会いたかった人
【ずっと会いたかった人】グローサリ―が夢という、イラストレーターの山本祐布子さん(4/4)
薬草・ハーブと暮らす山本祐布子さん。「10年後の自分」について聞いてみたら、いつか叶えたい夢があると言います。緑豊かな薬草園で暮らしながら描く夢は、日々の暮らしの実践の延長線上にありました。
- ――ご自宅には美しいステンドグラスがあり、階段は本棚でぐるりと囲まれ、図書館のようです。
- 移り住みつつ、改築……でしたので、本棚ができ、暖炉も作りと、ようやく暮らしらしい暮らしになったのが半年ほど前です。ずっと荷物も開けない状態でしたから。あ、人間って、モノがなくても暮らせるんだと思っていたのですが、読みたい本が読める。使いたい器がある。そんな心の余裕って、暮らしには必要なんだとわかりました。荷物を開いて、大好きな器に「ひさしぶり~!」って再会。その瞬間、心がうるおってくるのがわかりました。不思議ですね。自分が大切にしているものがあるということが、どれだけ生きる力になっているのか。
- ――10年後の自分って、想像することがありますか。
- 今42歳だから、10年後は50代ですね。今は忙しくて、座っている時間がないくらい。1階に降りるときは必ず何かを持って用事をすますし、2階に上がるときは何かを持って上がる。常に「用事」に追われ、仕事や家事を片づけている毎日ですが、子どもの手が離れる10年後は、今から楽しみなんです。そのときは、じっくり何をしようか、実は考えていることがあるんです。
- ――今考えていることとは? もう少し教えてください。
- 私のモノづくりの原点は「食」です。「誰かのためにすること」が、自分のするべきことと信じているのですが、「食」って究極の「誰かのために」だと思いませんか? 食べたものでカラダが作られ、元気になったり、やる気が出たり、笑顔になったり。誰かのために作ること。誰かと一緒に食べること。そんなふうにつながる一本の線。それは私が東京にいても、ドイツにいても、千葉にいても同じようにつながっているし、これからもつながっていくと思っているんです。
- ――食、つまり料理が山本さんの夢につながっているのですね。
- もともと料理は好きだったのです。学生のころからキッシュやケーキを焼いていて、夢想のカフェでは毎日キッシュを焼く自分がいました(笑)。大人になっても、毎日せっせと料理をしています。私の作ったもので、家族や仕事仲間や友人、新しく出会った人たちを喜ばせることができることが自分の喜びになっている。それを、mitosayaで具体的にしたいと考えています。
- ――ここmitosayaで実現したいという、山本さんの夢は?
- 実は、グローサリーを開きたいと思っているんです。不定期でも、月1,2回でもよいのですが、おいしくて、カラダによくて、飽きない味を販売する場所を作りたいんです。たとえば、これはリンゴ、キウイのジャム。液体は、マヌカの花、梅の花のシロップ。アップルタルトは、mitosayaのアップルブランデーを使っています。それに、グラノーラ。グラノーラは生姜の砂糖漬けが特徴ですね。(ここで長女の美糸ちゃんが解説。「すっごく固いよ」)そうそう、そうなの(笑)。固いので、前の晩にヨーグルトに漬けこんでおくんです。すると朝、おいしく食べられます。こんなふうに食べ方も含めて伝えていきたいと考えているんです。
- ――たくさんの人が集まる場所になりますね。
- 月に1度のmitosayaのオープンデーには「食」を担当しているのですが、週に1度でもよいので「お店」にして、モノづくりや人の交流の拠点にしたいのです。実際、シロップやジャム以外にも、味噌や醤油、梅干しや漬物も私は手作りしています。なぜかというと、ここ(千葉県大多喜町)に住んでいると、手作りを教えてくださる方がたくさんいらっしゃる。そんな地域の人と、mitosayaを訪れてくれる人と、「食」を通じて今までにない形のコミュニティが作れるのではないかと思っているんです。この場で何かが始まるという感覚。楽しくなってきそうな予感がします。
- ――山本さんにとって「食」はすべての基本なのですね。
- カラダは食べるものが基本。ですから、毎日、毎食、私が作ります。即興のような料理ですが、いつ誰がどうやって作り、いつ採ったのかもわかるもので作る。それが強さのもとになると思うんです。カラダだけではなく、心の強さも食べ物から。強さがなければ、生きていきにくいと思います。きれいなもの、美しいものは強いと思っています。
- ――強さが美しさ、ですか。
- 肌だって、強いほうがきれいなのではないでしょうか。デルメッド ホワイトニング クリームのコウジ酸は、麹を扱う杜氏の手が美しいことからできた美白成分と聞きました。色白になればいいというのではなく、本来その人がもっている肌に戻してくれるという考え方が好きです。肌を初期化してくれる、そんなイメージでしょうか。
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山本祐布子(やまもと・ゆうこ)
イラストレーター
東京生まれ。京都精華大学テキスタル学科卒。雑誌、広告、プロダクトデザインなどを手がける。現在は、千葉県大多喜町にあるmitosaya薬草園蒸留所の取締役として運営に関わると同時に、オリジナルブレンドティーを考案。ティーだけでなく、シロップなど新製品の試作、毎月行われるオープンデーの料理などを担当している。二児の母でもあり、犬や猫、鶏と暮らす多忙な毎日を過ごす。
撮影・青木和義 ヘア&メイク・布施綾子 構成と文・越川典子