モデル・優恵の笑顔日記「明日も笑う所存です。」

ESSAY vol.1

エッセイ

【モデル・優恵の笑顔日記「明日も笑う所存です。」】 VOL.1 しっぽの先を探して。

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2020.4.15

明日も笑う所存です!

初めまして、優恵と申します。「ゆえ」と読みます。モデルの仕事を始めて36年が過ぎました。10代のわたしは母の前でいつも仏頂面をしていたのか、「笑っていなくちゃダメよ」と言われた日のことを思い出します。いつからか、カメラの前で安心して笑うようになっていた、わたし。今も、日々の暮らしの中で「笑顔のもと」を探しています。友や家族と過ごす時、散歩をしている時、美味しいものを食べている時、幸せだなぁ、とにこにこする瞬間です。毎日いろいろなことがあるけれど、明日も笑う所存です!

ひとりでカフェの時間を過ごすのも楽しくて仕方がない時間です。

友のしっぽの先。

おみやげというものは「友のしっぽの先」のように思います。スペインのバスク地方を旅した友からのおみやげは、サン・セバスティアンの栗の木のかごと、きれいなブルーグレーのベレー帽でした。わたし好みのセンスは、さすが35年の付き合いです。旅先から届いた写真の中で笑う友の過ごした楽しい時間が、こちらにも流れて来ます。栗の木のかごはバルやレストランでパンを入れて出されると聞いたので、我が家でもバスク気分を味わうことに。それはまるで揺れる猫のしっぽの先のように、わたしの喜ぶ心をくすぐりました。

大小2つの栗の木のかごを、スペインから機内手荷物で持ち帰ってくれた友。大好物のクロワッサンで朝食を。

ボタンは10個ずつ。

ボタンを買うのが好きです。気に入った物を10個ずつ、シャツにもカーディガンにも間に合う数を買うようにしています。ごくたまに足が向いて、不用品を扱うスリフトストアを覗くことがあるのですが、掘り出し物を見付けた時には「これがわたしを呼んでいたのよ」と嬉しくてたまりません。大きなメンズのカーディガンもさっそくボタンを付け替えて、わたしだけの1点ものに。簡単な裁縫が好きなので、ボタンを付け替えたり、リボンを付けたり、ステッチを刺したりして手を入れておくと、次の季節が楽しみになります。

スリフトストアで見付けたカーディガンに、丸くぽてっとしたウッドボタンを付けました。

宝石よりもガラスの指輪。

ガラスのアクセサリーは「宝石よりも肌に近い」と感じるのです。15年も前の3人旅、ひとりはジュエリーショップのオーナー、もうひとりはジュエリーデザイナー。パリのパレ・ロワイヤルの回廊にあるアンティークのガラスを扱う小さな薄暗い店で無愛想なおじさんから買った指輪です。ほとんど観光もせずにパリの街を歩き、クリニャンクールで肩がこるほどヴィンテージビーズを買い込んで、憧れのジュエリーショップへ行き、一日の終わりに笑い合える旅でした。手に馴染んだ大きなガラスの指輪は、パリの街へと連れ戻してくれます。

15年愛用しているガラスの指輪。色がとてもきれいで、着けているとつい撫でてしまいます。

優恵

ゆえ

モデル・俳優。ティーン誌『mc Sister』の専属として活動を始め、カバーモデルをつとめる。『non-no』『SO-EN』など多くの女性誌、TVコマーシャル、ファッションショーなどで活躍。20代後半からは映画、ドラマに出演し、活動の場を広げる。近年の出演作品に、美玖空トライアル公演「女は女で、女である」(2021・美玖空 脚本/演出)、『秘密のフレグランス』(2021・富田大智 監督)、『Motherhood』(2019・萬野達郎 監督)、『しあわせだったにゃよ』(2019・利重剛 監督)、『午後の悪魔』(2017・中村真夕 監督)、『アイズ』(2015・福田陽平 監督)、『PASSION』(2008・濱口竜介 監督)、インスタシネマ『女図鑑』(2019・美玖空 脚本)などがある。ドラマとファッションとおいしいものと花をこよなく愛する。フォトエッセイ『昼寝の前に』を連載中。https://6ropeway6.com/

撮影・青木和義

文と写真・優恵