dermed style もっと笑顔の日

【モデル・優恵の笑顔日記「明日も笑う所存です。」】VOL.6 「コロボックルと染め記憶。」

コロボックルへの憧れなのです。

大きな葉っぱを見るとその下へ入りたくなるのは、幼い頃に実在して欲しいと憧れていたコロボックルを思い出すからです。八つ手の葉は水に挿しているだけなのにいつまでも元気で、日々長く留まってくれていることに「もう少し、そこに」と思います。まるで中国の扇子のようで、濃いリップを付けたくなりました。散歩をしていたら、ご近所の畑の里芋の葉っぱがそれはそれは見事に育っていました。葉の上に溜まる露も大きくふるふると揺れて、まるで和菓子店の甘しもののようです。「あぁ、その大きな葉っぱを戴きたい」と思いながら、わたしは畑の横でしゃがみ込んで眺めておりました。

里芋と八つ頭(ヤツガシラ)の違いは茎の色なのだそうです。この葉の茎は緑なので、里芋と判明。
八つ頭の茎は赤くて、並んで植えられていました。

塩250g!

長く着た気に入りのカットソーのワンピースの白が白ではなくなってしまい、漂白しても真っ白に戻ってくれません。おつかれさんしようかな、どうしようかな、と少し考えて染めることにしました。良い機会なので「むら染め」に挑戦してみようと、インターネットでわたしにもできそうな簡単な方法を調べて、染め粉と色止め剤を注文しました。お塩も結構な量を使います。着心地が良く、形も気に入っていたので染めることにしたと母に伝えると、「どこで染めるの?」と第一声。10代の頃、度々バスルームで自分の洋服を染めてバスタブに色が残ってしまい、母を怒らせたことを思い出しました。

インテンス・ヴァイオレットという名前に惹かれてこの色に決定。
今回はトタンのたらいを使いましたので、バスタブはきれいに保たれました。

待つこと1時間と15分、染め記憶を辿るの巻。

10代のわたしは、オーバーオールや、大きなニットのカーディガン、布製の靴も色を変えれば気分一新、改めて楽しむことができるといろいろなものを染めました。20代の半ばになると、染め粉のブランドがやっているお店を見付け、クリーニング屋さんのように気軽に訪ねることができました。染めたいものを持って行って色を指定して後日きれいに染まったものを取りに行くのです。撮影で使う衣装をお願いしたり、革製品も染められるので、あのお店があるから安心と思っていましたが、今はもう閉店されてしまったので、強い味方を失ったようでとても残念です。何台もの洗濯機や大きな乾燥機が並ぶ奥の工房を店先から眺めるのが好きでした。

もう少し濃く染まって欲しかったので、次回は染め粉を混ぜて色を作ってみようかと考えています。

インドの鈴の名前で呼ばれる樹。

赤い蕾(つぼみ)をたくさん付けた枝は、オーストラリアのユーカリカエシア。友が「咲かないかもしれないけど、そのままドライフラワーになるよ」と言って持たせてくれました。その言葉の通り、蓋(ふた)の付いた蕾は開くことなく葉がパリパリになったので、水から揚げて壁に掛けました。「グングル」というインドの鈴の名前でも呼ばれる、それに似た無数の小さな蕾が付く樹です。ユーカリの一種なので少し強く良い香りがして、「グングル」の楽器というよりも暮らしの中にある音のような柔らかい響きと、咲かなかった赤い花は南の島の日没時を思い出させてくれます。

はらはらと落ちる細い花びらに、咲いているところが見たかったと調べてみましたら、ほわほわと可愛い花火の欠片(かけら)のような花でした。

優恵

ゆえ

モデル・俳優。ティーン誌『mc Sister』の専属として活動を始め、カバーモデルをつとめる。『non-no』『SO-EN』など多くの女性誌、TVコマーシャル、ファッションショーなどで活躍。20代後半からは映画、ドラマに出演し、活動の場を広げる。近年の出演作品に、美玖空トライアル公演「女は女で、女である」(2021・美玖空 脚本/演出)、『秘密のフレグランス』(2021・富田大智 監督)、『Motherhood』(2019・萬野達郎 監督)、『しあわせだったにゃよ』(2019・利重剛 監督)、『午後の悪魔』(2017・中村真夕 監督)、『アイズ』(2015・福田陽平 監督)、『PASSION』(2008・濱口竜介 監督)、インスタシネマ『女図鑑』(2019・美玖空 脚本)などがある。ドラマとファッションとおいしいものと花をこよなく愛する。フォトエッセイ『昼寝の前に』を連載中。https://6ropeway6.com/

撮影・青木和義

文と写真・優恵