モデル・優恵の笑顔日記「明日も笑う所存です。」

ESSAY vol.6

エッセイ

【モデル・優恵の笑顔日記「明日も笑う所存です。」】Vol.7「遙か異国の心地良さと、うっかり眠りに落ちる時の幸せについて。」

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2020.10.21

「好き」は「知る」で「楽しい」。

インドの木版染めがとても好きで、目的無く「大きな布地を買い求めて愛でる」という趣味を持っています。小さな巾着をいくつも集めたり、布張りのノートを何冊も買ったりもしていました。生地をたっぷりと使ったインドのスカートをガーグラと呼びます。本来、そのデザインと文様で着用者の出身地域、社会的地位、配偶者の有無などを表していたものなのだそうですが、今はどうなのでしょう? もう少し知りたいので、ノートに書き留めておいて、と。「好き」は「知る」で「楽しい」につながります。今は「好き」の心意気でガーグラの裾を広げてくるくると回ってみるのです。

KANNOTEXTILEのガーグラとHOUSE OF LOTUSのカシュクールを合わせて。

波打ち際で目を閉じる。

美容室へ行くのは億劫(おっくう)になることもあるのですが、シャンプー台の心地良さを思い出して「やっぱり行こう」と予約を入れます。わたしのヘアスタイルを維持して下さっているヘアサロンは、心のオアシスと思っています。目を閉じてシャンプー台に横たわっている時、「あぁ、わたしは今、南の島の砂浜の波打ち際に横たわっていて、ちゃぷちゃぷと波が髪を撫でている」という妄想にとらわれます。ウクレレで奏でる音楽が流れていたりするので、心地良くそちらへ促されて、そのまま眠りに落ちてしまいそうになるのです。

「誰もが自然に集まる陽だまりのような場所」を目指すtrafficのシャンプー台は、わたしの心の波打ち際です。

灼熱の太陽を持ち帰ります。

キリムとは中近東、中央アジアの広い地域に棲んでいる遊牧民が織るウールの平織りのことなのだそうですが、少し荒い触り心地が好きで、いつからか我が家にも置くようになっていました。ラグを敷くよりも様々な色柄を楽しみたいので、キリムのクッションカバーがたくさんあると良いな、と思っています。出会う度にひとつずつ。その鮮やかさは和の色の取り合わせにはない、灼熱の太陽と土の熱さを思わせ、強く惹かれてしまうのです。

黄色と赤と茶色、オレンジと焦げ茶色、熱い国の太陽と土と花の色を思わせる色合わせです。

そしてわたしは、ころんとします。

寝床の周りにもリビングにも、いくつもクッションを置いています。部屋の広さに比べると多いのでは?と思う程ですが、好みのクッションカバーを見付けるとこの生地をこの大きさで持ち帰りたいという衝動に駆られてしまい、結果我が家には必要以上にクッションがある、という状況を作ることになりました。もちろんクッションカバーは季節で掛け替えます。そして母もわたしも、ちょっとクッションを枕にころんと寝転がります。昼下がりに開けた窓からは、熱くもなく冷たくもない風が心地良く通り、ほんの15分か20分、すとんと落ちた眠りから目覚めた時の心地良さと言ったらありません。

日々、ターバン、バンダナ、もしくはほっかむりをして過ごしています。

優恵

ゆえ

モデル・俳優。ティーン誌『mc Sister』の専属として活動を始め、カバーモデルをつとめる。『non-no』『SO-EN』など多くの女性誌、TVコマーシャル、ファッションショーなどで活躍。20代後半からは映画、ドラマに出演し、活動の場を広げる。近年の出演作品に、美玖空トライアル公演「女は女で、女である」(2021・美玖空 脚本/演出)、『秘密のフレグランス』(2021・富田大智 監督)、『Motherhood』(2019・萬野達郎 監督)、『しあわせだったにゃよ』(2019・利重剛 監督)、『午後の悪魔』(2017・中村真夕 監督)、『アイズ』(2015・福田陽平 監督)、『PASSION』(2008・濱口竜介 監督)、インスタシネマ『女図鑑』(2019・美玖空 脚本)などがある。ドラマとファッションとおいしいものと花をこよなく愛する。フォトエッセイ『昼寝の前に』を連載中。https://6ropeway6.com/

撮影・青木和義

文と写真・優恵