サロンにも、ご自宅にも、大きな食器庫があって、それは見事な器がぎっしり!「なぜこんなに器が好きなのかわからないのよ」と笑う、料理家のウー・ウェンさん。北京のご実家に受け継がれてきた器、日本で知った古伊万里……ウーさんが心惹かれる理由を聞きました。
※最後にウー・ウェンさん考案の「ウー・ウェン パン+(プラス)」のプレゼントがあります!
- ――入れ子の器、とても珍しいですね。
- 酒杯。ユーモアがあります。飲めない人には小さい杯。飲める人は大きな杯を選んでもらって。おいしい家庭料理を前に乾杯する景色が見えるようね。持ってみて。軽くて繊細でしょう? 景徳鎮は土がいいので薄く焼ける。完璧なでき具合ですね。
- ――こちらの、ほっこりした器たちは?
- 景徳鎮が「官用」としたら、ほかのものは「民用」。古くて、誰が焼いたのかもわからない。どの土地のものかもわからない。絵も完全じゃないし、計算されていない、でも、人の手を感じるところが大好きなのです。
- ――絵も一つひとつ違いますね。
- きっと、まったく同じものは作れなかったでしょうね。そこにあたたかみがあります。昔の器を見ていると、「正解なんてないんだ」と思えるし、「正解がない」ことのほうが楽しいと思えるようになりました。
- ――ウーさんの料理を見ていると、器でまったく見え方が違います。
- そうなの! もやし炒め一つとっても、印象が変わる。そこが面白いところで、季節やお客様、その日の気分で替えています。それがまた楽しくてしかたがないです。
- ――なぜ、そんなに器が好きなのでしょう。
- 自分でもわからないの(笑)。今、中国にも帰れないし、旅にも行けないでしょう? だから器で旅をしているのかな。いや、それだけじゃないですね。私、器に癒されているのかもしれないです。日本に来て30年、器が私の気持ちの受け皿になってくれているのかもしれません。誰にも言えない気持ちを聞いてもらったり、ときには激しい気持ちをぶつけたり。長い間、私を受け止め続けてくれているのだと思う。あらためてお礼を言いましょう! 器さん、ありがとう(笑)。
- ――この染付も、長いことウーさんに寄り添っているように見えます。
- わかりますか? 実は、この染付、家族の次に大事なの。200年くらい前のもので、北京の母の家からもらってきたもの。物心ついたときからあって、すでに鎹(かすがい)という修理法で補修されていました。どんなに古い食器でも使っていますが、これだけは絶対に使いません(笑)。
- ――茶器もたくさんお持ちです。暑い時期、どんなお茶を飲んでいらっしゃいますか。
- 中国では、夏でも熱いお茶を飲みます。私は煮出して飲むことが多いですね。ガラス器なら、目に涼しいでしょう? 今日は、ドイツの古いガラスポットに、茶器は中国の古いガラスを選んでみました。
- ――いい香りがしてきました。
- ね。中国茶は、古ければ古いほどおいしいの。これは老白茶(ラオバイチャ)。白茶は、福建省の伝統的な微発酵茶で、気品のある芳醇な風味が独特です。「1年茶、3年薬、7年宝」と言われて、5~6年ものになると「老白茶」と呼ばれます。10年、20年ものになると、も~う大変です。さ、カラダ、温めましょう。
- ――食べ方、飲み方で、季節を乗り切ったり、体調を整えたりするのですね。
- 十代の頃、生理の時には母は小豆粥を作ってくれました。ニキビにはハトムギのお粥。乾燥する季節には白キクラゲを。暮らしの中で、食べてカラダを整えることを自然に覚えてきましたね。旬のものを、必要なだけ食べる。ムリをしないこと。
- ――ウーさんのレシピはとてもシンプルです。
- 味付けも、塩だけ、が中国の家庭料理は多いんです。よい油を少し。そして黒酢。あれもこれもは使いません。
- ――お召し物もシンプルですし、ノーメイクでもあります。
- あれこれ肌にのっているのが好きじゃないんです。スキンケアも同じで、だから1つで、シミとシワを一度にケアしてくれるデルメッド プレミアム クリーム NO.1が好き。あと2年で還暦。この頃、お肌がちょっとカサカサしてきたので、お手入れもうひとふんばり! と思っています(笑)。
- ●次回は7月22日配信で、イラストレーターの松尾たいこさんが登場します。お楽しみに!
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ウー・ウェン
料理家、ウー・ウェンクッキングサロン主宰
中国・北京生まれ。中国の家庭料理とともに、医食同源の考え方、中国の暮らしや文化を伝え続けている。著書は『料理の意味とその手立て』(タブレ)『体と向き合う家ごはん』(扶桑社)など多数。近著の『ウー・ウェンの100gで作る 北京小麦粉料理』(高橋書店)は、作りやすさも分量も現代に会ったレシピに変化させた「小麦粉料理」の集大成として評価が高い。
クッキングサロンHP https://cookingsalon.jp/
Instagram @wuwen_cookingsalon
撮影・黒川ひろみ ヘア&メイク・広瀬あつこ 構成と文・越川典子