうほど。あの花を使いたいと思っていても、ないこともあって。でも、だからこそ新しい花との出合いや思ってもいなかった組み合わせが新しいアレンジを生むことがあるんです。
- ――前田さん好みのお花って、どんな花でしょう。
- 自然に近い風景を感じさせてくれる花、でしょうか。たとえば、曲がっている枝ぶりや、不ぞろいの花に、自然の息づかいを感じるんです。今、お客様の要望も、もっと個性的な花、他では見られない花を求める方が増えてきたと思います。
- ――よく見ると、1本1本、花の表情が違いますね。
- そこが魅力でもあって、花と人とを重ね合わせてしまうこともありますね。人も規格に沿って生きる道もありますが、逸れてもいいじゃないか、多少曲がってもいいじゃないかと思えるようになりました(笑)。個性の強い人も大好きになりましたし、それもこれも花と出合ったおかげです。
- ――記憶に残っている花って、あるのでしょうか。
- 20代の私は、規格通りの人生。局アナの仕事は、基本、与えられたことをこなす、受け身の仕事でした。ハードな毎日で、カラダも心も疲れていたのだと思います。ある日のこと、深夜のスーパーのレジ横にあった、トルコキキョウがふと目について、手に取ったんです。家に持ち帰り、活けたときのほっとした気持ちが忘れられなくて。30歳を目前にして、「一体、私は何をしたいのだろう?」と考えたとき、「花にふれていたい」と素直に思えたことが今につながっているんです。
- ――今は起業家として、会社を束ねる立場になりました。
- 昔とは真逆の立場ですね。自分でアイディアを出し、それを形にするのが今の仕事。自分が心からしたいと思うことを軸に、仕事をすすめている。どう生きるか、姿勢が180度変わりました。会社員時代は価値観の似た人たちとのつき合いが多かったのですが、イギリスで出会った人たちは皆、個性的で多様な人ばかり。考え方が違っても、相手を受け入れて、認める。尊重する。そんな環境にいて、私も自分らしさを見つめ直せたんです。自然と共に生きているという実感が、自分にはとても大事だということがわかったんです。今の花の仕事の軸も、そこにあります。
- ――花と暮らすことは、自然と共に生きる、ということですか。
- そうです。自然の花を切り花にして、共に暮らす。だから、日々手をかけることで自然を感じることができます。花って、人が飲めるくらいのきれいな水が大好きです。私の朝は、花の水を替えることから1日が始まります。茎を切って、また別の花瓶に挿す。花は必ず短くなっていきますので、低く、小さな器に活け変える。最後は水に浮かべてみる。こうして、最後の最後まで、花を楽しんでほしいと思います。
- ――アトリエにある花は、どれものびのびしているように感じます。
- そうかもしれません。ブーケをそのまま花瓶に入れる方が多いかもしれませんが、根元をぎゅっと縛ったままだと花は苦しい。水をたっぷり吸い上げることができません。一度外して活け直す。一輪ずつバラバラに活けてもいいんです。そのほうが、手入れもしやすいし、花も人もより自由でより快適に暮らせます。
- ――花の基本って、何でしょうか。
- 花の基本、ですか。そうですね、すべては「観察」から始まると思います。茎や枝・葉、花の様子。どんな風に育っていくのか。日々、観察です。これって、スキンケアと同じですね。肌の状態も観察することが大切かなと思います。
- ――仕事、子育て、家事で時間のない中、スキンケアに何を求めますか。
- 心地よさと効果、ですね。私にとって、スキンケアの時間は、唯一、肌と共に気持ちも整える時間。ありのままの自分を受け入れていく覚悟はあるのですが、自分の手でできることはしてあげたい。そんな気持ちにフィットするのが、新プレミアム シリーズです。とくに気に入っているのはローションとエッセンス。肌のもっちり感が1日続きます。
- ――ナチュラルなアトリエの中にあって、ボトルが自然にとけこんでいます。
- はい。シンプルで、ナチュラル、清潔感のある佇まいがいいですね。たしかな効果を感じられる、信頼できるブランドというだけじゃなく、ボトルを環境に配慮したものにしたり、防腐剤フリーにしたり。そこにも共感しています。
- ●次回は、12月2日配信。前田有紀さんに、花を通して見える新しい世界について聞きます。
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前田有紀さん(まえだゆき)
フラワーアーティスト、スードリー代表
10年間テレビ局に勤務後、2013年イギリスに留学。コッツウォルズ・グロセスター州の古城で見習いガーデナーとして働いた後、都内のフラワーショップで3年の修業を積む。「人の暮らしの中で、花と緑をもっと身近に」という思いから、様々な空間での花のあり方を提案。2018年秋に自身のフラワーブランド「gui(グイ)」を立ち上げ、2021年4月に東京・表参道にフラワーショップ「NUR(ヌア)」をオープン。4歳と1歳の2人の子の母でもある。
https://www.sudeley-flower.com/
https://nurflowerinfo.stores.jp/
Instagram @yukimaeda0117 @gui.flower @nur_flower
撮影・森山祐子 ヘア&メイク・多絵 構成と文・越川典子