dermed style もっと笑顔の日

【モデル・優恵の笑顔日記「明日も笑う所存です。」】VOL.2 好きなものに手が届く。

『ジョイ・ラック・クラブ』に憧れて。

20歳を過ぎた頃、エィミ・タンの『ジョイ・ラック・クラブ』という小説を読みました。サンフランシスコと中国を舞台に4人の中国人の母親とそれぞれの娘たちの生きる道が今と記憶とで織りなされていて、文章から想像する彼女たちはとても美しく、心惹かれました。その後、公開されたウェイン・ワン監督の映画も小説の世界そのままでした。彼女たちは麻雀をしながら、それぞれの身に起こったことを語ります。中国の女性たちの暮らしの中にそんなふうに麻雀があるなんて思ってもみませんでしたので、わたしの中で麻雀のイメージが一変しました。

高価なものではありませんが、とても気に入っている中国茶器のセット。

小説の中の彼女たちのように。

ことあるごとに思い出す小説の中の風景。昼下がりに女友だちと麻雀をしながら家族の話や若い頃の話をして、笑ったり憂いたり真剣になったりしてみたい。そんな憧れをつのらせながら30代の後半に差し掛かったある日、友人の母上と麻雀をする機会を得ました。揃え方を教わり、少し覚えると、これはおもしろい。それから更に十数年、今年に入ってきちんと教えてくれる方が現れたので、母と一緒に教わることになったのです。四角い机を挟んで、母の性格や、わたしの苦手なことも見えてきて、奥の深い遊びです。憧れの日も遠くないかも知れません。

若い頃から時折訪れる中華料理店。マダムが映画の登場人物のようなのです。
中国の友人のお宅を訪ねたような気分になるお店です。「食事の後に麻雀でもする?」

ボタンダウンシャツの男の子。

春と夏の間はシャツが活躍します。メンズの小さいサイズのシャツを選ぶことが多いのですが、その良さと言えば、レディースよりも袖と身頃が細くて長いこと。私服の学校に通っていた中学生の頃、同級生の男の子が白いボタンダウンのシャツにピンクのケーブルニットの薄いセーターとチノパンツを合わせていたのが印象的で、あの雰囲気を真似たいと、シャツの季節になると思い出します。男の子みたいに、白いシャツにパンツにスニーカー、シンプルですがとても好きなスタイルです。風が吹いて、緑が揺れて、散歩しながら自然と頬の緩む季節です。

着丈が長めのメンズのシャツはノーアイロンで!

誰かに見せたいドリッパー。

コーヒーはドリッパーを使って淹れます。毎日使うものなので、キッチン用品のお店ではコーヒー周りの道具に目が行くのですが、先日、近所の雑貨屋さんで見付けたのは、落ちるコーヒーが見えるドリッパー。もうちょこちょことドリッパーを上げて確認する必要がないのです! おまけにわたしの好きな白い琺瑯(ホーロー)。ポピュラーな陶器のもの、友人から贈られた木製のもの、これはわたしの3代目のドリッパーとなりました。一人でにっこにこしながら「見て、見て! ここからカップの中が見えるの!」と誰かに聞いて欲しくなるのです。

新潟県燕(つばめ)市の老舗琺瑯メーカーのツバメシリーズ。グレーの小さなつばめが飛んでいるのも嬉しいポイント。

優恵

ゆえ

モデル・俳優。ティーン誌『mc Sister』の専属として活動を始め、カバーモデルをつとめる。『non-no』『SO-EN』など多くの女性誌、TVコマーシャル、ファッションショーなどで活躍。20代後半からは映画、ドラマに出演し、活動の場を広げる。近年の出演作品に、美玖空トライアル公演「女は女で、女である」(2021・美玖空 脚本/演出)、『秘密のフレグランス』(2021・富田大智 監督)、『Motherhood』(2019・萬野達郎 監督)、『しあわせだったにゃよ』(2019・利重剛 監督)、『午後の悪魔』(2017・中村真夕 監督)、『アイズ』(2015・福田陽平 監督)、『PASSION』(2008・濱口竜介 監督)、インスタシネマ『女図鑑』(2019・美玖空 脚本)などがある。ドラマとファッションとおいしいものと花をこよなく愛する。フォトエッセイ『昼寝の前に』を連載中。https://6ropeway6.com/

撮影・青木和義

文と写真・優恵