会いたかった人
【ずっと会いたかった人】注目の茶会「chanowa」主宰の出野尚子さん(1)
いま大人気の「chanowa」の茶会。一度でも参加すると、みな口を揃えて「尚子さんにまた会いたい」と言います。女性たちの心にこれほどの余韻を残す出野尚子さんって、どんな人なのでしょうか。お目にかかり、その秘密がわかりました。
- 出野さんのお茶会では、どんなおもてなしをなさるのでしょう。
- 今日のお茶は、「みなみさやか」。宮崎のウーロン茶です。私の茶会では「中国茶式」の飲み方をします。茶杯を、主人の私の分も用意して、一緒にお茶を楽しむわけです。皆さんに茶葉の香りをまず楽しんでいただいて、ゆっくりと茶器を温めます。茶壷(ちゃふう=急須のこと)にさらさらとお茶を入れ、沸騰したお湯をやかんから注ぐ音を聞きながら、茶葉がふわっと開いていくのを眺めます。お茶の味を均一にするため、茶海(ちゃかい)にいったん入れ、それを、茶杯に注いでいく。一煎めを味わったあと、お菓子をはさんで、ニ煎め、三煎めと楽しむのですが、ウーロン茶は、四煎めも楽しめて、味わいの変化がよくわかります。長いお茶会だと、3~5種類のお茶を同じように楽しむんです。どのお茶を組み合わせるかを考えるのも、主人の楽しみのひとつです。
- お茶を淹れているときは、どんなことを考えているのですか。
- 茶会を始めてから十数年になりますが、ずっと変わらないのは、目の前のお客様だけのために、できる限り丁寧に、真剣に淹れること。これは、変わりませんね。短い時間であっても、そのひとときを共に過ごすこと、それが私にとっての「もてなす」ことかな、と。ですから、お茶の説明をしたほうがおいしく飲んでいただけると思ったときはお話をしますが、あえて会話をしないこともあるんです。たとえば、夕暮れにロウソク1本でお茶会をするときは、手元もあまり見えないほど暗い。そうすると、音だったり香りだったり味だったり、感覚が研ぎ澄まされて、言葉はなくとも、一緒に別世界に行っているような気がします。
- 出野さんにとって、お茶会のいちばんの楽しみって、何ですか。
- 毎回お茶会をして不思議に思うのは、自分のために淹れるお茶よりも、誰かのために淹れるお茶のほうが何倍もおいしいってことなんです。ですから、お茶会はやめられません(笑)。いつもいらっしゃる方もいれば、初めての方も。たくさん話す方もいれば、ひと言も発しないでお帰りになる方も。職業とか年齢とかまったく関係のない、茶会だけの出会い。それが私にとってのいちばんの楽しみなのだと思います。そうそう、屋号の「chanowa」は、音の響きが心地よくてつけたのですが、「wa」を「和」や「輪」、「環」ととらえてくださる方もいて、つくづくお茶が人の輪をでつなげてくれていると思います。
- いちばんおいしいお茶を教えてください。
- あ、その質問、よく聞かれます(笑)。私の答えは決まっていて、いつも「自分がその時飲みたいお茶」と答えています。毎日意識して、お茶を味わっていると、どんな時にどのお茶をおいしく感じるか、逆に味気なく感じるか、わかってきます。私の場合は、今日飲みたいお茶で体調がわかります。もっと言えば、気持ちが焦っていたり、部屋が片付いていなかったりすると、お茶の味も雑になってくる。お茶によって体調が整うこともあれば、逆に淹れる人の心や体の状態でお茶が左右されることもあるわけです。ですから、できるだけ自分をいい状態においておきたいと努力はします。そのひとつが、毎日のスキンケア。デルメッド プレミアムシリーズの3品です。いいものを毎日コツコツ続けることが、私の肌も心も支えてくれていると感じています。
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出野尚子(いでの・なおこ)
「chanowa」主宰
1974年鹿児島県生まれ。2002年、熊本の中国茶店「玉蘭」に就職、中国茶を学ぶ。2005年に独立、「chanowa」主宰。九州の茶農家をめぐり、また中国へも何度も足を運び、その土地ならではの茶葉の味わい、楽しみ方を、茶会や教室を通して紹介している。現在、熊本市の史跡「泰勝寺跡」を茶会の拠点としつつ、鹿児島、宮崎、大分など九州内はもちろん、京都や東京でも出張茶会を開催、おいしいお茶で客をもてなす。どの茶会もなかなか予約がとれないほど人気を博している。
撮影・青木和義 ヘア&メイク・レイナ 構成と文・越川典子