会いたかった人
【ずっと会いたかった人】ハーブを「食」に活かす、イラストレーターの山本祐布子さん(2/4)
薬草やハーブを暮らしに活かす、イラストレーターの山本祐布子さん。お茶にしたり、ケーキに入れたり、スープに加えたり。免疫力を高めるため? おいしいから?「食」が見直されている今だからこそ聞きたい、薬草・ハーブの使い方。山本さん、教えてください!
- ――今、手にしているハーブは、ブーケガルニですね?
- そうです、きれいですよね。フェンネル、カレープラント、オレガノ、ローリエ、ディル……初夏らしいブーケガルニ。玉ねぎとベーコンをコトコトしただけのスープでも、入れるブーケガルニによって風味が違ってくるから不思議ですね。今日のスープは、葉玉ねぎ、里芋、白菜の菜花、小カブ、白いんげん豆、グリーンピース。自家製のハムからいい出汁が出て、それに塩とオリーブオイルを加えるだけでおいしいんです。
- ――スープはよく作られるのですか。
- スープって、好きな人、大事な人に出すものだと思うんです。食材の色や質感、組み合わせは無限で、それって絵を描くのと同じように感じるんです。スプーンのひと口で、色彩そのもののエネルギーがカラダにとりこまれていく感覚は、どんな料理よりも特別。だから、誰かを喜ばせたいとき、心から話したいとき、スープを作ります。ちょうど今あちこちに生えているアシタバを入れると、甘~い出汁みたいな味わいになります。寒くなってきたら、シナモンリーフやトウキを入れて、カラダをあたためます。
- ――10年前に出された本『IN THE KITCHEN』では、畑からその日採れた野菜で料理をするのが夢、と書いていらっしゃいましたね。
- 東京生まれなので、いつか住む家のそばに畑、は小さな夢でした。採れたての野菜で料理を作り、その日鶏が生んだ卵でケーキを焼いて、近くで生まれたものだけで食卓を作る……。考えてみたら、夢が実現していましたね(笑)。さ、スープをよそいましょうか。
- ――器の中で、スープがとっても美しいです。
- クリスチャンヌ・ペロションの器です。藤色が、どんなスープも受け止めてくれるので、とっても好きなんです。本にも書いたのですが、私にとって「料理は、味わうための絵」だと思っています。食材の色、香り、形に出合って、切ったり炊いたりしたときの変化、感動がある。白いスープはやさしく、赤いスープは力強く、淡い緑のスープはカラダの中を清めてくれると感じています。
- ――スープのあとのブレンドティー、ポットの中が美しくて驚きました。
- すごくうれしいです! たくさんの葉や茎、根っこ、花や実を乾燥させて、毎日のように組み合わせてお茶を試しているのだけれど、私がまず大事に思っているのは、目で見て美しい茶葉であること。しかも、お湯を注したときに美しいことなんですね。黄色は春ウコン。ピンク色はマヌカ(ギョリュウバイ)の花、梅の花。緑色はシナモンリーフ、バジル。味と効果効能は、あとからついてきます(笑)。
- ――ペンと紙にではなく、立体で絵を描いているのですね。
- 食材そのものも美しいですが、たとえば果物を切ったときにあらわれる種、魚のうろこ、野菜を切ったときの汁の色……自然界にある色や形は、どれもアートだと思っています。日々、感動です。だから、包丁は私にとって絵筆、お皿はキャンバス。自分の感動を、見る人、食べる人にも伝えたいと思っているのでしょうね。
- ――山本さんにとって、日々の「食」が暮らしの中心にあるとわかります。
- 今は、コロナウイルスの影響から、皆さんご自宅で食を作ることが多くなったと思います。うちでは、基本外食はなし。コロナのずっと前から、自分の手で作る食事と睡眠が基本です。旬の、昨日今日とれたものをもりもり食べて、ぐっすり眠れていたら、家族も私も大丈夫、っていう気がしています。
- ――どんな女性でありたいと思いますか。
- 私は、色白になりたいとか、細くなりたいとか全然思わないんです(笑)。私がなりたいと思うのは、強い人、かな。やわらかさの中に芯の強さのある人、もっと言えば、強さが美しさでもあると思っています。そのために、強いカラダとかも必要かもしれませんね。ここmitosaya薬草園蒸留所に来て4年、私もずいぶんたくましくなりました(笑)。お化粧はしないけれど、日焼け止めはつけるので、毎晩すっきり気持ちよく落とすことは習慣にしています。
第3回は、山本祐布子さんの作品づくりについてお聞きます。お楽しみに!
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山本祐布子(やまもと・ゆうこ)
イラストレーター
東京生まれ。京都精華大学テキスタル学科卒。雑誌、広告、プロダクトデザインなどを手がける。現在は、千葉県大多喜町にあるmitosaya薬草園蒸留所の取締役として運営に関わると同時に、オリジナルブレンドティーを考案。ティーだけでなく、シロップなど新製品の試作、毎月行われるオープンデーの料理などを担当している。二児の母でもあり、犬や猫、鶏と暮らす多忙な毎日を過ごす。
撮影・青木和義 ヘア&メイク・布施綾子 構成と文・越川典子