会いたかった人
【ずっと会いたかった人】美人度が上がると噂の帽子を作る人、苣木(ちさき)紀子さん(1)
マニッシュな帽子もあれば、ユーモアあふれる帽子、ふんわり女性らしいのに、どこか凛々しい帽子も。ブランド「chisaki」の帽子をかぶると美人度が上がると聞いていたけれど、デザイナーの苣木(ちさき)紀子さんに会って納得。よく笑い、よく話す、オープンマインドな女性でした。
- 見たことのない帽子がたくさんあって楽しいです。
- 何か、面白そう。思わず手にとってかぶってみる。すると、どきどきする。帽子を、そんなふうに楽しんで、体験していただけるとうれしいです。2020年2月でブランド「chisaki」が5歳を迎えるのですが、コンセプトは「Peace begins with smile.」。作る人、売る人、買う人が、未来にとって心地よいものづくりでつながって、会話や笑顔が生まれる。その笑顔が連鎖して、きっと平和につながると信じているんです。17年前、初めて友人にベレー帽をプレゼントして、かぶったとたんに彼女の顔がぱっと明るくなったことが原点かもしれません。以来、目の前で女性たちがキラキラ変わる姿を何度も見てきました。帽子がきっかけで考え方、生き方まで変わることもあります。私が作る帽子は、そんな方の日常に寄り添い、お守りのような存在でありたいんです。
- 「chisaki」ファンの間では、「たためる帽子」が人気らしいですね。
- はい、定番です。ぱっとたためてバッグに入れられる。旅行にも便利と、ありがたいことにご好評をいただいています。梱包がつぶれるというアクシデントがあって、それなのに美しい形ができていることにびっくりしてできた帽子です。たためるにはちゃんと理由があって、日本の和紙を原料とした素材で、特殊な技術がなければ決して生まれない形なんです。これに出合えた私はすごく幸せですし、私が形にした幸せをそのままかぶる方に手渡していけることもうれしい。「chisaki」を愛用くださる方同士が街で偶然出会い、「その帽子、chisakiですか?」と親しくなる方もいらして、帽子って、実は優秀なコミュニケーションツールでもあるんです。
- 帽子が似合う、似合わないって、あるのでしょうか?
- 誰にも「似合う帽子」は必ずあります。帽子って、つばの長さの5ミリ、1センチの違いがとっても大きいんです。角度や深さも重要。ですから「この帽子、何か違うな」と思っても、少しだけ深くかぶってみる。ちょっと傾けてみる。鏡の前で動かしてみて、しっくりくるポジションを見定めることがとっても大事なんです。丸顔の人には、つばの大きめな帽子のほうが顔の大きさが気にならないなどの基本ルールはありますが、まずは、目に飛び込んできた帽子にトライしてほしいですね。できれば、よいアドバイザーのいるお店で。私がいたら、もちろんアドバイスさせていただきます! 眼鏡と同じで、違和感は最初だけで、次第に慣れていきます。継続してかぶることが「帽子が似合う」のいちばんの近道です。
- 帽子をより楽しむには、どうすればいいでしょう?
- まずは、臆せず、たくさん試す、たくさんかぶってみることをおすすめします。全身が映る鏡の前に立ち、できれば靴まではいてバランスをとりたいですね。なぜなら、全体のバランスこそ大事だからなんです。今日はこの帽子をかぶりたいから、服はあのコーディネートにしよう! あの服に合う帽子を今度は見つけよう! そんな発想をして、わくわくしてもらえたら、すごくうれしいですね。45歳になって思うのは、いくつになっても好奇心を忘れず、その時の自分らしく、帽子の似合う女性でいたいということ。そのためには、心もカラダも肌もケアが大事。もっと気持ちよく過ごそうね、と話しかけながら、朝晩のお手入れを始めています。ていねいにお手入れを続けると心が喜んで、カラダも肌も変わるんですね。
関連記事
苣木紀子(ちさき・のりこ)
帽子デザイナー
大阪府生まれ、佐賀県育ち。大学卒業後、メーカー、ファッションデザイナーを経て、帽子の世界へ。企業の帽子デザイナーとして、国内のみならずNY、パリ、ロンドンでも高い評価を得る。2016年に「(株)MASION ENKU」を立ち上げ、新たなブランド「chisaki」をスタートさせる。毎年、パリの国際展示会「Premiere Classe」、NYの「d&a」に出展。現在、東京と北海道・富良野にアトリエをもつ。
Instagram @chisaki_noriko
Facebook @noriko.chisaki
http://www.chisaki.co.jp/
撮影・青木和義 ヘア&メイク・レイナ 構成と文・越川典子