エプロンをひと言で表現すると? 「たった1枚の布でできるコスプレ」と市村美佳子さんは笑います。その言葉通り、エプロンらしからぬ自由な着こなしを楽しむお2人に、そのお手本を見せてもらいました。
- エプロンを重ね着すると聞きました。アレンジを教えてください。
- 市村:エプロンって、出かけるときははずすもの……と思っていますでしょ? でも、私にとっては違って、1日中着けているものなんです。朝、身に着けると仕事モードに切り替わって、そのまま買い物にも、打ち合わせにも行きます。
- 滝本:そう。今日は黒のサテンのスカートに、白いシャツ、黒のネックエプロン。その上に黒のジャケットを着て、私、どこにでも出かけています。
- 市村:私は、ブルーのクラシックタイプのエプロンの上に、下だけのギャザーエプロンを重ねました。エプロン・オン・エプロン。
- 滝本:エプロン商会のエプロンは、洋服とのコーディネートが楽しめます。
- 市村:こうでなくちゃ、と決めないで、自由に楽しんでほしいですね。
- 滝本さんの着こなしを見ていると、すごく自由な感じがします。
- 滝本:そう思う? 好きなことしかしないからね、私。だからかな。
- 市村:2人とも、楽しいことに弱い。毎日いろいろなことがありますが、だいたい好きなことを優先させちゃいます。わくわくすることをしていたいですね。
- 滝本:そんなふうに生きていると、なぜか年下の友だちしかいなくなっちゃった。美術館一緒に行ったり、おいしいもの食べに行ったり。そんな若い友だちがたくさんいる。だって、同世代と病気の話してもしょうがないでしょ(笑)。
- 市村:パンチのあるもの、好きだしね。
- 滝本:そう、2人とも、決してナチュラル派じゃないんだよね。
- 市村:私は、どこかにパンクなエッセンスが入っているものに惹かれてしまう。人も、どこか破綻しているくらいがチャーミングだと思うし、ダイナミズムのあるものに惹かれますね。
- 滝本:だからエプロンも、万人が「センスいい」と感じるものではなく、1人でもいいから、そのエプロンからエネルギーを感じとってくれるような、そんなエプロンを作りたいのよ。
- 市村さんのコーディネートも、楽しいですね。
- 市村:そう。さあ、着こなすぞ、と気負わなくてもいいじゃない、エプロンって。
- 滝本:ちょっと肌寒かったら、もう1枚重ねちゃうとかね。気軽に、重ねられるのがいいところ。
- 市村:ブルーの同系色でコーディネートしてみましたが、何だか外を歩きたくなりましたね(笑)。白い麻のエプロンに、薄手の白いギャザーエプロンを重ねるのもとても好きなんです。白の微妙な重なり具合が、とってもきれい。今日、お見せできないのが残念だけれど。
- 滝本:いつも同じエプロンがあるわけじゃないのよね。エプロンの多くは、そのときにたまたま入手できたヴィンテージの布を使って作っているので、デザインは同じでも世界にひとつしかないエプロンです。
- エプロン選びって、心が動いたものを選べばいいですね。
- 市村:そう。着けて気持ちいいと感じることが一番かな。……私は、フラワーデザイナーなので、毎日花と接しているでしょ。花が気持ちいいように生けると、見ている私も気持ちがいい。花と花瓶の出合いがあるように、エプロンと着ける人の出合いもすごくあると思う。
- 滝本:気持ちがいいって、いちばん大切で、それが似合うってことじゃない?
- 市村:生けた花の角度や長さをちょっと調整すると、花が驚くほどイキイキすることがあるのね。そう思うと、人間も、って私のことだけれど、最近、ちゃんとお手入れをすると肌が変わるって、わかったの。
- 滝本:私は、朝は湯たんぽのお湯で顔を洗うだけだからわからないけれど、手のシミは見えるからちょっとイヤかなと思い始めた。
- 市村:そうなんだ。だったら玲子さん、ホワイトニング スポットクリームつけるといいんじゃない? 私は気になるところだけつけていて、いい感じだから。自分を微調整していくことも必要な年齢になったのかも(笑)。
●次回は、薬草園で暮らすイラストレーター、山本祐布子さんに「植物の活かし方」を教えてもらいます。お楽しみに!
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右・滝本玲子(たきもと・れいこ)
ディレクター、デザイン事務所主宰。雑貨バイヤーとして、店舗企画等に関わる。2011年に東京・西麻布にて喫茶店「R」をオープン。器やファッションアイテム、アート系、デザイン系の企画展を多数開催している。
左・市村美佳子(いちむら・みかこ)
フラワーデザイナー、緑の居場所デザイン主宰、オーガニックフラワー研究所代表。東京・南青山に花教室&スタジオを置く。広告や企業イベントの花装飾も数多く手がけ、雑誌や花カレンダーも。定期的に「花瓶専門店」を開き、花瓶と花の出合いを通して、花の魅力を伝えている。
http://apronshokai.com/
Instagram@apronshokai
撮影・青木和義 ヘア&メイク・長網志津子 構成と文・越川典子