モデル・優恵の笑顔日記「明日も笑う所存です。」

ESSAY vol.13

エッセイ

【モデル・優恵の笑顔日記「明日も笑う所存です。」】Vol.13「春が来たので季節ひとめぐり。」

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2021.4.21

うっとりコサージュです。

カシミアのフリンジストールはMAISON CARREE(メゾン・カレ)の春色ペールピンク。日中は気温が上がるのでブラウス一枚でも気持ち良く過ごせますが、陽が落ちるとまだ肌寒い4月にもってこいの可愛い子です。コサージュは小さいものから大きいものまで随分と集めました。少し髪が伸びるとひとつにきゅっと結った根元に留めたり、手首に巻いたりして出掛けます。その年齢なりになかなか素敵に映るので、わたしはコサージュがとても好きです。25歳、腰よりも長かった髪をベリーショートに切ったひよこ頭に大きなコサージュを着けてもらったのはKEITA MARUYAMA TOKYO PARIS のコレクションでのことでした。

「あぁ、可愛い」と言いながらピンク色のコサージュを並べて「うっとりする時間」を開催。造花作家だった友のお母さんと知り合ってオーダーでコサージュを作って頂いていたこともありました。

ピクニックに行きましょ。

籠に入ったお茶のセットは「これを持ってピクニックへ行こう!」という意気込みで20年ほど前に買ったのですが実現できずにいます。竹の岡持(← いつか買いたいと思っているものです。)においしいものをたくさん入れて、お茶の葉とポットにはたっぷりの熱いお湯、大きな敷物を広げてただころんころんするだけのピクニックはきっと楽しいはず。今思うと割れない器にわくわくしてしまうのはおままごとの名残なのかも知れません。キャンプではなくピクニック。敷物の下の芝生の感触、程良く休ませてくれる木陰、春の太陽、柔らかい風、大きく笑う友の顔、それが理想のピクニック。

おにぎりを載せるお皿も忘れません。

ラトビア→くるみ割り→ミトン→ラトビア。

通りすがりに見付けた「ラトビアの雑貨」という看板にするすると吸い寄せられて扉を開けました。北欧の手仕事が並ぶ小さなお店です。お客はわたし一人、手の込んだ暖かいものを順番に見て店内を2周しました。心惹かれたのは色とりどりの毛糸で編まれた小さな家のような形のミトン。でも手袋はいくつも持っているので見るだけにしました。ある日、2、3年前の雑誌の整理をしていたら『ミ・ト・ン』という本が紹介されていました。これはあのミトンだ。数日後、わたしの手元にはミトンの編み模様が描かれた装画の本が届きました。お話の中に出てくるのは架空の国ですが、作家の小川糸さんは絵を描かれている平澤まりこさんとラトビアを3度訪れてこの本を書き上げられたとあとがきのエッセイに書かれていました。とても優しく愛おしい物語で、いつかわたしもラトビアのお祭りへ行ってみたいと思っています。

旅先で買った長野のくるみを割れずにいて、トンカチを使うしかないかと思っていたところに目の前に現れたラトビアのくるみ割り。これは今買わなければまた機会を逃してしまう。雨の木曜日、きのこの形の道具が我が家のキッチンの一員となりました。

てのひらにお守り。

自由が丘の熊野神社では、境内にある御神木の大きなけやきの樹皮を小さく切って健康祈願のお守りにされています。自然に乾いてめくれてしまうところを戴くのだそうです。時折お参りして、その年その時の気に掛かっていることの為にお守りを戴いて帰るのですが、今年は美しい袋に入った小さな御神木に健康を祈ることにしました。お守りは掌(てのひら)に包むと安心します。そして美しいお守り袋が目に入ると一瞬ほっとして微笑みます。しかめっつらにご利益なしです。

お守り袋は巫女さんが縫われているのだそうです。美しいです。

優恵

ゆえ

モデル・俳優。ティーン誌『mc Sister』の専属として活動を始め、カバーモデルをつとめる。『non-no』『SO-EN』など多くの女性誌、TVコマーシャル、ファッションショーなどで活躍。20代後半からは映画、ドラマに出演し、活動の場を広げる。近年の出演作品に、美玖空トライアル公演「女は女で、女である」(2021・美玖空 脚本/演出)、『秘密のフレグランス』(2021・富田大智 監督)、『Motherhood』(2019・萬野達郎 監督)、『しあわせだったにゃよ』(2019・利重剛 監督)、『午後の悪魔』(2017・中村真夕 監督)、『アイズ』(2015・福田陽平 監督)、『PASSION』(2008・濱口竜介 監督)、インスタシネマ『女図鑑』(2019・美玖空 脚本)などがある。ドラマとファッションとおいしいものと花をこよなく愛する。フォトエッセイ『昼寝の前に』を連載中。https://6ropeway6.com/

撮影・青木和義

文と写真・優恵