会いたかった人
【ずっと会いたかった人】和菓子作家の坂本紫穗さん(2)
「28歳の誕生日の頃に、紫色の和菓子が夢に出てきたんですよね……」と話す坂本紫穗さん。和菓子作家に至るまでに培った経験が、作品作りに活かされているといいます。
- なぜ、「和」菓子だったのですか。
- 和菓子作りを始める前は、IT企業に勤めていました。必死に働きながら、仕事もプライベートもなんだか「ぴったり」きていないと感じる日々。フレンチを学んだり、フードコーディネイト、カラーコーディネイト、和食、写真と自分が興味あることをいろいろやってみたんです。でも、どれも自分がその職業に就いているイメージがわかない。28歳の誕生日の頃に「紫色の和菓子」の夢を見たことがきっかけで、初めて和菓子作りに興味を持ちました。私が好きなのは、小さなもの、和のもの、柔らかいもの、季節のもの、きれいな色のもの、食べもの。それらの真ん中にあったのが和菓子でした。和菓子のことを知れば知るほど、どんどん好きになる。和菓子の世界に吸い込まれるように夢中になっていきました。
- 紫穗さんというと、青系の和菓子が思い浮かびます。
- 藤、紫陽花、桔梗、花菖蒲、杜若……。日本の花には、紫色もたくさんありますね。名前に紫が入っていることもあって、紫は私にとって特別な色です。幼い頃から「紫ってどんな意味なのかな。どんな印象で、どんな存在なのかな」と名前を書くたびに考えていました。あるとき、母から「紫は癒しの色よ」と教えてもらい、ハッとしたのを覚えています。自分の名前には「人にやさしい色」が使われている。そのことがうれしくて、紫は自分の軸になったような気がします。紫は、赤寄りか、青寄りか、その色味や濃さによって印象が大きく異なる色です。和菓子で紫色を使うときは、慎重になりますが、不思議なことに、しっかりイメージが浮かんでくるんですよね。
- 仕事を続けるうえで、支えになっているものはなんですか。
- 子どもの頃、我が家のお祝いごとにはケーキと和菓子が並ぶのが定番でした。というのも、7つ下の妹にはフードアレルギーがあって、当時は乳製品を使ったケーキが食べられなかったのです。私は、妹が和菓子をおいしそうに食べている姿を見るのが好きでした。妹を喜ばせる和菓子は家族の幸せの象徴だったのでしょうね。妹は今も和菓子が大好き。「あんこが食べたいな」なんてメールが届いたりするんですよ(笑)。それから、亡き祖母の存在もとても大きいですね。祖母は山野草を愛し、短歌を詠む人でした。幼い頃、祖母の作品に見た花の色、葉の形、季節や年月とともに姿を変えてゆく草木の様子、そして、それらを慈しむ祖母の心が、和菓子を作る上での土台になっていると思います。祖母とは、亡くなるまでの数年間、毎週のように手紙を交わしていました。祖母が文字を書けなくなるまで続いた大事な習慣でした。祖母からの手紙は私の宝物。今も、祖母に届ける気持ちで和菓子を作っています。
- 紫穗さんはいつも微笑んでいる印象ですね。
- そうですか。それはうれしいです。最近になってやっと、自分の傾向がよくわかってきたように思います。たとえば、なにか特別なことがなくても、小さな疲れが積み重なるとバランスを崩してしまいやすい。ですから、ピリピリした感情が顔を出す前に、小さな干菓子を持って姪っ子に会いに行きます。0歳と5歳のまん丸の姪っ子たちを抱っこして、一緒に遊んでいると、自然と心が丸くなっていくのがわかります。心も早めのケアが大切なんですよね。デルメッド プレミアム クリーム No.1は、自分の肌へのごほうび。くすみや小さなしわが顔を出す前にケアをします。両手で顔を包み込んで、濃厚なクリームを肌に浸透させていると、心までうるおっていくような気がします。
関連記事
坂本紫穗(さかもと・しほ)
和菓子作家
1982年生まれ。オーダーメイドの和菓子を作品として制作・監修。国内外で和菓子教室やワークショップを行う。メディアでの和菓子監修のほか、安倍昭恵内閣総理大臣夫人主催茶会(総理公邸)での茶菓子提供、和菓子屋「宗家源吉兆庵」とコラボレーション、和菓子を介して環境問題に取り組むなど活動の幅を広げている。
https://shiwon.jp/
Instagram @shiwon.wagashi
Facebook @wagashi.shiwon
撮影・青木和義 ヘア&メイク・広瀬あつこ 文・高橋顕子 構成・越川典子
プレゼント 陶芸家・田村一さんのオリジナル菓子皿 2枚セット
抽選で5名様に、陶芸家・田村一さんのオリジナル菓子皿「plate “through water” 」を2枚セット(直径14.5cm)でプレゼント。坂本紫穗さんがリスペクトする陶芸家の田村一さん。小川に積もった雪の下を流れる水をイメージした作品です。益子焼の制作を経て、故郷・秋田県で「秋田の冬の景色」をモチーフにした作品を手がける田村さん。この器を使いたいから和菓子を用意する。そんなおやつ時間をお楽しみください。