会いたかった人
【ずっと会いたかった人】ファッションディレクターの大草直子さん(3)
デニムが「とにかく好き」というスタイリストの大草直子さん。デニムらしいカジュアルなスタイルだけでなく、エレガントに、ドレッシーに着こなす大草さんに、デニムとの付き合い方を教えてもらいました。
- デニム好きとして有名な大草さん。今、一番お気に入りのデニムは何ですか。
- 1週間に5回は履くほど、デニムが好き! マニッシュなデニムは、コーディネイトに「抜け感」や「遊び心」をプラスしてくれるだけでなく、新品、ハイブランド、ドレッシー、モードといったなじみの薄いアイテムを自分に引き寄せてくれる心強いアイテムです。私は、ベストな1本を長く履いて育てていくような履き方はせず、ベーシックな「主役デニム」と今年らしい「脇役デニム」を使い分けるスタイル。今の気分は、ハイウエスト+テーパードが主役デニムで、裾が切りっぱなしのブラックデニムが脇役デニム。これだ!っていうデニムに出会えると、どんな着方をしようかとわくわくが止まらなくなる。鏡の前で、写真を撮って、「とびきりおしゃれ」なコーディネイトを考える時間も楽しいものです。お気に入りのデニムを手に、センスをみがく旅を続けているのです。
- デニム選びのルールを教えてください。
- 私のスタイリングでは、流行をいち早く取り入れることはあまりしませんが、デニムだけは別。Instagramや若い世代のブランドなども頻繁にチェックしてトレンドをキャッチするようにしています。誰もが履いている定番のアイテムだからこそ、はっきりと旬がわかってしまうのがデニム。色やシルエットだけでなく、ダメージの入り方や生地の厚み、リベット(鋲)などのディテールも毎シーズン異なります。デニムが新しければ、トップスやアウターが多少古くても、新鮮なコーディネイトと感じてもらえますよ。だから、季節に1度、少なくとも年に1度は新調したい。頻繁に買い替えることもあり、2万円以上のものは基本的に買わない、私の脚の形に合わないのでスキニーは選ばないなど細かなルールはありますが、シルエット、色、ディテールを吟味して、自分の体形にぴったりと合うものを選んでいます。
- 大人ならではの上品なデニムの着こなしを教えてください。
- デニムはどんなアイテムも受け入れてくれる度量があると思って、いろんなコーディネイトにチャレンジしてみてください。ただし、ひとつだけ気を付けたいのは清潔感。Tシャツとスニーカーを合わせるボーイッシュなコーディネイトもいいけれど、女らしさをプラスしてみましょう。それはたとえば、デニムのすそをロールアップしてくるぶしを見せつつ、ハイヒールやミュールなど華奢な靴と合わせたスタイル。ドレッシーなシルクのシャツワンピースをアウター代わりに羽織って軽やかさを出したり、思いっきりドレッシーなチェーンバッグやパールのアクセサリーを合わせてもいい。表情の異なる素材を注意深く選び、組み合わせることで、コーディネイトに奥行きと立体感が出て、より魅力的な印象のデニムスタイルが完成します。
- 大草さんが目指す女性像ってありますか。
- キーワードを挙げるなら、「ラフ」「豪快」「かっこいい」でしょうか。とにかく、元気があってパワフルな女性。ツヤっとしたシルクやふわふわしたスカートより、ごわごわしたリネンやデニム、色白肌より日焼け肌のほうが、私の理想とする女性像とリンクする。シミやそばかすも実はそんなに気にならないんです。「笑ってきた人生なんだな」と思ってもらえる笑いジワもいいなと思う。でもやっぱり乾燥によるシワはないほうがいい。老けて見えたり、覇気がないように見えるのは避けたいんです。元気でいることやキレイでいることは、実は面倒くさくて大変なこと。それを引き受けて、ちょっと手をかけてあげることが大事だと思います。できてしまったシワにアプローチするという力強い味方もいます。
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大草直子(おおくさ・なおこ)ファッションディレクター
1972年生まれ。女性ファッション誌の編集に携わったのち、独立。フリースタイリスト、エディター、ファッションディレクターとして雑誌や広告で活躍。イベント企画・出演、執筆、Webメディアを通して、ファッションのみならず女性が人生を楽しむ方法を伝える。明快でまっすぐな「大草語録」に胸を打たれる人も多く、幅広い年齢層から支持を集めている。著書『大草直子のSTYLING&IDEA』(講談社)など多数。この春、新しいウェブマガジン「AMARC(アマーク)」を立ち上げたばかり。プライベートでは、3児の母親。
Instagram:@Naoko Okusa_official
撮影・青木和義 ヘア&メイク・菊池かずみ 文・高橋顕子 構成・越川典子