【ずっと会いたかった人】料理家・サルボ恭子さんのこれからの仕事(4/4)
49歳。人生100年時代とすると、折り返し地点。「いくつになっても、どこにいても、自分ができることをするだけ」と話す料理家・サルボ恭子さんの、これからの仕事、これからの暮らしを聞いた。
- ―――サルボさんが、いちばん心地いいと感じる時間を教えてください。
- まだ世の中が起きだしてこない時間が好きです。毎朝5時30分に起きて、ゆっくりストレッチしてカラダをほぐして……。大好きなのは何も考えない時間。なぜなら、考えすぎてしまうから(笑)。
- ――意外です。
- 基本、即決で、かつ、年ごとに決断速度は加速しているし、誰にも左右されずに生きてきたけれど、レシピについては24時間、常に考えて、考えて、考えすぎるところがあるんです。夫を見ていると、私の半分も考えていないように見える(笑)。
- ――そんなご自分を表現すると、どんな言葉になるのでしょう。
- 不器用。私はとても不器用です。人からは、真っすぐだね、と(笑)。もうちょっと器用に生きてもいいのでは? と自問することもなくはないのですが。
- ――10年後の自分を考えますか。
- 考えません。考えるのは、今のことだけ。人は「生かされている」と感じているので、たった今、私の人生が終わってもいいとさえ思っています。神のみぞ知る、です。あ、一応クリスチャンですので。不良クリスチャンですが(笑)。もし、私が10年後も生きているとしたら、変わることなく正直に、謙虚に生きていたい。そのとき、どこに住んで何をしていようと、そのすべてが意味のあることなのだろうと考えています。
- ――正直に、謙虚に生きるとは?
- 何ごとも誠心誠意する、ということに尽きますね。自分にないものを求めるのは、きっと、愚かなこと。私は、自分にしかできないことをするだけ。
- ――自分にしかできないこととは、何ですか。
- 料理ですね。料理は、自分の存在そのもの。教室で、試食して食べる人の顔がみるみる明るくなっていくのを見ると、それだけで満たされます。「食べることが好き」から始まって、料理をしている自分の向こう側にいる生徒さんや本を読んでくださる方へ向けて、誠心誠意向き合う。そのことは一点のゆるぎもない。と言いますか、それしかできないのです。
- ――料理の仕事を続けていくことだけは、たしかなのですね。
- そうですね。「好き」を仕事にできて、自分を投入できるって、すごくハッピーなことです。料理は自分のため、大切な人のため、日々実行していることだけれど、見知らぬ誰かのためになっていることが、私自身の支えにもなっていますね。
- ――今までの人生を表現するとしたら?
- 「総じて、ラッキー」でしょうか。
- ――いい言葉ですね。
- いろいろなことがあっても、あとで笑い話になればいいと(笑)。
- ――料理教室の形も、変わっていくのでしょうか。
- コロナ禍で、お教室は休んでいましたが、2020年秋から再開しました。人数を少なくして、時間も短縮。試食をためらう方はお持ち帰りいただき、ご自宅で召し上がっていただく形をとります。何より味わって、知ってほしいので、パテやお菓子など、テイクアウトや通信販売も小さく始めています。
- ――生徒さんの中には、遠方からいらしていた方も多いようですね。
- はい。そういう方は、なかなかおいでになれないと思います。ですから、レシピと一緒に、出来上がった品を送るという方法をとろうと思っています。
- ――どんなものですか?
- 煮込みやパテ、ペースト、焼き菓子、ジャム類などが多くなると思います。バケットがあれば、家族の食卓が少しでも華やぐもの。おいしくって、食事を作る人の負担が軽くなるようなものを考えています。キッシュとクレープシュゼットのセットや、鴨のリエット、豚のリエットも。
- ――今、49歳です。ご自身の年齢を実感することはありますか。
- はい、あります(笑)。もう、カラダ全体をいたわる年齢だと思っています。見た目を気にしないのですが、「見た目」に内面が表れてしまうのも、これくらいの年齢でしょうか。楽しそうに生きているか、不本意に生きているか。
- ――カラダと心はつながっています。
- 疲れは顔にも出ますね。眠れば元気が回復するという年齢は過ぎ去ってしまったので、もっと労わろう、と。きちんとスキンケアをする時間が、自分を労わる時間になれば、機嫌もよい。自分にとっても家族にとってもいいことですね。
- ――とくに肌で気になるところは?
- シミはあるけれど、気にならないんです(笑)。なければないでいいけれど、あってもいい。私の価値には変わらない。誰かの顔にシミがあっても、それでその人を評価することはありません。ただ、自分でそれがイヤだと思うのだとしたら、何とかすればいい。デルメッド ホワイトニング スポットクリームは、朝晩のケアのついでにつけるだけ。負担にならずにケアできるところが好きです。
- ――サルボさんにとって、美しさとは?
- 嘘いつわりのない個、その人自身がにじみ出ていることでしょうか。自分に自信をもち、堂々としている女性は、いつも美しいと思います。加えて、自信があまりもてなくても、正直で心が澄んでいる女性はチャーミングです。美しい人予備軍だと思います。
- ●次回は、1月21日。ハーブスタイリストの山本真衣さんが登場します。お楽しみに!
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サルボ恭子(サルボ・きょうこ)料理家
老舗旅館の長女として生まれ、料理家の叔母に師事した後、渡仏。パリの料理学校で料理と菓子を学び、「オテル・ド・クリヨン」のメインダイニングで研鑽を積む。現在は日本と台湾で料理教室を主宰するかたわら、雑誌やTVなどでレシピを公開。洗練された家庭料理にファンが多い。子どもたちは独立し、フランス語教室を主催する夫と両親と2世帯で暮らす。『おもてなしは一点豪華主義でいい』(誠文堂新光社)『フランス共働き家庭の2品献立』(立東舎)など著書多数。
facebook @kyokosalbotofficial
Instagram @kyokosalbot
撮影・小松勇二 ヘア&メイク・レイナ 構成と文・越川典子
サルボ恭子さんデザイン「NOTRE TABLIER(ノートル・タブリエ)」 リネンエプロン&トーション&クロスのセット(2万2000円 税別)を2名様にプレゼント!
「私たちのエプロン」と名づけられた、このエプロンセット。リネン(麻)専門のリネン&デコールとサルボ恭子さんがコラボレーションして実現。グロッシーブラック・アイスグレの2色のエプロン1枚に、トーション(アームタオル)とクロスがセットになっている。「エレガントで美しく、使い込むほどになじんでいくリネンで作りました」(サルボさん)。トーションの色はキッチンでも食卓でも映えるパープル。クロスはグレーとネイビーのピンストライプ。下記オンラインショップにて予約がスタートした。サルボさんによる、3品で完成する簡単おもてなしレシピつきです!(色指定はできません)
https://www.linenanddecor.net