【ずっと会いたかった人】美人度が上がると噂の帽子を作る人、苣木紀子さん（２）

愛情を込めて作品と向き合っていけば、間違いがない。そう言って女性たちを魅了する帽子を作り続けている苣木紀子さん。語り口調はピースフルだけれど、人生、山あり谷あり。実は昨年出会った人と結婚。今、穏やかな幸せの中にいるという苣木さんの来し方、聞かせてもらいました。

そもそも、なぜ帽子だったのでしょう。好きだったのですか？

いえいえ、帽子はほとんどかぶりませんでした（笑）。20代の後半ごろ、パートナーとデザインの仕事をしていました。その後、服飾関係の学校に通うも、どうしてもピンとこない。そんなとき「帽子、作ってみない？」と声をかけてくれた方がいらした。今度は別の方が「面接受けてみない？」と。サンプル10個作って行ったら、即「ブランドやってみる？」とチャンスをくださった方がいらして……。え？　と驚きましたが、「はい、やります！」と返事をしていました（笑）。独立は、その12年後です。今は、「私のモットーは『Life is fun.（人生は面白い）』です」と胸張って言えます。つらいこと？　ありました（笑）、でも、何事も捉え方次第。人との出会いがたくさん私にチャンスをくれた中で、山にも登るようになり、そこで知り合った人と昨年、結婚。偶然に見える出来事をやりすごさず、素直な感覚でつないだ先に今があるのかもしれません。

東京と北海道、2か所のアトリエ。デザインも変わってきそうです。

はい、北海道にいるときは、寒いのでついニット帽のデザインが多くなります（笑）。移動は時間がかかりますが、その時間も富良野の自然も私には欠かせないのです。以前は休むのが苦手で、体調を崩したこともあったんですよ。休まずに仕事してこの結果だとしたら、休んだらもっと悪い結果になってしまう。仕事以外に時間を使ってはダメになる。ろくに食事も摂らない。睡眠時間も短い。きっと呼吸も浅く、ひたすら前のめりに生きていたと思います。独立したころに、銀座をぶらっと歩いていた時、偶然、写真家の石川直樹さんの写真展『K2』に立ち寄ったんです。そこでは雪山登山の動画も流れていて、その風の音、荒い息遣いを聞いて、「この世界を感じたい！」と思ってしまって。雪山だ！　雪山なら北海道だ！　と装備を買って、飛行機に飛び乗ったのが、写真展の1週間後でした（笑）。

すごい行動力です。山が苣木さんを呼んでいたのですね？

無謀ですよね（笑）。もちろん装備も経験も足りず、あきらめました。気持ちだけじゃ、山は登れない。自分がいくら頑張ってもどうにもならない世界がある。感動しました。憧れました。真っ白い雪山。夏はどこまでも緑。岩肌の微妙な色合い。空の青。怖いくらいに美しい色のコントラスト。登るたびに、深呼吸ができて、カラダが大地のエネルギーで充たされるのがわかるんです。夏は、基本、1人で登ります。雪山のときは、ガイドさんと。山に登りたくて、ランニングやジムのトレーニングも始めました。帽子は「手」で作る作品なので、人間としてのベースが「健やか」でいたい。だから「健やかで、フラットな自分」を取り戻すために、自然に立ち返っているのかもしれません。

作品にも、暮らしにも、いい影響があったのですね。

ほんとうに。以前は、野菜にオリーブオイルと塩をかけて食べればヘルシー、と思っていたのが、しっかりたんぱく質を摂るようになりました。それと、共に人生を歩いていきたいと思える夫の存在も大きいです。仕事にのめりこんで、正直言うと、いつ何があっても悔いはないという生き方だったのに（笑）。でも、結婚して思ったんです。この人と、もっと人生を楽しみたい。もっとたくさん経験したい。もっと話したい。できればきれいに年を重ねたい。健やかに長生きしたいと思うようになったのには、自分でも驚いています。そんな私が今いちばんしっくりくるのが、デルメッド　バーム　クレンジング。肌にのせたときに、するっと水のように変わって、すっきりメイクを落としてくれる。素肌に戻ったときの気持ちよさは、もう手放せないですね。

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【商品番号】 396　【容量】80g

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撮影・青木和義　ヘア＆メイク・レイナ　構成と文・越川典子