20代後半、この仕事をはじめた頃「洋梨のコンポートはあるけど、和梨はないね」と、和梨を白ワインで煮たのが始まりでした。
以来毎年秋になると、いろんな素材で和梨を煮て楽しんでいます。
韓国には梨を煮てデザートにするという、素晴らしい伝統の食習慣があることを知ったのは、それからうんとあとでした。
それが「ペスク ( 배숙 )」で、漢字では「梨熟」と書くそう。
ペスクは生姜と黒胡椒で煮るのが基本ですが、生姜と相性のいいクローブで煮るのもおいしいんです。
食材はこちらです。
さあ、作ってみましょう(調理時間:30分)。
日持ちは冷蔵庫で3~4日程度です。
【材料】(作りやすい分量)
和梨(幸水など) | 600g(約2個) |
生姜 | 13g |
粗糖 | 25g |
クローブ | 6粒 |
水 | 650ml |
韓国の梨は、洋梨よりも和梨と似ています。
和梨を煮るとシャキッとした食感が残り、あっさりとしていて疲れが癒される味わいです。
お好みで砂糖の半量をはちみつにしたり、棗やシナモンを加えて煮てもおいしい。
生姜はよく洗い、皮ごとスライスします。
鍋に分量の水と生姜を入れ、弱火で10分煮ます。
煮ている間に梨をくし型にむきます。
どんなむき方でも大丈夫ですが、私のやり方をご紹介します。
まず、梨を丸むきにする。
芯を避けて果肉を切り落とす。
最初の1片は面積が広いので半分に切る。
右端の2片が半分に切り分けた部分。
梨を少し時計回りに回転させ、芯にそって切り落とす。
「回転させる、切り落とす」これを繰り返す。
芯を1周して切り終えたところ。
これでくし切りのできあがり。
芯の部分は捨てないで。
味見用として、かじってみてください。
果物は1個1個味が違います。
渋みがあるなら砂糖の分量を心持ち足してもいいし、とても甘いなら砂糖は控えめに入れてください。
固いなら少し長めに煮るといいです。
梨にクローブを刺します。
生姜水に粗糖を入れて溶かしたら、梨をそっと加えます。
沸騰したら弱火にして15分煮ます。
果肉が透き通ってきたら、火からおろしてください。
鍋に入れたまま置き、粗熱が取れたら密封容器に入れて
冷蔵庫で冷やします。
器にたっぷりシロップごと盛り付けてください。
韓国風に薄甘いシロップなので、冷茶感覚でシロップごとすくっていただきます。
生姜の辛みとクローブの風味が、身体にじんわり利いてきて後口のいいデザートです。
生姜は抗酸化物質やミネラル類を豊富に含み、消化を促進したり、腸の健康にいいと言われています。
クローブにも抗酸化作用や抗菌作用が期待できます。
福田 里香(ふくだ・りか)
お菓子&料理研究家
1962年生まれ。武蔵野美術大学卒業。果物の専門店・新宿高野に勤めたのち、独立。漫画への造詣が深く、作品に登場するフード(食べ物)表現を考察した『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50』(太田出版)は注目を集めた。フルーツを使った独創的なスイーツや料理にも定評があり、雑誌でフードコラムを担当するほか、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)など著書多数。民芸にも詳しく『民芸お菓子』(エイ出版)がある。
Instagram @riccafukuda
撮影・青木和義
料理作成、写真と文・福田里香