【ずっと会いたかった人】料理家ウー・ウェンさんのきれいの秘密(1/2)
来日して31年。クッキングサロンを開いて24年。著書は60冊。幼いころから食べてきた祖母や母の中国家庭料理を伝えてきた料理家、ウー・ウェンさん。中国料理というと、たくさんの油や多くの香辛料を駆使するイメージがありますが、ウーさんの作るそれは、驚くほどシンプルで、驚くほどカラダにいいものでした。
※今回から2回にわたって、ウー・ウェンさんのお話を伺います。1つ7役の「ウー・ウェンパン+(プラス)」のプレゼントもあります。
- ――ウーさんのクッキングサロンでは、野菜料理がとても多いですね。
- 野菜は、ビタミンや繊維を摂ると思っている人が多いと思うのですが、実は、水分を野菜から摂ることがとても大事なんです。私は、サロンのある日は、朝、たっぷり野菜を食べます。すると、お教室をする4,5時間、まったくのどが乾きません。水やお茶を飲むと、すぐ排泄されてしまいます。野菜は、消化されながら、水分がじわじわとカラダの細胞にしみこんでいくからなんですね。
- ――きゅうりを持ち歩くという話も聞いたことがあります。
- そうですよ。きゅうりは95%が水分ですから、ペットボトルをもつのと同じ。寒い季節は、きんかんを保存袋に入れて持ち歩きます。のどがおかしいなと思うと、バッグから出してぽいっと口に入れる。中国では、バッグの中に誰もが入れています。ぜひ、お試しください。
- ――まさに、医食同源ですね。
- 中国では、カラダの調子を整えたいなと思ったら、旬の野菜を蒸して食べます。夏でも冷たい食べものは摂りません。夏にぜひ食べていただきたいのが、パプリカの蒸しものです。ビタミンCやカロテンがたっぷり。肉厚でジューシー、香りもさわやかで、何個でも食べられます。これできれいになれるのですから、私って、つくづくお金かからない人だなーと思いますね(笑)。
- ――「パプリカの蒸しもの」おいしそうです。レシピを教えてください。
- 簡単です。用意するのは、パプリカ3個。赤、黄、オレンジ。4つ割りにして、種を取り除きます。蒸気の上がった蒸し器に入れ、強火で2分、弱火で2分蒸した後、火を止めて10分そのままおくだけで、みずみずしく蒸しあがります。
- ――たれのレシピも、たくさんおもちです。このレシピに合うたれは?
- 今日は、蒸し暑くなってきたので、黒酢を使ったたれにしましょう。分量は簡単。黒酢1:醤油1,太白ごま油を2分の1。この割合さえ覚えておけば、レシピを見ずに作れます。ここでは、黒酢大匙2、醤油大匙2、太白ごま油大匙1を混ぜておきます。薬味として、みょうが2本、わけぎ10㎝。どちらも小口切り。それを混ぜ合わせるだけです。
- ――薬味はいろいろ考えられそうです。
- 薬味は、わけぎ、パクチー、大葉、ミントなど、なんでもよいです。このたれをたくさん作っておけば、レタスをたっぷり蒸したもの、蒸し豆腐にかけてもいいですよ。
- ――唐辛子、八角、花椒(ファオジャオ)など、中華料理の調味料は、ウーさんはほとんど使いませんね。
- サロンでお伝えする料理にはおもてなし料理などもありますが、ふだん私が家庭で食べる料理は、年々シンプルになってきています。素材も、1品の中に、1~2種類。使う調味料は塩とこしょうだけが最も多いのです。
- ――調味料より、素材そのものの味ということですか。
- 素材の持ち味を最大限に引き出せれば、それがいちばんおいしい。それが家庭でのごちそうです。たとえば、青菜炒め。つぶしたにんにくを入れると香ばしくておいしいですが、私の場合、入れないことが多いのです。なぜなら、にんにくを入れると、にんにく炒めになってしまうから。小松菜なら、小松菜だけのほうが、野菜の風味を味わえるからです。
- ――特別な炒め方をするのでしょうか。
- 小松菜を洗って切ってボウルに入れ、塩を加えて両手でふわっと持ち上げるように混ぜます。ほんの少ししんなりしたら炒め時。先に、素材のコンディションを整えておくわけなのです。鍋に油と長ねぎの薄切りを入れて火にかけ、香りがたったら小松菜を加え、油を全体に混ぜたら、そのまま待つ。少し火が通ったなと思ったら、一度返して、こしょうをふって終わり。どうですか? シンプルすぎるくらいシンプルでしょう?
- ――あれもこれも加えなくていいのですね?
- そう。たとえば、私がよく飲む、豆乳のスープ。これも、豆乳と塩だけ。豆乳を10~30分くらいしっかりと煮立たせて、お椀に注いでから粗塩をぱらぱらふって出来上がり。大豆の香りやコクに驚くと思いますよ。
- ――ちなみに、今日召し上がった朝食のメニューを教えてください。
- トマトを1個を丸ごと煮たもの。調味料は、塩だけです。黒米を加えたお粥に、ザーサイの漬物。デザートも食べました。豆乳をあたためて、山芋のすりおろしを入れると、豆乳クリームみたいになります。そこに黒砂糖をかけたもの。おいしいですよ。
- ――色どりがきれいですね。
- そう。赤・黒・白。食材の色は、栄養素そのものなんですね。1日のなかで、5色摂ってほしいです。今日なら、お昼にパプリカを食べれば、黄色が摂れます。夜には、緑を加える。こう考えるとシンプルでしょう?
- ――とてもわかりやすいし、取り入れやすいですね。
- 人間、ムリがいちばんいけない。毎日必ず3食……とも思わなくてもいい。お腹が空いていないのに食べたら、カラダの負担になります。食べものに壊されてはいけません。私、若いころからずっと決めていたことがあるんです。
- ――何ですか?
- 60歳をすぎても、毎日すっぴんでいられるように生きよう、と。私ね、あと2年で還暦です。でも、今日もノーメイクです。どういうことかというと、体調が悪いと、てきめんに顔に出ます。ですから、すっぴんでいる、イコール元気でいることなのね。
- ――そのための食べもの、食べ方なのですね。
- 私は食べものもスキンケアもシンプルです。きれいに洗顔したら、化粧水と美容液だけ。もう10年以上使っているのが、デルメッドのスキンケア。プレミアム ローション、エッセンスを朝晩。朝は、それにUVベイス。それに眉を描くだけで、私のメイクが仕上がります。
- ●第2回は、7月8日配信。ウー・ウェンさんが愛してやまない器の話を伺います。
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ウー・ウェン
料理家、ウー・ウェンクッキングサロン主宰
中国・北京生まれ。中国の家庭料理とともに、医食同源の考え方、中国の暮らしや文化を伝え続けている。著書は『料理の意味とその手立て』(タブレ)『体と向き合う家ごはん』(扶桑社)など多数。近著の『ウー・ウェンの100gで作る 北京小麦粉料理』(高橋書店)は、作りやすさも分量も現代に会ったレシピに変化させた「小麦粉料理」の集大成として評価が高い。
クッキングサロンHP https://cookingsalon.jp/
Instagram @wuwen_cookingsalon
撮影・黒川ひろみ ヘア&メイク・広瀬あつこ 構成と文・越川典子