dermed style もっと笑顔の日

【モデル・優恵の笑顔日記「明日も笑う所存です。」】VOL.5 「よく見ると好きなものは本当に好きなもの。」

モロッコ連想ゲーム。

10代の後半、わたしはヒッチコックの映画『知りすぎていた男』が大好きで、テレビ放送を録画したものを何度も見返し、大きな声で「ケ・セラ・セラ」を唄い、ドリス・デイのCDを何枚も買い、あの街 “モロッコ” に憧れていました。撮影で訪れたパリで、初めて知ったモロッコ料理に「世界にはこんなに美味しいものがあるのか!」と心を奪われ、あれから30数年、今や東京でも手に入るクスクスは我が家の常備食となりました。友のショップのモロッコフェアで、「モロッコかぁ、モロッコでしょ、モロッコと言えば・・・」と頭の中で連想ゲームになったので買い求めたグラスです。

憧れの国 “モロッコ” からやって来た、気泡の入った手吹きのリサイクルグラスはどこか懐かしい。この形は一般的なもので、グラスひとつひとつに表情があるようです。

せめて箸置きを!

家紋帖を眺めてその絵柄の意味を読むのが好きなのですが、その延長で丸瓦に施されているのは家紋だと知り、丸瓦にも興味を持つようになりました。古い町を歩いていると、大きなお屋敷や寺院の屋根と外塀の丸瓦が目に入り、古いまま残されているものを見付けると嬉しくなって写真を撮ります。わたしは立ち止まることが多いので、旅先では前を歩く友とはぐれないように気を付けなくてはなりません。数年前、奈良を訪れた時に、古い丸瓦は宝物殿などで展示され、歴史を語るものであると知り、ますます好きになりました。これに勝るものは無いと、旅の記念に赤膚焼(あかはだやき)の丸瓦の箸置きを。

奈良の陶工、尾西楽斎氏作。赤膚焼(あかはだやき)の丸瓦の箸置き。

カレンダーは「月曜始まり」が好みです。

今年の手帖は罫線(けいせん)の入っていないものを選んだので、月のカレンダーは手書きです。これの利点は広く取りたい曜日を自分のさじ加減で決められることです。「日曜始まり」を不便に思っているので、わたしのカレンダーは「月曜始まり」です。週末と言うからには土曜と日曜はくっついていて欲しくて、もちろん平日よりも広く幅を取ります。モデルの仕事を始めて、スケジュール表というものが必要になり、事務的な手帖をつまらぬと思ったわたしは好きなノートに自分で書いたカレンダーを用意しました。10代に始めたことが今になっても続いているとは、あまりの変化の無さに自分でも驚きますが、これがわたしにとって好都合なのだと思います。

雑貨屋さんで見付けた今年の手帖に、教科書用で販売されているビニールのブックカバーを掛けています。日々持ち歩くのは、ボールペン、シャープペンシル、万年筆、そして鉛筆。

割れないコップに「福」がある。

朝の水を飲む用と決めているグラスは中国製の分厚いもので、たっぷり350mlも入って、飲み干すと「福」の文字が目の前にどんと現れます。いつ買ったのか、どうして1個しかないのか、全く思い出せないのですが、雑に扱っても割れないので、なんとなく手放せずにわたしの朝の番をさせています。コップと呼ぶ方が似合うかも知れません。薬やサプリメントもこのコップで飲みます。意外にもこの「福」の文字はわたしに効果があって、「水を飲み干し福来る(きたる)、今日も応援ありがとう!」と元気が出るのです。

こちらも気泡の入ったグラス。おそらく、20代の頃によく買い物をした中国雑貨を扱うお店で購入したもの。

優恵

ゆえ

モデル・俳優。ティーン誌『mc Sister』の専属として活動を始め、カバーモデルをつとめる。『non-no』『SO-EN』など多くの女性誌、TVコマーシャル、ファッションショーなどで活躍。20代後半からは映画、ドラマに出演し、活動の場を広げる。近年の出演作品に、美玖空トライアル公演「女は女で、女である」(2021・美玖空 脚本/演出)、『秘密のフレグランス』(2021・富田大智 監督)、『Motherhood』(2019・萬野達郎 監督)、『しあわせだったにゃよ』(2019・利重剛 監督)、『午後の悪魔』(2017・中村真夕 監督)、『アイズ』(2015・福田陽平 監督)、『PASSION』(2008・濱口竜介 監督)、インスタシネマ『女図鑑』(2019・美玖空 脚本)などがある。ドラマとファッションとおいしいものと花をこよなく愛する。フォトエッセイ『昼寝の前に』を連載中。https://6ropeway6.com/

撮影・青木和義

文と写真・優恵