「一度はかぶってみたい」と思わせる、そんな帽子を作る苣木(ちさき)紀子さん。海外での評価も高くなり、活躍の場所はどんどん広がっているようです。
- 苣木さんの帽子は、海外でも高い評価を受けていますね。
- 海外のお仕事も増えてきました。SNSのおかげもあり、国境がなくなっているんでしょうか。Instagramで見て、世界中から直接、感想が送られてきます。面白いですよ。海外の反応はストレートで。「この帽子、すごく楽しい!」と言われると、文化も言葉も違う人が笑顔になってくれている、楽しいというピュアな感覚でつながっていると思うと、幸せな気持ちになります。実は今年、パリにもアトリエをもちたいと思っていたんです。仕事で15年パリに通っていて、いつかはと思っていたんです。アトリエを探し始めていたタイミングで、昨年、夫と出会って、結婚。パリより先に北海道にアトリエを作ることになってしまいましたが(笑)。人生、予測不可能ですね。面白いです。
- パリにもアトリエ、ですか!?
- すぐに……というわけではないのですが、パリに、オートクチュールのコサージュを作るメゾンがあって、そこのムッシュが「本気で学びたいならいらっしゃい」と言ってくださっていて。独学で始めた帽子作りは今年で17年目ですが、まだまだ知らないこと、学んでみたいことがたくさんあります。帽子をかぶる人は少しずつ増えていますが、まだ少数派。ヘッドドレスはもっと少数で、パーティのときくらいですよね。需要は多いとは言えませんが、必要な方に手渡せるように制作していきたい。日常の道具としての帽子、ハレの日の装いとしての帽子。両方できたらいいですね。立体作品にも興味があるので、富良野では作品作りもしようと思っています。パリの話だったのに、すみません(笑)。
- エレガントな女性が増えると、日本も変わるかもしれませんね。
- そうですね。エレガントな帽子をかぶるのか、カジュアルな帽子をかぶるのか、立ち居振る舞いまで変わるような気がします。帽子は、人格まで変えてしまうような不思議な力をもっていると思います。だから面白いのかもしれませんね。もっと楽しんでほしいし、冒険してほしい。「自分はこう」と決めてしまっているのを、一歩踏み出すきっかけになったらうれしいですね。女性が生き生き、のびのびできる社会は、希望がもてますから。
- 10年後、どんなふうになっていたいですか。
- 今まで知らなかった自分が、何かを通して見えることって、ありますよね。実は、私、この年齢になるまで、肌にクリームをつけることで幸せになれるって知りませんでしたから(笑)。デルメッド プレミアム クリーム No.1は、こっくりした使い心地で、「守られている」「自分を大事にしている」って感じます。若いころって、「きれいになろう」とか「何ものかになりたい」とか、ないものを欲してかえって窮屈でしたが、年をとってどんどん自由に、ラクになってきています。いい意味で、欲望を手放すことができるようになったというか(笑)。10年後ですか?、そのときの自分に正直に、その思いにあらがうことなく、水のように変幻自在で、素直に生きていられたらと思います。
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苣木紀子(ちさき・のりこ)
帽子デザイナー
大阪府生まれ、佐賀県育ち。大学卒業後、メーカー、ファッションデザイナーを経て、帽子の世界へ。企業の帽子デザイナーとして、国内のみならずNY、パリ、ロンドンでも高い評価を得る。2016年に「(株)MASION ENKU」を立ち上げ、新たなブランド「chisaki」をスタートさせる。毎年、パリの国際展示会「Premiere Classe」、NYの「d&a」に出展。現在、東京と北海道・富良野にアトリエをもつ。
Instagram @chisaki_noriko
Facebook @noriko.chisaki
http://www.chisaki.co.jp/
撮影・青木和義 ヘア&メイク・レイナ 構成と文・越川典子